ゴルフ三題話―時間、道具、インプラント (H19.5.15)

 程ヶ谷カントリークラブ会報『H.C.C』(No.613 2007 May)の”シリーズ「ゴルフと私」”欄に掲載された私のエッセイ
 

『ゴルフの上手なエコノミストは贋(にせ)者である』
 これは、50年間エコノミストとして過ごしてきた私が秘かに抱いている「定理」である。
 私の尊敬するエコノミストの大先輩は、お名前を挙げるのははばかるが、皆ゴルフをやらないか、やっても下手くそであった。エコノミストは、平日は他の人と同じように自分の属する組織の仕事で忙しい。内外の論文や書物を落着いて読んだり、個人的な論文や本を書く時間は、週末しかない。若いうちは残念ながらゴルフに割く時間がないのである。
 銀行の調査部長のゴルフの会などをやると、巧いのは以前営業畑などに居た人で、調査一筋の人は、大変なスコアで回って来る。私はその人達を本物のエコノミストとして尊敬していた。私自身、日本銀行のロンドン駐在の頃に、石坂一義駐在参事の下、木村文穂さんや相馬克美さんなどと共に少しゴルフをかじったが、帰国後支店長にでる迄の7年間に、3回しかゴルフをしていない。
 例外的にゴルフの上手な本物のエコノミストが居ないことはないが、彼等は若い頃米国の大学に長期間留学し、キャンパス内のゴルフ場で、確り基礎を身につけた学者が多い。
『年をとって衰えるスピードと、クラブやボールなどの道具が進歩するスピードが丁度マッチした』
 程ヶ谷CCの大先輩、大河原良雄さんの言葉である。何回もエージシュートを達成された大河原さんに、どうしてそのような偉業が可能であったのか無邪気に尋ねたところ、笑顔と共にこの答が返って来た。
 ゴルフに限らず、スポーツの道具の進歩は著しい。私はスキーでそれを実感したことがある。大学を出た直後に日本銀行札幌支店に勤務してスキーを覚えた私は、その後本店に戻り松本支店長に出る迄の17年間、忙しくてスキーどころではなかった。単身赴任の支店長は週末に時間が余るので、最新型の板と靴とビンディングを揃えてゲレンデに出たところ、何と昔より上手に滑れるではないか。
 ゴルフ・クラブではSヤードのウッドが私に合うような気がするので、軽量の新型モデルが売り出される度に、思い切って全部買い替えている。去年の9月で4回目であるが、下手くその私は新型モデルを買う度に、スイングが矯正されているような気がする。
『トーナメント・プロには歯がボロボロになる人が居る』
 こんな話を耳にしたことがあるだろうか。スイングの時、自分では意識していなくても、人は歯を喰いしばるらしい。そのため、噛み合わせの悪いプロは、歯がボロボロになってしまうという。
 私は子供の頃から歯を確り磨いていなかった報いで、ほとんど総入れ歯になりそうになった。そこで去年思い切って、あごの骨にチタンの釘を打ち込んで義歯を支えるインプラントの手術を受けた。お陰で固い物でもバリバリおいしく食べられるようになり、最近は体重が増えるのを抑えるのに苦労している。
 この歯医者さんもゴルフが大好きで、インプラントの手術をすれば、確り歯を喰いしばれるので飛距離が伸びると言う。

 年には勝てないと分ってはいるが、ラウンドする「時間」が増え、進歩した「道具」を使い、「インプラント」をした私のゴルフは、程ヶ谷の楽しいパートナーズに恵まれて、これからどうなるのであろうか。