成長率の上振れに伴い、デフレ終焉と雇用者報酬回復の兆し。10年度は2%台成長の公算(H22.5.20)

―10年1〜3月期GDPのインプリケーション

【10年1〜3月期は2000年1〜3月期以来10年振りの高い成長】
 本日(5/20)発表された本年1〜3月期のGDP統計(1次速報値)の特色は、以下の7点。
@前期比の季調済み実質成長率は、+1.2%(年率+4.9%)と2000年1〜3月期(+1.9%)以来10年振りの高い成長率となった。しかし、民間研究所等26社の事前予測の中央値(同+1.3%、年率+5.4%)よりは僅かに低かった。これは家計消費を中心に内需の寄与度が−0.3%ポイント低かったためで、外需の寄与度は実績の方が+0.2%ポイント高かった。
A09年7〜9月期の前期比が−0.1%から+0.1%に上方修正されたため、09年度は09年4〜6月期から10年1〜3月期まで4四半期連続のプラス成長となった。また09年4〜6月期と10〜12月期も上方修正されたため、10〜12月期の実質GDPの水準は旧統計より+0.3%高くなった。

【09年度の成長率は−1.9%と政府・日銀の見通しに比し大きく上振れ】
B上記の成長率上方修正に加え、10年1〜3月期が高い成長率となったため、09年度の成長率は−1.9%と10年1月時点の政府見通し(−2.6%)と10年4月時点の日銀政策委員見通し(中央値−2.2%)に比しそれぞれ+0.7%、+0.3%の上振れとなった。

【国内需要デフレーターは6四半期振りに上昇、名目成長率は実質成長率と同水準の高い成長】
C10年1〜3月期のGDPデフレーターは前期比0.0%と5四半期振りにマイナスを脱し、同期の名目成長率は実質成長率と同じ前期比+1.2%(年率+4.9%)の高い成長率となった。
  GDPデフレーターの内訳をみると、投資デフレーターの上昇によって内需デフレーターは前期比+0.4%と6四半期振りにかなりの上昇となり、デフレの終焉を示唆している。
  反面、輸入デフレーター(GDPデフレーターのマイナス項目)は同+3.9%と大幅に上昇したため、GDPデフレーターは同0.0%の横這いにとどまった。



【雇用者報酬は名目値底入れ、実質値は3四半期連続上昇】
D08年4〜6月期から7四半期連続して下落してきた名目雇用者報酬(季節調整済み)は、10年1〜3月期には前期比+1.6%と7四半期振りに上昇し、底入れした。
  実質雇用報酬(同)は、消費者物価が下落しているため、09年7〜9月期から3四半期連続して上昇し、10年1〜3月期は前期比+1.9%、前年同期比+2.1%とやや大幅な上昇となった。

【10年度はデフレ終焉と雇用者報酬の回復に伴い、政府・日銀見通しを上回る2%台成長の可能性】
E以上のように、10年1〜3月期のGDP統計は、外需の好調に内需の回復が加わって成長率が上振れし、つれてGDPデフレーターにデフレ終焉の兆しが現れ、また企業業績の回復が雇用者報酬の底入れを招く好循環の気配がでている。
F従って、アジア向け輸出の好調→企業業績の回復→雇用者報酬の回復→内需の回復→内外需揃った成長→企業業績は更に回復、という好循環が10年度を通して作動する可能性が高くなってきた。これに伴い10年度の平均成長率は、10年度1〜3月期の高成長で既に1.5%のゲタをはいていることもあって、政府・日銀見通しを大きく上回り、2%台成長となる公算が高い。

【内外需揃ったバランスのとれた成長パターン】
 10年1〜3月の実質GDP(支出側)の主要項目をみると、下のグラフのように、純輸出が前期比+0.7%と4四半期連続で高い成長寄与度を示しているほか、内需も家計消費が4四半期連続して着実に増加、設備投資も2四半期続けて持ち直し、住宅投資も5四半期振りに増加に転じるなど、内需全体として同+0.6%の成長寄与度を示し、内外需のバランスのとれた成長パターンになってきた。
 この間公共投資は、公共事業費予算の抑制を背景に、3四半期連続してジリジリと水準を下げている。



【民間予測との大きな違いは家計消費】
 これを民間の事前予想(研究所等26社の中央値)と比べると、下表のように、個人消費の伸び率が民間の予測よりもかなり低く、これが成長率全体を予想よりもやや低めにしている。



 このHPの<月例景気見通し>(2010年5月版)でも指摘したように、小売販売額、家電販売額、乗用車新車登録台数などの販売統計では、10年1〜3月期の消費は大きく伸びている。しかし、家計調査の消費支出(二人以上の世帯)は、販売統計ほど高い伸びを示していない。GDP統計の家計消費(1次速報値)は家計調査を基本とし、乗用車や家電など一部を販売統計で補っているので、低めにでているのであろう。先行き上方修正される可能性がある。

【10年度は+1.5%のゲタに加え、内外需の好循環で2%台成長となる可能性】
 10年1〜3月の実質GDPは、09年度の実質GDPを既に+1.5%上回っている。従って、10年度中の各四半期の実質GDPが前期比横這いでも、10年度の成長率は+1.5%となる(これを+1.5%のゲタをはいているという)。しかし、実際は各四半期が横這いということはないであろう。デフレの解消と雇用者報酬の回復が続く下で内需も自律的に成長し、内外需揃って成長を支えるからである。
従って、10年度の成長率は、10年1月現在の政府見通し+1.4%、10年4月現在の日銀政策委員見通し(中央値)+1.8%を大きく上回り、2%台成長になる可能性が高いと予測される。