2010年4月版
1〜3月期も10〜12月期並みの高めの成長となる見通し

【2月の生産・出荷は12か月振りに微減したが回復の基調に変化はない】
 2月の景気指標では、昨年3月以降11か月間、一本調子で拡大してきた輸出と鉱工業生産・出荷が、季調済み前月比で共に減少した。しかしこれは、春節を控えて急増した1月のアジア向け輸出の反動減によるもので、景気回復をリードする輸出の基調に変化の兆しが出たとは見られない。
 まず、2月の鉱工業生産・出荷から見ると、前月比それぞれ−0.9%、−0.2%と12か月振りの減少となった(図表1)。生産予測指数の前月比は、3月+1.4%の上昇、4月−0.1%の低下となっており、3月の実績が予測指数通りになったと仮定すると、1〜3月期の平均は前期比+4.7%と10〜12月期の同+4.5%をやや上回る。4月の予測指数は微減となったが、4月の水準は1〜3月期の平均を+0.5%上回っており、4〜6月期も増勢が鈍化することはあっても、生産は引き続き上昇を続けると見られる。

【乗用車と液晶TVの振れが大きいがこの間一般資本財は大幅に上昇】
 2〜4月の生産に上下の振れをもたらしている業種は、トヨタのリコール問題を抱える乗用車とエコポイント対象商品が切り替わる液晶TVが中心である。
 他方、2月に強い動きを示しているのは、一般資本財(輸送機械を除く資本財)で、前月比で生産は+5.6%、出荷は+8.9%と大きく伸びた。この結果、1〜2月平均の10〜12月平均比は、生産が+7.1%、出荷が+5.6%の大幅増加となっている。
 これは、アジア向けの一般機械の輸出が伸びたことにもよるが、主因は国内の機械に対する設備投資が底を打って回復し始めたためと見られる。

【1年間続いた雇用の前年比減少は止まる兆し】
 このような生産動向を反映して、2月の実労働時間(「毎勤」)は前月比−0.3%と4か月振りに減少した。雇用も、「労調」の2月の就業者と雇用者は前月比それぞれ−0.4%、−0.3%の微減となり、「毎勤」の常用雇用は前月比+0.1%の微減となるなど、ほぼ横這い圏内の動きをしている。
 これを前年比の動きについてみると、就業者、雇用者、常用雇用のいずれもほぼ1年間マイナスで推移しているが、前年比減少幅は徐々に縮小しており、次第に下げ止まりつつあるとみられる(図表2の雇用者)。
 この間、2月の完全失業率は4.9%と、前月比横這いとなった(図表2)。

【賃金の前年比は名目で下落、実質で上昇】
 次に賃金の動向をみると、2月の「毎勤」の現金給与総額は、名目ベースでは前年比−0.6%と前年を下回ったが、実質ベースでは同+0.8%と2か月連続で前年を上回った(図表2)。所定外(時間外)給与が前年を上回り、特別に支払われる給与(賞与)が前年を下回るパターンは続いているが、1〜2月は後者のウェイトが低いため、全体がプラスになった。
 3月調査「日銀短観」によると、全規模全産業ベースで、09年度下期から増益に転じているので(このHPの<最新コメント>10年度上期二番底の懸念は消えたが設備投資と雇用の回復は遅れている―3月調査「日銀短観」のポイントH22.4.2参照)、賞与の落ち込みも09年度冬期が大底と見られる。賞与に足を引っ張られていた賃金指数は、10年度上期に底入れし、上昇に転じる蓋然性が高い。

【乗用車と家電を中心に消費は増勢を持続】
 このような雇用の横這い、実質賃金の上昇を背景に、「家計調査」の実質可処分所得(勤労者世帯)は、2月に前年比+1.5%と9か月振りのプラスとなった。
 他方、2月の消費動向は「家計調査」と「販売統計」で異なった動きをしている。「家計調査」の実質消費支出は、可処分所得の増加にも拘らず、平均消費性向(勤労者世帯)が前年比−2.8%ポイントの大幅低下となったため、全世帯で同−0.5%、勤労者世帯で同−2.2%の低下となった。
 これに対して、2月の「販売統計」では、小売販売額が前年比+4.2%、前月比+0.9%の増加となった。とくに家電販売額は、液晶TVを中心に、前年比+8.6%、前月比+3.3%の大幅増加となった。また乗用車新車登録台数は、2月の前年比+21.9%の大幅増加に続いて3月も同+25.2%と更に高い伸びとなり、1〜3月平均では同+24.1%となった。もっとも、この高い伸びは前年1〜3月期がリーマンショック後最低を記録した時期に当たるためである。現在の水準は、07年度の平均水準まで回復しているが、最高を記録した05年度に比較すると−7.5%低い。
 「家計調査」はサンプル調査で振れが大きいことを考慮すると、消費動向は「販売統計」が示すようにかなり確りしていると判断される。

【設備投資は緩やかに増加、住宅投資は底入れ間近か】
 次に投資動向をみると、まず住宅投資は2月の新設住宅着工戸数が、前年比−9.3%、前月比−8.0%と減少したが(図業2)、1〜2月平均は10〜12月平均比+4.7%と、昨年7〜9月期を底とした緩やかな回復傾向が続いている。とくに持家の着工戸数は、昨年11月から4か月連続して前年を上回っている。このような着工統計の動きからみて、4四半期続いたGDP統計の住宅投資の減少は、1〜3月月期に底を打って上昇に転じた可能性が高い。
 機械に対する設備投資と機械輸出の動向を示す一般資本財出荷は、前述の通り、2月は前年比+11.5%と実に23か月振りにプラスに転じ(図表2)、前月比も+8.9%の大幅増加となった。1〜2月平均の10〜12月平均比は+5.6%の上昇である。10〜12月期に7四半期振りに前期比プラスに転じたGDPベースの設備投資は、1〜3月期も増勢を続けているとみられる。
 先行指標の機械受注(民需、除く船舶・電力)は、2月に前年比−7.1%、前月比−5.4%と減少したが(図表2)、1〜2月平均は10〜12月平均比+1.5%の増加である。また1〜3月の見通しも10〜12月比+2.0%の増加となっており、機械受注(同)は10〜12月(前期比+0.5%)以来の緩やかな増勢を続けているとみられる。

【2月の輸出は1月の急増の反動で微減】
 最後に2月の外需の動向をみると、輸出は前年比+45.3%と前月(同+40.9%)に比し増加幅の拡大テンポが鈍化し、前月比では−1.7%の減少となった。これは春節を控え1月に急増したアジア向け輸出の反動(アジア向け輸出の前年比は1月+68.1%、2月+55.7%)が出たためで、一時的な動きと見られる。
 他方、輸入は前年比+29.5%、前月比+1.6%となった。
 これを実質ベースに換算すると(日銀推計)、輸出は前月比+1.1%、輸入は同+1.7%、実質貿易収支は同−0.9%となる。GDPベースの純輸出に対応する実質貿易収支は2月にほぼ横這いとなったが、これは1月の大幅増加の反動なので、1〜2月の平均をみると、10〜12月平均比+5.8%と拡大を続けている。

【1〜3月期も10〜12月期並みの高めの成長か】
 以上を総括すると、1月と2月の輸出にイレギュラーな振れが出て生産・出荷がやや攪乱されているが、基調的には、1〜3月期も外需は引き続き拡大し、景気回復を主導している。
 国内需要では、家計消費が底固い増勢を続けており、設備投資も引き続き緩やかなに回復している。また住宅投資も5四半期振りのプラスに転じそうである。
 この結果、1〜3月期は10〜12月期(年率+3.8%、図表3)とほぼ同じような、高めの成長率となる公算が高い。