上方修正された4~6月期成長率で消費増税に踏み切るのは早計(H25.9.9)

【GDPの4~6月期2次速報値は予想通り投資の上振れで上方修正】
 本日(9/9)、本年4~6月期GDP統計の2次速報値が公表され、同期の実質GDPの成長率は前期比+0.3%ポイント(年率1.2%ポイント)上方修正され、前期比+0.9%(年率+3.8%)となった。これは、このホームページの8月14日付<最新コメント>“4~6月期の国民総所得(GNI)はGDP(年率+2.6%)より高い伸び―4~6月期GDP統計の注目点”において予め指摘しておいたように、1次速報値では設備投資と在庫投資が低過ぎたためである。
 上方修正された需要項目は、下表のように、成長率への寄与度で見て、設備投資が+0.2%ポイント、在庫投資が+0.1%ポイント、公共投資が+0.1%ポイントであり、他方で家計消費が-0.1%ポイント下方修正されたため、全体では+0.3%ポイントの上方修正となった。


【設備投資と在庫投資の上方修正はまだ不十分】
 
2次速報値の企業投資、とくに設備投資は、「法人企業統計」の投資額によって1次速報値を修正するのであるが、下表にように、GDP統計の企業投資は、法人企業統計のそれに比して、2次速報値でも過少評価されているように見える。何故であろうか。先行き、更に上方修正される可能性があるのではないだろうか。


【GNI成長率がGDP成長率を上回る傾向】
 本年4~6月期の一つの特色は、8月14日付<最新コメント>でも指摘したように、GDP(国内総生産)の成長率に比して、GNI(国民総所得=国内総生産+対外所得収支)の成長率が高かったことである。1次速報値では+0.6%対+1.4%であったが、2次速報値でも+0.9%対+1.7%となった。
 日本企業のグローバルな発展に伴って、対外直接投資が国内設備投資よりも高い伸びを続けており、これに伴って、海外からの受取所得の伸びが高まり、対外所得収支の黒字は拡大を続けている。言うまでもなく、国民経済の規模を示す統計は、国内で発生した付加価値を集計した国内総生産ではなく、これに対外所得収支を加えた(実質ベースでは更に交易条件の変化を加えた)国民総所得である。
 これまでは、近似的に国内総生産(GDP)の推移のみを見てきたが、これからは国民総所得(GNI=Gross National Income)の趨勢にも十分な注意を払って、グローバル化した日本経済の動向を判定しなければならない。


【前回の消費増税は3年間2%台成長のあとでも景気後退を招いた】
 本年4~6月期の実質GDP成長率が、前期に続いて4%台前後となったため、明年4月からの消費税3%引き上げにとって有利な判断材料が出たという見方があるようだ。
 しかし、消費税率引き上げの是非を判定するには、2~3年間の趨勢として、経済が持続的成長軌道に乗っているかどうかを考えて決めなければならない。
 前回1997年度には、94~96年度の3年間、経済は2%台成長を続けていたが、それでも巨額の不良債権が存在していたこともあって、経済は9兆円の財政赤字縮小予算(消費増税5兆円、所得増税2兆円、社会保障負担2兆円、計9兆円)のデフレ・インパクトに耐えられず、景気後退となった。

【消費増税の1年延期か、毎年1%ずつの小刻み引き上げを検討せよ】
 今回は、不良債権は存在しないが、消費税率を予定通り5%から8%に引き上げると、それだけで8兆円のデフレ・インパクトが加わる。
 他方、経済は前回のように3年間にわたって2%台成長の軌道に乗っているわけではなく、消費増税直前の本年度に初めて2%台成長に乗ろうとしているところである。本年1~3月期と4~6月期の4%前後の成長は、本年度の2%台成長をようやく実現する程度の動きに過ぎない。
 従って、明年4月からの消費税3%ポイント引き上げ(8兆円増税)を決めるのは、極めてリスクが高いと言わなければならない。
 消費増税の少なくとも1年延期、あるいは様子を見ながらの毎年1%台ずつの小刻み引き上げという代替案を、真剣に検討すべき時であろう。