国内需要が6四半期振りにマイナス(H24.11.12)
―7~9月期マイナス成長の注目点

【7~9月期は予想通りのマイナス成長】
 本日(11/12)公表された本年7~9月期のGDP統計(1次速報値)によると、7~9月期の実質成長率は前期比-0.9%(年率-3.5%)と3四半期振りのマイナス成長となった(注)。
(注)本年7~9月期のマイナス成長は、東日本大震災の影響を受けた昨年4~6月期のマイナス成長以来5四半期振りのマイナス成長と見られていたが、今回のGDP公表の中で、昨年10~12月期の実質成長率が内需の下方修正(前期比+0.8%→+0.5%)によってこれ迄の+0.1%から-0.3%に下方修正されたため、3四半期振りのマイナス成長という形となった。

【需要項目別の動向も予想通り家計消費、設備投資、輸出がマイナス、公共投資、住宅投資がプラス】
 このマイナス成長とその原因(以下、全て実質ベース)は、大方の予想通りであり、このHPの<月例景気見通し>(2012年11月版)で予測した各需要項目の動きとも一致している。
 すなわち、国内需要では予想通り家計消費と設備投資の両方が前期比減少となったため、住宅投資と公共投資の増加にも拘らず、国内需要全体が前期比-0.6%(成長率に対する寄与度は-0.2%)と減少した。
 また外需(財貨・サービスの純輸出)は、輸出が前期比-5.0%と大きく減少し、これだけで成長率を-0.8%押し下げた。輸入(マイナス項目)は前期比-0.3%の微減となり、成長に対する寄与度は+0.1%となったが、輸出の寄与度が-0.8%と大きかったため、外需全体の成長に対するマイナス寄与度は-0.7%(寄与率78%)と極めて大きかった。

【注目すべきは国内需要が6四半期振りにマイナスの成長寄与度となったこと】
 7~9月期のGDP統計で特徴的なことは、前期比-0.9%のマイナス成長のうち、-0.7%が外需によってもたらされたことであるが、しかし、外需の大きなマイナス成長寄与度は今回が初めてではない。下表の通り、東日本大震災のショックや世界同時不況の影響で輸出が激減した昨年4~6月期と10~12月期には、夫々-0.9%、-0.8%と今回よりも大きなマイナス寄与度であった。
 これに対して、国内需要全体が成長に対してマイナスの寄与度となったのは、下表の通り、東日本大震災の影響を受けた11/1~3以来6四半期振りのことである。
 従って、海外経済の負の影響にばかり気を取られて、国内の景気対策の重要性を見落としてはならないと言えよう。



【名目、実質成長率の一致は輸入デフレーターの悪戯でデフレ解消の兆しではない】
 もう一つ、今回のGDP統計で目立つのは、GDPデフレーターが前期比-0.0%の横這いとなり、名目成長率と実質成長率が一致したことである。しかし、これをデフレ解消の兆しと見誤ってはならない。
 何故なら、国内需要デフレーターは、下表の通り、前期比-0.3%と下落を続けているからである。それにも拘らずGDPデフレーターが前期比マイナスとなったのは、GDP構成上のマイナス項目である輸入のデフレーターが前期比-1.9%と大きく下落したためである。
 これと逆のケースが昨年1~3月期にあった。国内需要デフレーターは前期比+0.3%と上昇したにも拘らず、輸入原燃料の高騰で輸入デフレーターが同+4.5%も上昇したため、GDPデフレーターは同-0.4%と下落を続けた。
 国内のデフレ状況を判定するには、国内需要デフレーターの動きに十分注意を払わなければ、ミス・リードされることがある。