設備投資計画と輸出見通しの上方修正で本年度も拡大を持続

―6月調査「日銀短観」のポイント〈H19.7.2)

【小売と対個人サービスの業況判断が先行き大きく好転】
 本日(7/2)発表された6月調査の「日銀短観」では、企業が本年度中の経済拡大の持続を予想していることが確認された。日本銀行の利上げ継続にゴー・サインを出す内容といえる。
 まず足許の6月中の「業況判断」DIは、3月調査時点の6月予想が悪化となっていたが、今回調査の実績では、ほぼ横這いに上方修正された(大企業製造業23→23、同非製造業22→22、全規模全産業8→7)。
 また先行き9月までの予想も、3月調査時の予想のように悪化ではなく、高水準のままほぼ横這いとなっている(大企業製造業23→22、同非製造業22→23、全規模全産業7→6)。
 とくに、大企業の小売は11→21、対個人サービスは10→18、と大きく好転する予想となっており、企業が今後の個人消費の回復による業況改善を見込んでいることが分る。個人消費の回復がようやく本格化してくると観測されている。

【売上計画は内外需揃って上方修正、とくに輸出見通しの好転か顕著】
 07年度の売上計画は、全規模全産業で3月調査時に比して1.4%ポイント上方修正され、前年比+2.3%増となった。とくに下期の上方修正(+1.6%ポイント)が顕著である。
 大企業製造業の07年度売上計画を見ると、3月調査比上方修正の幅は、国内+2.3%ポイント、輸出+4.2%ポイントと、内外需共に上方修正されているが、輸出の予想好転の方が顕著である。とくに年度下期の輸出計画は、3月調査時点に比して+4.7%ポイントの大幅上方修正となっている。
 アジアとEUの拡大持続に加え、米国の成長減速が底を着き、今後緩やかに加速すると見られ始めているためであろう。

【07年度下期の収益予想は前年比大幅な増益】
 売上計画の上方修正につれて、経常利益の予想も年度下期を中心に大きく上方修正されている。
 全規模全産業で見ると、06年度の経常利益の実績は、3月調査時点に比して3.7%ポイント上方修正されて+10.1%の増益となったが、07年度の経常利益の見通しも、下期の5.4%ポイントの大幅上方修正を中心に1.8%ポイントの上方修正となった。
 07年度の増益率は、前年比でみて、上期−4.8%、下期+3.9%、全体で−0.3%と年度平均としては横這い圏内の予想となっているが、この時期の収益見通しは各企業とも控え目であることを考えると、上期の更なる上方修正と下期の大幅増益によって、本年度も全体として増益を続けることは間違いなさそうである。
 売上高経常利益率は、全規模全産業ベースで、06年度4.26%(大企業は5.29%)とバブル期を大きく上回ってピークを更新した。07年度については、経常利益の上方修正次第で決ってくるが、現時点の予想では、全規模全産業で4.16%(大企業は5.11%)と前年に比して僅かに低下する。

【07年度の設備投資の伸びは06年度を上回る可能性が大きい】
 07年度の設備投資計画(ソフトウェアを含み土地投資を除く)は、製造業と非製造業の合計で、大企業が前年比+9.6%増(06年度実績の前年比は+8.6%増)、中堅企業が同+7.4%増(同+3.9%増)と06年度を上回る伸びとなっている。もっとも、中小企業の計画が、現時点ではまだ固まっておらず、−9.6%減(同+8.7%増)となっているため、全規模では+6.3%増(同+7.9%増)と06年度の伸びをやや下回っている。
 なお、金融機関の設備投資計画を加えると、07年度の設備投資計画は前年比+7.3%増(同+7.8%増)と、06年度実績の伸び率に接近する。
今後、中小企業の本年度設備投資計画が固まってくると、07年度の設備投資の伸びは、06年度の伸びを上回る可能性が高い。

【設備と雇用の不足感は強まって行く】
 このように設備投資の伸びが続く背景には、企業の生産・営業用設備の不足感の強まりがある。
 大企業製造業の「生産・営業用設備判断」DIは、3月調査には過不足トントンのゼロであったが、今回は3%ポイントの「不足」超に転じ、今後も「不足」超が続く予想となっている。
 企業の不足感は、『雇用人員判断』DIではもっと顕著である。各規模各産業において「不足」超幅は拡大する予想となっており、全規模全産業ベースでは、6月時点の「不足」超8%ポイントが先行き13%ポイントに拡大する見通しである。
 このような設備と雇用の不足感が、投資と雇用の増加を通じ、経済の持続的拡大を支えることが期待される。

【日本銀行は躊躇なく利上げを継続せよ】
 以上のように、6月調査の「日銀短観」は、個人消費、設備投資、輸出が揃って拡大し、本年度下期にも経済成長が持続するとの企業の予想を確認する形となった。
 その中にあって、『販売価格判断』DIは、製造業の素材業種で「上昇」超、製造業の加工業種と非製造業(とくに中小企業)で「下落」超という形に変わりはない。
 国内企業物価が上昇する反面、消費者物価はなかなか上昇しない状況が続きそうである。
 しかし、この両物価の逆乖離現象は、このHPの<最新コメント>“物価下落と円安の併存はグローバル化に伴う内外価格差縮小の反映―消費者物価は当分上昇しないのが正常な姿”(H19.6.19)で指摘したように、内外価格差縮小の反映である。
 下期の経済拡大見通しを確認したいま、日本銀行は躊躇なく利上げを継続すべきである。