4~6月期の国民総所得(GNI)はGDP(年率+2.6%成長)より高い伸び(H25.8.14)
―4~6月期GDP統計の注目点

【在庫投資、設備投資、住宅投資、雇用者報酬、デフレーター、GNIに注目】
 8月12日に公表された本年4~6月期のGDP統計(1次速報値)によると、実質GDPは前期比+0.6%(年率+2.6%)と昨年10~12月期以来3四半期連続のプラス成長となった。しかしこの成長率は大方の予想よりもやや低く、前期(同+0.9%、年率+3.8%)の約3分の2にとどまった。このため、公表当日の株価は、失望売りに押されて下落した。
 しかし、内容を吟味すると、在庫投資の大幅な落ち込みによって最終需要の実勢よりもGDPがかなり低目に出ており、また設備投資と住宅投資は先行き上方修正される可能性があるのではないかと思われる。更に実質GDP成長率以外で、例えば雇用者報酬とGDPデフレーターの上昇、実質国民総所得(GNI)の高い伸びなど、注目すべき動きが見られる。

【最終需要は3%台後半の高い成長率】
 まず在庫投資を見ると、4~6月期の実質在庫投資落ち込みの影響は、実質GDPの前期比増加率に対し、-0.3%の寄与度に達しており、GDPから在庫投資の影響を除いた4~6月期の最終需要は、前期比+0.9%(年率3%台後半)の高い増加率となっている。
 この時期の在庫投資の減少は、過剰在庫の解消よりも売れ行き好転による意図せざる在庫減少の面が大きいと見られるので、将来の成長率を押し上げる要因と見てよいであろう。



【住宅投資のマイナスは先行きプラスに修正される可能性が大】
 次に毎四半期増加して成長を支えてきた住宅投資は、4~6月期に前期比-0.2%の減少となったが、好調を続ける住宅着工統計から見て違和感がある。下記のように、1~3月の住宅着工がやや足踏みしたことの反映かも知れないが、趨勢から判断すれば1~3月の住宅着工も高水準であり、住宅投資には着工統計の趨勢を反映させるべきである。そうしないと、7~9月期の住宅投資は、4~6月期の着工統計を反映して大きくとび上がることになろう。


【設備投資も先行きプラスに修正される可能性がある】
 毎四半期減少をつづけてきた設備投資は、4~6月期に底入れし、プラスに転じると見られていたが、ふたを開けてみると前期比-0.1%の減少であった。これは、一致指標である資本財(除輸送機械)の総供給(国産品の国内向け出荷+輸入)が1~3月期から増加に転じていること、先行指標である機械受注(民需、除船舶・電力)が1~3月期に下げ止まり、4~6月期に増加に転じたこと、などから判断すると、大きな違和感がある。
 GDPの2次速報値の設備投資は、近く公表される法人企業統計によって修正されることになるが、恐らくプラスに変わるのではないだろうか。


【デフレ解消・名実逆転解消の兆しか】
 長く続いているデフレの下で、GDPデフレーターは下落を続け、名目成長率が実質成長率よりも低い「名実逆転」が続いていたが、4~6月期の前期比成長率は、名目GDPが+0.7%、実質GDPが+0.6%、GDPデフレーターは+0.1%と逆転が消えた。
 国内企業物価指数の前月比が昨年12月からプラスとなり、全国消費者物価(除生鮮食品)の前月比が本年2月からプラスとなったことの反映である。
 これでデフレが解消したとは、まだ速断できないが、その兆しが4~6月期のGDP統計に現れたとは言えよう。


【雇用者報酬が増加傾向に転じるか】
 デフレの本格的な解消のためには、需給基調の引き締まりによって、企業収益のみならず、賃金も上昇して来なければならないが、4~6月期の雇用者報酬の前期比は、前期に続いて増加した。
 この上昇傾向が趨勢として定着してくれば、デフレ解消も本物となろう。



【国民総所得が国内総生産よりも高い伸びに】
 日本経済、ひいては国民生活の基盤を示す統計は、国内で生産された付加価値の集計値である国民総生産(GDP)ではなく、それに海外との所得収支や交易条件を加えた国民総所得(GNI)であるが、4~6月期はこれが前期比名目と実質の両方で+1.4%と大きく増加した。
 これは、主として所得収支の黒字が大きく拡大したためである。国内のみならず、海外での経済活動を大いに拡大していく日本は、従来のGDPだけではなく、GNIにも充分な注意を払って、経済の趨勢を判断しなければならない。