緊縮財政から健全財政路線に転換―藤井財務相 (H21.12.3)
―『世界日報』2009年12月3日号

【藤井裕久財務大臣、鈴木政経フォーラム昼食勉強会で見解を披瀝】
 藤井裕久財務相は2日午後、東京・神田の学士会館で開かれた「鈴木政経フォーラム」(代表・鈴木淑夫元日銀理事)にゲストとして出席。焦点になっている今年度2次補正予算について、マネー・マーケットの信頼を維持するため、「真水(財政支出)では(当初想定されていた3兆円規模から)大きく上積みすることはできない」としながらも、昨今のデフレ大不況と為替相場のドル安・円高方向への変調を念頭に、「総事業費で数十兆円規模」の景気対策を発動すると表明。
 また、来年度予算の編成に関し、鈴木氏が「前政権の第1次補正後の段階で一般会計歳出が103兆円規模に膨れ上がっている。これを92兆円規模に抑制すれば相当の緊縮財政になり、景気に悪影響を与えるのではないか」と質問。これに対し藤井財務相は、「小泉純一郎政権以降の緊縮財政・超金融緩和路線が日本経済を外需に依存した脆弱な構造にした」との鈴木氏の指摘に理解を示した。

【景気と財政再建の両にらみで予算編成】
 そのうえで、「大型の公共投資は今日、一億総格差社会をもたらす。一国主義的ケインズ政策の時代はもはや終わった」と述べ、「マーケットの信頼を維持するためにも、来年度予算の国債発行額は44兆円程度に抑制する必要がある」と言明。ただ、@公益法人の抜本的見直しなどで税外収入を10兆円程度は確保するA無駄で非効率な歳出を内需振興に役立つ効率的な歳出に組み替える−ことなどで、「緊縮財政路線ではなく(景気と財政再建の双方に配慮した)健全財政路線を採る」と述べた。
 税外収入の増収策に関連して、「米国は、ガイトナー財務長官が強いドル政策を表明しているが、バーナンキ連邦準備制度理事会(FRB)議長はドル安が良いと言っていて、二枚舌的なところがある」との懸念を表明、外国為替資金特別会計の剰余金の取り扱いについては慎重を期する必要があると指摘した。
 今後の経済成長戦略については、@ライフステージごとの機会均等と安全ネットワークを確立するA低炭素社会を実現するBアジアの新興国・途上国への直接投資と環境エネルギー技術支援を促進する−との鈴木氏の提言に理解を示した。
 特に、超少子高齢化社会に入ったことを踏まえ、福祉と地域経済の振興に努めるとともに、東アジア諸国の内需振興に貢献しつつ、わが国の高度な技術力を活かし、同地域への「輸出拡大に取り組むことが大切だ」として、鳩山由紀夫首相の「東アジア共同体」構想を経済面から補強した。なお、同フォーラムはゲストと鈴木氏が焦点の時事問題で討論、有益な内容を提供する目的で開かれている。