設備と雇用の拡大意欲が強まり景気回復に持続性が出てきた(H17.12.14)
─ 12月調査「日銀短観」から来年の経済を読む─
【06年度も景気拡大は続きデフレ収束は時間の問題】
本日(12月14日)発表された「日銀短観」(調査期間11月10日〜12月13日)によると、「業況判断」DIは大・中堅・中小の各規模企業の製造業と非製造業の6部門でいずれもジリジリと好転を続け、05年度の増収・増益率と売上高経常利益率は3ヶ月前の調査に比べて一段と上方修正された。この結果、大企業の製造業と非製造業および中堅企業の非製造業の3部門では、売上高経常利益率がバブル期のピークを越えた水準で、更にジリジリと上昇している。
今回調査では、まだ06年度に関する質問は一部しかないが、雇用と設備の判断DIの「不足」超がジリジリと拡大して雇用増加と設備投資の意欲が強まっていること、05年度下期の設備投資計画が大きく上方修正され06年度にズレ込むと見られることなどから判断して、06年度も引続き国内民需主導型の景気回復が続く可能性が高い。
このため、国内の需給事情は06年度に向かってジリジリと好転し、デフレ収束の可能性は需給面からも強まってこよう。
【年度下期の売上高上方修正で需給事情は更に好転】
個別に調査項目を見て行くと、「業況判断」DIは前述のように6部門すべてでジリジリと好転しているが、その結果中小企業非製造業を除く5部門では、バブル崩壊後の15年間で最高水準に達している。
05年度下期の売上高前年比は6部門合計(全規模全産業)で3ヶ月前比+1.1%ポイント上方修正されて+3.2%の増加見込みとなっているが、このうち大企業製造業の輸出計画は、+2.8%ポイント上方修正され、+8.3%の大幅増加となっている(上期は+5.4%)。下期の輸出回復期待は崩れておらず、むしろ自信を深めているようだ。
この結果、大企業製造業の「需給判断」DIは、なお「供給超過」とはなっているものの、この30年間でバブル期を除くともっとも縮小している(下図の上段グラフ参照)。
また「価格判断」DIも、販売価格はバブル崩壊以降「下落」超幅がもっとも縮小し、仕入価格はバブル期を上回る「上昇」超となっている(下図の下段グラフ参照)。06年度に向け、デフレの収束は時間の問題になってきた。
【05年度の設備投資は大幅な伸び、雇用の「不足」超幅は拡大】
需給好転を反映して、「生産・営業用設備」判断DIは、6部門合計(全規模全産業)で見て、3ヶ月前の「過剰」超「2」から今回は「0」、先行きは「不足」超「1」に転じた。
このため05年度の設備投資計画(ソフトウェアを含み土地投資を除く、6部門合計)は、3ヶ月前に比べて1.3%ポイント上方修正され、前年比+11.0%の大幅な伸びとなっている(04年度は+5.1%)。
また前回調査で「不足」超「2」に転じた6部門合計の「雇用人員」判断DIは、今回は「不足」超幅が「4」に拡大し、先行きは更に「7」に達する見込みとなっている。
今回の「日銀短観」にはベア率の調査はないが、このような雇用情勢から見て06年度の賃金上昇幅は拡大しよう。雇用と賃金の好転は06年度の勤労者所得を増加させ、個人消費は堅調に推移しよう。これに設備投資の増勢持続が加わり、国内民間需要にリードされた05年度の成長は、06年度も続く可能性が高まっている。
更に、前述の輸出好転が重なれば、05年度下期から06年度にかけて、成長は着実に続くことになろう。
リスクは、06年度予算の緊縮度合いと、今後の金融政策展開といった国内のマクロ政策要因によって、成長の力がそがれないかにある。