10〜12月期年率+3.7%成長の大きなサプライズ(H20.2.14)

【民間予測値の上限を上回る高い成長率】
 日本経済にとって、久し振りに好材料のサプライズが訪れた。昨年10〜12月期の実質GDPは、前期比+0.9%、年率+3.7%の大幅増加となった(本日8時50分発表)。これに伴い、2007暦年の実質成長率は、+2.1%と2%台を維持し、2%割れの予想を覆した。
 海外のサブプライム・ローン問題に翻弄され、すっかりイジケていた日本の株価は、このサプライズを好感し、寄付きから日経平均で300円を超す大幅な反発となった。
 民間15社の平均予測は、年率+1.5%(最低+0.4%、最高+2.7%)であったから、予想の2倍以上の成長率となり、最高の予想をも大きく上回った。
 私自身も、<月例景気見通し>(2008年2月版)で、ほぼ7〜9月期並みの年率+1.5%、設備投資の伸びがやや低下し、家計消費が物価上昇に喰われとやや下って+1%前後と見ていた。

【設備投資が予想外の高い伸び】
 予想を大きく上回った理由を需要項目別に見ていくと、最大の要因は設備投資の伸びが前期比+2.9%増、成長寄与度+0.5%ポイントと大きくはね上がったことである。10〜12月期の一般資本財出荷は前期比−1.9%の減少となり、6〜9か月の先行指標である機械受注(民需、除く船舶・電力)が1〜3月期に前期比−0.7%、4〜6月期に同−2.4%となっていたことから考えると、10〜12月期の設備投資の高い伸びは予想もつかなかった。その上、建築関係の設備投資も、建築基準法の改正に伴う混乱で、7月以降落ち込んでいた筈である。
 第2次速報の設備投資改訂値を決める「法人企業統計」においても、設備投資が高い伸びをしていれはよいが、そうでないと、第2次速報値が下方修正され、成長率も下振れる恐れがある。

【輸入デフレーター上昇、輸出デフレーター下落で実質の純輸出は大きく増加】
 一般資本財出荷は、設備投資のほか、輸出の動向も反映するので、10〜12月期の前期比減少は輸出のせいかも知れないが、10〜12月期のGDP統計の「財貨・サービスの輸出」は、前期比+2.9%増と、7〜9月期の同+2.9%と同じ高い伸びを続けている。12月の対米輸出は、米国経済の成長減速の影響を受けて落ちているが、10〜12月期全体としては、サブプライム・ローン問題の影響は、まだ日本の輸出全体には影を落としていないと言えよう。
 しかも、「財貨・サービスの輸入」は、前期比+0.5%と低い伸びにとどまっているので、差し引き「純輸出」としては、10〜12月期の成長率+0.9%に対し、+0.4%ポイントの高い寄与度を示している。
 10〜12月期の金額ベースの貿易収支黒字幅は縮小しているので、やや違和感がある。しかしこれは、輸入デフレーターは資源・エネルギー価格の上昇で前期比+2.0%と大幅に上昇している反面、日本の輸出デフレーターは同−1.2%と下落しているため、実質ベースの黒字幅が大きくなったのである。

【物価上昇に喰われる家計消費、住宅投資は引き続き大幅下落】
 家計消費は、名目値では前期比+0.4%の増加となったが、消費デフレーターが同+0.2%の上昇となったため、実質値では同+0.2%となり、成長率に対する寄与度は+0.1%ポイントにとどまった。
 また民間住宅投資は、10〜12月期も前期比−9.1%と7〜9月期の同−8.3%を更に上回る落ち込み幅となり、成長率に対する寄与度は同−0.3%ポイントと大きく成長の足を引っ張り続けている。
 住宅着工戸数は、10月から前月比で増加し始めているので、本年1〜3月期には民間住宅投資がようやく増加に転じる可能性がある。

【消費デフレーターと国内需要デフレーターは上昇、投資デフレーターは下落】
 デフレーターの動向を見ると、GDPデフレーターは前期比−0.6%となり、名実逆転が続いている(10〜12月期の名目成長率は前期比+0.3%、実質成長率は同+0.9%)。
 しかしこれは、輸入デフレーター(マイナス項目)が資源エネルギー価格の上昇で、前期比+3.0%の大幅上昇となっているためである。
 国内では消費デフレーターは前期比+0.2%の上昇、投資デフレーターは同−0.1%の下落、国内需要全体のデフレーターは同0.0%の横這いとなっている。前年同期比で見ると、国内需要全体のデフレーターは、+0.1%の上昇に転じた。
 既にこのHPで何回も指摘しているように(例えば<最新コメント>“日本の物価は上がり始めた”H19.12.1)、GDPデフレーターの下落は、マイナス項目の輸入デフレーターの上昇によるもので、日本の企業部門の総産出価格である総需要デフレーターは上昇を続けており、一般物価の持続的下落である「デフレ」は終わっている。

【10〜12月期も2007歴年も外需に著しく偏った成長】
 最後に成長のパターンを見ると、10〜12月期も2007暦年も、相変わらず外需に著しく偏っている。
 10〜12月期の前期比+0.9%の成長率のうち、+0.5%ポイントは内需、+0.4%ポイントは外需と、ほぼ内外需が半分ずつ成長に寄与している。
 また2007暦年についても、前年比+2.1%の成長率のうち、+0.9%ポイントは内需、+1.2%ポイントは外需の寄与度で、外需の寄与度の方が内需の寄与度よりも大きい。
 このような成長パターンが続く限り、サブプライム・ローン問題のような海外事情に翻弄される日本経済の体質は、改まらないであろう。