民需主導で実質的にはバブル崩壊後最高の成長率となった05暦年(H18.2.17)
─ 10〜12月期は内需、外需が揃って5.5%の高成長─
【10〜12月期は予想通り年率5.5%の高成長、05暦年も2000年に次ぐ高記録】
本日(2月17日)発表された05年10〜12月期の実質GDP(1次速報値)は、前期比+1.4%(年率+5.5%)増の高成長となり、その結果05暦年の平均実質GDPは前年比+2.8%増と、バブル崩壊後では1996年の+2.6%を上回り、2000年の+2.9%に次ぐ高い成長率となった。
10〜12月期と05暦年の成長率がこの程度の高さになることは、既に発表されているマクロ統計に基づいて、このHPの<月例景気見通し>(2006年2月版)で予測した通りである。
民間消費支出(寄与度+0.4%)、民間住宅投資(同+0.1%)、企業設備投資(同+0.3%)の国内民需3本柱が揃って増加し、これだけで+0.8%(年率+3.2%)の成長を実現しているうえ、輸出の回復持続(寄与度+0.4%)と輸入の一時的落込み(同+0.2%)で更に成長率を+0.6%(年率2.4%)押上げている(下の図表1参照)。
【名目成長率の+3.5%は長期金利を大きく上回っている】
10〜12月期のGDPでもう一つ注目されることは、名目成長率が前期比+0.9%(年率+3.5%)にまで回復してきたことである。年率+3.5%の名目成長率は、10年物長期国債の市場利回り1.5%強をはるかに上回っている。
これ程極端ではないとしても、今後の回復の過程で名目成長率が長期金利を上回り続けると、債務超過の財政や一部企業の再建は有利になる。
また株価が基本的には名目成長率と相関の深い企業収益の増加を反映するとすれば、株価の回復にとっても有利な環境になる。
【雇用者報酬の本格的な回復が始まった】
第3の注目点は10〜12月期の雇用者報酬である。下の図表2に示したように、実質の雇用者報酬は04年に底を打ち、05年からジリジリ上昇していたが、05年10〜12月期にはボーナス期ということもあって大きくハネ上がり、バブル崩壊後の94年以来どの10〜12月期よりも高く、最高を記録した。
また名目雇用者報酬は、実質ベースほどはっきりした回復傾向は見られなかったが、05年10〜12月期には大きく上昇して、上昇傾向がはっきりしてきた。
こうした雇用者報酬の本格的な回復は、本年春闘で一部好業績企業がバブル崩壊後初のベースアップを実施することによって、更に確実になってくるのではないか。
【05年はバブル崩壊後民間主導で最高の成長】
雇用者報酬の本格的な回復は、バブル崩壊によって発生した「三つの過剰解消」によって可能となった(このHPの<論文・講演>「BANCO」“三つの過剰解消の意味”参照)。回復した企業収益が、債務返済、設備償却、退職推奨などの資金にあまり回らなくなり、新規雇用・賞与などにも向ってきたからである。
バブル崩壊後の最高成長率を記録した2000年と05年のGDPの中身を下表によって比較してみると、このことがよく分かる。2000年の2.9%成長は輸出著増による純輸出で+0.5%、後ろ向きの在庫投資で+0.7%成長しており、両者を差し引くと僅かに1.7%しか成長していない。
これに対して05年の2.8%成長に対しては、純輸出が+0.2%、在庫投資が+0.1%しか寄与していないので、これらを差し引いても2.5%の高成長である。これは、雇用者報酬の回復を背景に、民間消費が2000年の+1.1%に対し、05年は+2.2%と2倍の伸びを示しているからである。