06年度は雇用と設備の不足から内需主導型成長が続き企業収益率はピークを更新する予想

―3月調査「日銀短観」が語る06年度の日本経済(H18.4.3)



【06年度は内需主導型成長が持続、売上高経常利益率は05年度を上回る
本日(4月3日)発表された3月調査「日銀短観」の最大の見所は、始めて行われた06年度に関する調査である。
その結果によると、生産・営業用設備と雇用人員の不足傾向、および企業金融の緩和傾向はジリジリと強まり、「三つの過剰」解消後の内需主導型成長は06年度も持続すると予想されている。これに伴い、06年度も増収増益が持続する予想となっているが、年度入り前の調査であるだけに、増収増益の幅は05年度より縮小する。
しかし、注目されるのは、06年度の売上高経常利益率が、バブル期のピークを上回った05年度より更に高まると予想されていることである。
以下、注目すべきポイントを見て行こう。

【業況判断の改善は足踏み、06年度の増収率は鈍化】
まず、全規模全産業の「業況判断」DIの「良い」超幅の改善は、足踏みをしている。これは製造業の素材業種と中小企業非製造業の若干の悪化が足を引張っているためである。製造業の加工業種と大企業・中堅企業の非製造業(特に小売)の「業況判断」は、着実に改善している。
製造業の素材業種では、国内と海外の「製商品需給判断」DIが依然として「供給」超であり、その縮小は遅々としている。海外市場の原料高にも拘らず、需給事情からそれを十分に販売価格に転換できないための業況不冴である。
次に06年度の売上計画をみると、各規模各産業で増収持続の予想となっている。しかし増収率は、05年度に比して鈍化している。全規模全産業の合計でみると、05年度は+3.8%、06年度は+1.9%である。もっとも、中堅企業の製造業と非製造業では、いずれも06年度の増収率の方が高い。経済拡大の影響が、大企業から中堅企業に拡大して来た。

【増益率が増収率を上回り06年度の利益率はピーク更新の予想
売上高と同様、06年度の経常利益も5年目の増益を持続するが、増益率は05年度に比して鈍化する予想となっている。全規模全産業の合計では、05年度は+6.3%、06年度は+4.4%である。
しかし06年度は、増益率の+4.4%が増収率の+1.9%を上回っているので、売上高経常利益率は05年度(バブル期のピークを上回る)よりも更に上昇する予想となっている。全規模全産業の合計でみると、05年度は3.83%、06年度は3.92%の予想である。規模別産業別の内訳をみると、05年度に比して低下する予想は大企業製造業(6.10%→6.07%)のみで、他の規模・産業ではいずれも上昇する予想となっている(下のグラフ参照)。



【06年度の設備投資は年度初計画としては05年度を上回る】
全規模全産業ベースの設備投資計画(ソフトウェアを含み土地投資額を除く)は、05年度の+11.3%に対し、06年度は+0.8%の微増となっている。毎年この時期の調査では、中小企業が翌年度の設備投資を決めていないため、小さ目に出るクセがある。因みに今回の06年度計画では、大企業が+3.5%、中堅企業が+1.5%であるのに対し、中小企業は−11.9%である。
この計画を昨年の同じ時期(3月調査)に比べてみると、各規模各産業で06年度計画の伸び率が05年度計画の伸び率を僅かに上回っている。今後、06年度中の経済の推移にもよるが、3月調査の+1.8%は決して弱い数字ではない。時の経過と共に上方修正され、05年度の+11.3%に近い設備投資の伸びになることも、期待出来ないことはない。
それは、計画の背後にある「生産・営業用設備判断」DIが、今回調査で各規模各産業で「不足」超ないし「過剰」「不足」トントンとなったからである。更に先行の見通しでは、「不足」超幅が拡大して行く。06年度の設備投資計画は、調査の度ごとに上方修正されて行く可能性が高い。

【雇用の不足感はジリジリ拡大し雇用改善が進む

「 生産・営業用設備判断」DIと並んで、「雇用判断」DIも「不足」超幅を拡大している。全規模全産業ベースの「不足」超幅は、12月調査の4%ポイントから今回3月調査では7%ポイントとなり、先行きは更に8%ポイントに拡大する予想となっている。
これを反映して雇用者数(全規模全産業の合計)も、05年12月末現在で前年比+1.2%の増加となった。このうち金融機関は、05年6月末までは前年比マイナスを続けていたが、9月末に前年比ゼロとなり、12月末には+1.3%と増加に転じた。
雇用方針に見られるように金融機関は営業方針全体を積極化している。企業側から見た「金融機関の貸出態度判断」DIは、中小企業を含め「緩い」超幅を拡大しており、全規模全産業で前回は15%ポイント(中小企業でも11%ポイント)、今回は16%(同12%)となった。

【雇用と設備の不足を背景に内需主導型成長が続く
以上のように、今回の「日銀短観」は、前回調査で明確となった設備と雇用の拡大意欲が一層強まっていることを示している(このHPの<最新コメント>“設備と雇用の拡大意欲が強まり景気回復に持続性が出てきた―12月調査「日銀短観」から来年の経済を読む”H17.12.14参照)。
いわゆる「三つの過剰」が解消し、@雇用と賃金(勤労者所得と個人消費)、A新規設備投資が新たな回復軌道に乗り、B銀行の貸出態度が前向きになってきたことを、今回の「日銀短観」ははっきりと裏付けた。
06年度も05年度に引続き、民間消費と設備投資の2本柱に支えられた民需主導型成長が続くポテンシャルが強いことを、今回の短観は示している。