2007年7月版

足許の拡大テンポはやや鈍化、企業の下期見通しは強気化

【鉱工業生産は電子部品・デジタル家電の調整で足踏み】
   足許の景気回復は緩やかであるが、6月調査「日銀短観」によると、設備投資、家計消費、輸出の先行きに不安はなく、景気は年度下期に向かって着実な拡大を続けそうである(このHPの<最新コメント>“設備投資計画と輸出見通しの上方修正で本年度も拡大を持続―6月調査「日銀短観」のポイント”H19.7.2参照)。
   5月の鉱工業生産は、予測指数が+1.8%の大幅上昇であったにも拘らず、−0.4%の小幅下落となった。3か月連続の生産低下である(図表1参照)。予測指数で上昇となっていた乗用車、一般機械、電気機械は上昇したが、電子部品デバイス(メモリ、CCD、電子回路基板など)と情報通信機械(デジカメ、パソコンなど)の大幅減産が響いた。
   6月と7月の生産予測指数は、前月比夫々+1.9%増、+1.7%増の大幅上昇となっているが、これは上記の電子部品デバイスと情報通信機械の生産が6月から上昇に転じる計画となっているためである。末端のデジタル家電のボーナス商戦を業界は強気に見ているようであるが、果してどうなるであろうか。

【雇用増加に支えられ家計消費は緩やかな回復を持続】
   家計消費の動向を見ると、消費支出(全世帯)は5月も前年比+0.4%増となり、今年に入って5か月連続の前年比プラスが続いている(図表2参照)。
   可処分所得(勤労者世帯)も5月は前年比+1.6%増となった。これは主として雇用者数の増加によるもので、名目賃金は6か月連続で前年を下回っている(以上いずれも図表2参照)。夏期ボーナスや株式配当の増加の影響が現われる6〜7月に、賃金と所得がどう動くか注目される。
   6月調査「日銀短観」では、大企業の小売と対個人サービスの『業況判断』DIが、足許は冴えないものの、先行き大きく好転する予想となっている(前揚のHP<最新コメント>参照)。果してどうなるのか、ここでも夏の消費動向が注目される。

【本年度の設備投資は前年を上回る伸びの可能性】
   1〜3月のGDP統計(2次速報)では、法人企業統計を基に、設備投資がマイナスからプラスに修正されたが、4〜6月期の設備投資も緩やかに増加していると見られる。5月の一般資本財出荷は前年比+4.6%増と1〜3月期平均の+3.6%増を上回った(図表2参照)。また4〜5月の季節調整済み出荷の平均は、1〜3月期の平均に比して+2.6%の増加となっている。
   このところ機械受注(民需、除船舶・電力)が前年を下回っており(図表2参照)、設備投資の先行きに不安が持たれているが、6月調査「日銀短観」の07年度設備投資計画(ソフトウェアを含み、土地投資を除く)は、全規模全産業と金融機関を合計したベースで、前年比+7.3%増となっている。これは06年度の実績伸び率(+7.8%増)に接近している。今後中小企業の設備投資計画が固まってくると、前年を上回る伸びになるかも知れない。
   機械受注が今後回復してくるかどうか、注目される。

【下期輸出鈍化の懸念は後退】
   日銀の推計によると、5月の実質輸出は前月比+2.8%増、実質輸入は同+6.5%増となり、実質貿易収支は同−5.1%の悪化となった。これで2か月連続の悪化である(図表2参照)。4〜6月のGDP統計では、実質純輸出が4四半期振りにマイナスになるかも知れない。
   しかし6月調査「日銀短観」によると、大企業製造業の輸出計画(前年比)は、3か月前の3月調査に比して、07年度上期が+3.7%、下期が+4.7%夫々上方修正され、上期+4.5%、下期+3.0%の前年比増加率となっている。
   アジアとEUの拡大持続に加え、米国の景気減速も底を付いたため、下期輸出鈍化の懸念は大きく後退したようだ。

【4〜6月期は緩やかなプラス成長か】
   以上の経済指標から判断すると、4〜6月期は家計消費と設備投資を中心とする内需に支えられ、引続きプラス成長となるものの、昨年10〜12月期(年率+5.4%成長)や本年1〜3月期(同+3.3%)に較べると、やや低目の成長となるかも知れない(図表3参照)。
   しかし、7〜9月期以降については、下期に向かって設備投資と輸出が勢いを増して来るので、夏の小売動向にもよるものの、確りした足取りの成長が期待される。
   フォーワード・ルッキングな運営に努めている日銀の金融政策は、当然、利上げ継続の歩みを続けるのではないか。