20064月版

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%台の実質成長と0.5%の消費者物価上昇で半年以内にゼロ金利打ち止めか

2月の生産は7ヶ月振りの下落、大勢は緩やかな上昇傾向
 2月の鉱工業生産は前月比−1.7%と7ヵ月振りの減少となったが、3月と4月の予測指数は同+0.3%、同+3.1%と2ヵ月連続の上昇となり、4月は最高水準を更新する形となっている(図表1参照)。3月と4月の実績はこの予測通りの大幅上昇にはならないかも知れないが、大勢として生産は緩やかな上昇傾向を保っていると判断される。
 業種別にみると、2月の生産下落に寄与した一般機械工業や電気機械工業は、3月と4月の予測指数では再び上昇に寄与しているので、2月の鉱工業生産一服は一時的とみられる。この間一貫して上昇に寄与しているのは乗用車が着実に伸びている輸送機械工業である。
 他方、前年に比して生産や出荷の水準が落ち、在庫率が上昇しているのは鉄鋼業である。3月調査「日銀短観」をみても、素材業種の「業況判断」DIが現状、先行き共にやや悪化しているのが目につく(このHPの<最新コメント>“06年度は雇用と設備の不足から内需主導型成長が続き企業収益率はピークを更新する予想―3月調査「日銀短観」が語る06年度の日本経済H18.4.3参照)。

【雇用の改善が進み失業率は大きく低下】
 2月の雇用は顕著な改善を示した。就業者の増加(前年比48万人増)と完全失業率の減少(同31万人減)から、完全失業率は4.1%と大きく低下した(図表2参照)。就業者のうち潜在失業者を含む自営業主と家族従業員は減少しており、反面雇用者は前年比126万人(+2.4%)も増えた(図表2参照)。
 雇用者の主な産業別内訳では、建設業を除く総ての産業で雇用者が前年を上回るに至り、特に製造業の増加(前年比47万人増)が初めてサービス業の増加(同39万人増)を上回った。
 他方、春闘では電子・電気機械や自動車などを中心にベースアップの動きが広がっており、今春の賃金上昇率が前年を上回ることは確実である。この動きは4月の賃金指数に反映されると見られるが、更に6月を中心に夏期賞与増加の影響も賃金指数の上昇に寄与してくるであろう。

【勤労者所得の回復から消費と住宅投資は緩やかに上昇
 このような雇用と賃金の改善を反映して雇用者所得は着実に増加し、今後の民間消費と住宅投資の回復を支えると見られる。
 民間消費については、家計統計が調査主体の内閣府自身が認めるように歪んでいるので、販売統計を中心に見ると、図表2に示したように2月の全国小売販売額は、前年比+1.0%の増加となった。乗用車新車登録台数は、昨年79月期と1012月期は前年を下回っていたが、年明け後1月と2月には夫々前年比+0.1%、+0.7%と回復している(図表2参照)。
 また2月の新設住宅着工は、季調済み年率で133万戸となり、前年を+13.7%上回った(図表2参照)。先行きの所得回復、住宅ローン金利上昇、住宅価格上昇などの予想から、昨年後半から始まった住宅投資の駆け込み傾向は当分続きそうである。

06年度の設備投資は05年度並みの伸びを続ける見込み】
 3月調査の「日銀短観」によると、全規模全産業の06年度設備投資計画(ソフトウェアを含み土地投資額を除く)は、前年比+0.8%の微増となった。毎年この時期の設備投資調査では、中小企業を中心に計画未定の企業が多く小さ目に出る。05年度も3月調査ではこの06年度よりも小さな伸び率であったが、次々と上方修正され、現在は前年比+11.3%の増加予定となっている。
 同じ短観の「生産・営業用設備投資判断」DIが、今回調査から「不足」超に転じたことから判断しても、今後予想外の経済的攪乱が発生しない限り、06年度の設備投資はほぼ05年度並みの高い伸びになると予想される(前述したこのHPH18.4.3付<最新コメント>参照)。
 取り敢えず足許の設備投資の動きを示す2月の一般資本財出荷は、図表2に示したように、前年比+13.7%の大幅増加となっている。また先行指数の機械受注(民需、除船舶・電力)は、1月の前年比+9.8%増のあと2月も同+8.2%増となり、13月の見通し(同+9.0%増)にほぼ沿った形で増加を続けている(図表2参照)。

【内需拡大に輸出回復も加わり株価は14年振りの高値】
 このように、民間消費、住宅投資、設備投資に支えられた民需主導型成長は着実に続いているが、2月の実質貿易収支の黒字も前月比+26.0%の増加と久方振りに大きく増えた(図表2参照)。1ヵ月の動きだけではまだ判断できないが、米国金利の上昇予測と日本のゼロ金利継続を背景に、このところ116118円圏内の円安相場が定着しているため、輸出が順調である。
 内需主導型成長に外需が加わると、今年の経済成長は一段と確りとした足取りになろう。株式市場もこのような動きに敏感に反応し、内需関連株と輸出関連株が揃って値を上げ、東証株価指数(TOPIX)は2000年の高値を上回り、9111月以来145ヵ月振りのピークを46日と7日に記録した。銘柄入替えの関係で低目になっている日経平均株価も、20007月以来の高値を付けている。

【消費者物価の0.5%上昇を受けてゼロ金利打ち止めの時期も遠くはない
 図表3に見られるように、成長率は昨年13月期、46月期、1012月期に加速しており、仮に本年13月期がゼロ成長でも05年度の平均成長率はバブル崩壊後最高の3.2%に達する。実際は、13月期も着実な成長を続けているので、05年度は3.23.5%の実質成長率となろう。名目成長率も、96年以来の2%に達するのではないか。
 06年度に入ると、デフレの収束から名目成長率も実質成長率の3%前後に近付いてくると見られる。全国消費者物価(生鮮食品を除く)の前年比は昨年10月以来5ヵ月連続してゼロ%以上となり、特に本年1月と2月は+0.5%の上昇となった。それだけ実質金利は低下して成長を促進しているということになる。
金融政策の効果は向こう2年間にわたって緩やかに出ることを考えると、消費者物価の前年比が+1%を超えないうちにゼロ金利を脱却し、+0.25%程度の幅で短期市場金利を緩やかに引上げ始めた方がよい。その時期は年央から秋口であろう。
 日本銀行政策委員会の多数意見も同じではないかと期待したい。