下期の日本経済を展望する(2022.7.18)
―『世界日報』2022年7月18日号“Viewpoint”(小見出し加筆)

【個人消費中心の回復期待】
 下期を迎え、日本経済は複雑な動きをしている。
 緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が解除され、「ウィズコロナ」の時代に入った日本国内では、3月以降、個人消費が立ち直りを続けている。日銀試算の「実質消費活動指数+」や家計調査の「実質消費支出」などの消費指標(季調済み)は、いずれも2月を底に3月から回復している。7月には入国制限も緩和され、インバウンド消費の復活も期待される。6月調査「日銀短観」では、非製造業の「業況判断DI」が、対個人サービスを中心に、半年ぶりに大きく好転した。

【4、5月の鉱工業生産、出荷が大幅に下落】
 しかしその半面で、製造業の「業況判断DI」は、3月調査に続き、2期連続して悪化した。鉱工業生産と出荷も、3月に頭打ちとなったあと、4月と5月に2カ月連続して減少した(生産は通計8・5%減、出荷は同4・6%減)。とくに5月の落ち込みは大きく、生産は前月比7・2%減、出荷は同4・3%減であった。1カ月前に調査された製造工業生産予測では大きく増加する計画であったから(4月は前月比5・8%増、5月は同4・8%増の計画)、これは企業が予期していなかった減産であることは明らかだ。

【中国経済混乱が悪影響】
 原因は中国にある。コロナ感染症が再拡大した中国では、いわゆる「ゼロコロナ政策」で5月末まで上海市の都市封鎖(ロックダウン)と北京市の一部封鎖が行われた結果、日本に輸出する部品工場の生産・出荷が止まった。日本と中国にまたがるグローバル・サプライチェーンの寸断で部品不足に陥り、減産を余儀なくされた国内の業種は、自動車、電機・情報通信機械、汎用・業務用機械、生産用機械など日本を代表する主力業種である。
 このため4月と5月の輸出金額は、これらの製品の減少を中心に伸び率が鈍化し、半面で原油、石炭、液化天然ガス(LNG)など価格高騰の激しいエネルギーを中心に輸入金額の増加率が高まっているため、4月以降、貿易収支の赤字は拡大している。

【製造業は6月以降回復か】
 コロナ禍に伴う中国経済の混乱は6月以降、徐々に収まり、つれて日本の製造業の生産、出荷も正常化し、下期には非製造業と製造業は揃《そろ》って回復軌道に乗ってくると期待される。これを支えているのは国内民間需要である。個人消費は、夏の行楽期に大きなコロナ感染症の再拡大がなければ、コロナ禍で2年間蓄えられた「ペントアップ需要」の顕在化もあって、回復を続けよう。

【技術革新を中心に設備投資は大幅増加の計画】
 加えて、コロナ禍の下、最近2年間は横這《ば》い気味に推移してきた企業の設備投資が、今後上昇に転じる兆しがある。本年度の企業設備投資計画(ソフトウエア投資を含み、土地投資を除く)は、「法人企業景気予測調査」(4~6月調査)が前年比16・0%増(前年実績同5・3%増)、「日銀短観」(6月調査)が前年比13・5%増(同0・9%増)と、いずれも前年より高い伸びを計画している。とくに「日銀短観」の本年度「ソフトウエア投資」は、前年比17・4%増(前年度実績は同5・4%増)と、DX(デジタルトランスフォーメーション)、脱炭素などを中心に技術革新投資が盛り上がりを示している。

【下期回復を脅かす欧米のインフレ進行と性急な利上げ】
 このような国内民間需要を中心とする日本経済の下期回復を脅かしているのが、国際経済情勢である。ウクライナ情勢と絡む米欧経済のインフレ進行と、これを抑えようとする金融政策の引き締め転換により、世界経済が成長を維持したままインフレ率引き下げに成功すればよいが、引き締め転換の遅れから利上げが性急になっているだけに、景気後退を引き起こすリスクがあり、長い金融超緩和のあとだけに、システムリスクも心配だ。

【日本の政策転換の遅れが心配】
 世界経済に混乱が起これば日本の輸出と企業心理・消費者心理にダメージが及び、国内民間需要中心の下期回復にも、水が差されることになりかねない。日本では4月以降の2%超の消費者物価上昇を一時的とみて日銀は動かないが、物価上昇基調が徐々に強まっており、今後遅れた政策転換で金融システムに混乱を起こさないか心配だ。