成長率の上方修正と株価のリバウンド(H19.3.12)

【10〜12月期の成長率は設備投資の上振れで年率5.5%へ上方修正】
 本日(3月12日)発表の10〜12月期GDP「2次速報」によれば、昨年10〜12月期の実質成長率(前期比、年率)は、「1次速報」の+4.8%から+5.5%へ上方修正された。
 これは、既にこのHPの<月例景気見通し>(2007年3月版)で予想した通り、10〜12月期の法人企業統計の結果を織り込んで、設備投資が大きく上方修正されたためである(<月例景気見通し>2007年3月版“円安バブルの崩壊と世界同時株安―実体経済への影響見極めはこれから”H19.3.5参照)。
 また、先週金曜日(3月9日)に発表された本年1月の機械受注統計によると、設備投資の6〜9月の先行指標である民需(除船舶・電力)は、前月比+3.9%増、前年同月比+2.6%増となった。この1月の水準は、10〜12月平均を+4.7%上回っており、10〜12月期(前期比+2.0%増)に続き、1〜3月期も緩やかな増加となりそうである。このような先行指標の動きから判断して、設備投資の底固い動きは、本年も続きそうである。


名目設備投資の前期比(%)
           06/1〜3   4〜6   7〜9   10〜12
GDP1次速報     3.4    3.1    1.2    2.8
法人企業統計    6.4    4.9    0.6    5.2
GDP2次速報     3.7    3.1    1.3    3.2



【2006暦年は潜在成長率を上回る成長でGDPデフレーターのデフレは解消へ】
 2006暦年の平均成長率は、10〜12月期の上方修正にも拘らず、「1次速報」と同じ+2.2%にとどまったが、2006暦年中の各四半期の平均年率成長率(10〜12月期の前年同月比)は、「1次速報」の+2.1%増から「2次速報」の+2.3%増に高まった。
 いずれの指標をとるにせよ、2006暦年中は、潜在成長率の+2%弱を上回る+2%強の成長を遂げたことにより、GDPの需給ギャップは改善した。これを反映し、GDPデフレーターも、期を追って前年同期比の下落率は縮小し、また前期比では、遂に10〜12月期にプラスに転じた。GDPベースでも、デフレは解消したと見てよい。


GDPデフレーターの推移(%)
         06/1〜3    4〜6    7〜9    10〜12
前年同期比    −1.3    −1.1    −0.7    −0.5
前期比       −0.3    −0.1    −0.1    +0.1



【日本の株価急落はリバウンドし4割方戻る】
 このような2006暦年中の経済動向を反映し、2006年度の企業業績も大幅な好転が予想されているため、日本の株価は2月26日(月)に、日経平均で18200円台まで上昇していた。しかし、その後上海株式市場の株価急落に端を発する日米欧同時株安が発生し、日経平均は3月5日(月)まで5営業日連続して大幅に下落し、16600円台となった。
 これは、このHPの<月例景気見通し>2007年3月版で述べたように、「円キャリ取引」の巻き戻しが大きく響いており、円相場も対米ドルで121円台から115円台へ、対ユーロで159円台から152円台へ急騰した。
 しかし、幸い株価は3月6日(火)に下げ止まり、しばらくもみあった後にリバウンドし、本日(3月12日)は日経平均で17300円台へ、下落幅(約1600円)の4割程戻っている。

【日米欧同時株価も一段落】
 日米欧同時株安の大きな背景は、ヘッジファンドを始めとする投資家の株式投資がグローバルに行われているため、一国の株価急落は、これに伴う損失を穴埋めする他国の株式の売りを誘うためである。
 特に今回の場合は、米国経済の見通しがやや下振れしていたことと、円キャリ取引の巻き戻しがあったことによって、同時株安の幅が少し大きくなった。
 しかし、米国経済の先行きについては、住宅投資にやや不透明感はあるものの、2月の雇用統計も着実な改善を続けていることが確認され、成長の底固さが確認されつつある。
 また日本経済についても、5日間の大幅な株安と円高が既にリバウンドし、実体経済への影響はほとんどなさそうである。円キャリ取引の巻き戻しも一段落したように見える。
 今後は、07年3月期の企業業績と07年度経済の見通しによって、株価の動向が左右されるのではないか。