日本経済の創生
─日本創生会議一周年記念講演(H17.2.8)─
2月8日(火)、砂防会館で開かれた日本創生会議の創立1周年記念講演に講師として招かれ、午後7時から約1時間「日本経済の創生」というテーマで講演した。そのあと40分間程の質疑応答を行ったが、仕事帰りの20代〜40代の若い男女が中心で、熱心な討論であった。
以下は講演のレジュメと図表、および主な質疑の要旨である。
<講演のレジュメ>
1. 20世紀の最終四半世紀に起きた大変化(221〜232頁)
2. 日本の先進国化を成功させた「追い付き」型システム(以下の(1)〜(3))が新しい変化に適応出来なくなり(101〜118頁)日本経済は停滞(図表1〜5)
(1) 官による民の指導→官業と官製市場の肥大化・国内経済の非効率化
(2) 中央による地方の支配→無駄な公共投資・地方財政の悪化
(3) 閉ざされた仲良しクラブ→系列取引、メインバンク制、株式持合い、終身雇用、年功序列賃金の破綻
(4) 日本経済の2極分化と長期停滞・財政悪化
変化に適応した輸出主導・大企業・製造業(1割)
vs
低生産性の国内向け・中小企業・非製造業・地方経済(9割)
↓
持続的成長の条件を欠く輸出主導の一時的景気回復(39〜82頁)(図表2〜5)
3. 日本経済創生の方向(239〜243頁)
(1) 官業の縮小と官製市場の参入規制撤廃(118〜125頁、171〜195頁)
(2) 事業補助金の地方一括交付(137〜139頁、195〜197頁)
(3) 正規・非正規雇用の待遇同一化と職業あっせんの自由化(72〜82頁、139〜141頁)
(4) 小さな中央政府と活発な民間で財政再建(141〜144頁)
(5) 基礎年金・高齢者医療・介護は消費税方式、報酬比例年金・一般医療は保険方式(民間・確定拠出の積立方式を含む)(130〜136頁、198〜204頁)
(注)カッコ内の頁は鈴木淑夫著『日本経済 持続的成長の条件』の参照頁を示す。
<主な質疑>
[問]
何故レジュメの3の(1)にあるような官業の縮小や官製市場の参入規制撤廃が出来ないのか?
[答]
万年与党である自民党の集票集金マシーンが、長年の間に出来上がった政官業の癒着を基盤としているため、官僚や族議員の権限を削ぎ、官僚OBや関連業界、族議員の既得権益を奪うことになる3の(1)のような改革は、自民党政権では難しい。自民党が悪いと言うよりも、万年与党が悪いと言うべきか。政権交替のある政治体制にならないと、この改革は進まない。
[問]
郵貯簡保はやはり縮小すべきか?
[答]
民業でやるべきことを官業でやっているのであるから、段階的に縮小し、最後は廃止すべきだ。その代わり、国民の利便性を維持するため、郵便事業を行う郵便局のネットワークは、地域の農協、信組、信金、保険会社などの代理業務を行えばよい。また、郵便局に市区町村の役所端末機を置き、住民登録、印鑑登録、その証明書交付なども出来る「ワンストップ・サービス・ステーション」にすればよい。
[問]
官僚・行政には監督責任があるので規制するという見方をどう思うか?
[答]
民間はルール(法律)を守る限り自由に行動出来るのであり、監督責任に名を借りて法律にない行政介入を行うのは誤りである。正しい監督責任は、民間がルール(法律)を守っているかどうかの監督責任である。官僚にはルール(法律)を作る権限はない。
[問]
消費税はやはり上げるべきか?
[答]
基礎年金、介護、高齢者医療だけに使う目的税とし、食料品を非課税とした上で消費税率を上げるべきだ。その代わり、これらの保険料はゼロになる。所得に関係なく徴収される保険料がゼロになり、消費額に比例して徴収する消費税が上がる方が公平である。
[問]
死刑廃止論をどう思うか?
[答]
日本の刑法には無期刑はあるが終身刑はない。無期刑は、実際は赦免になって出てくる。終身刑が設けられるのなら、死刑を廃止しても凶悪犯罪の抑止力は低下しないのではないか。