竹中プランは銀行再生では何の成果も出していない(『金融ビジネス』(2005年4月号)特集:金融庁への大疑問)

─ 金融行政へ私の注文(Interview2) ─

── 竹中金融行政への評価は。
   竹中さんの金融行政の特色は、前任の金融担当大臣である柳澤さんの金融行政を全部ひっくり返したことにある。その結果、大手行の不良債権比率は半減。りそなに公的資金を入れ、大きな金融機関は国有化しても潰さないことを示したので、金融危機の懸念も薄れてきた。今年の4月からペイオフを全面解禁しても大丈夫だとみんなが信用するところまできた。竹中プランの一定の成果だ。
   「一定の」と断るのは、不良債権比率の低下は、景気回復に相当支援された。また、大手銀行は救う、しかも株主責任を問わないという問題がある政策を採った。この二つによって達成できた成果という点に、まず疑問符が付く。しかし、最大の問題は、公的資金を入れ不良債権比率を下げれば銀行問題は解決する、銀行が元気になって景気回復を金融面から後押しできると竹中さんは判断していたが、それが間違っていたことだ。相変わらず銀行貸出は減り続け、マネーサプライも2%くらいしか伸びていない。銀行の再生という意味では、竹中プランは何の成果も出していない。

── 銀行再生が進まないのはなぜだと考えられますか。
   金融行政がBISの自己資本比率規制を金科玉条のように墨守しているからだ。BIS規制は、バブル時代に国際金融市場でシェアを拡大した日本の銀行を抑えようとしたものだが、あくまでも国際的に活動している銀行に対する規制だ。国内業務しかやっていない銀行は、BIS規制を参考にしろと要求されているわけではないのに、4%というまったく根拠の無い数字を使って規制している。
   問題点を整理すると、第一に、BIS規制は景気変動促進的であること。不況時には信用リスクが高まり、自己資本比率が下がるから、貸出を抑える。貸出抑制は不況を深刻化させるという悪循環に陥っている。第二に、自己資本比率の維持、不良債権比率の引き下げ、収益率の向上という目標は相互に矛盾するのに、それを三つとも達成しろと行政が要求する。結局、銀行は唯一の解決策である貸出縮小に走る。第三に、繰延税金資産が認められるためには十分な黒字を出さなければならないから、いい値段で売れる資産を売却する。銀行のポートフォリオの劣化を招き、将来の収益率が下がる。第四に、国債はBIS規制ではリスクウェートゼロだが、国債の比率を増やすことが将来の収益率を下げ、国債にまつわるリスクを高めている。
   銀行は貸出すると不利な状況へ追い込まれているが、それを竹中プランは考慮していない。

── 金融行政をどのように変えていくべきですか。
   新BIS規制は、国内行には適用せず、4%規制はやめるべきだ。やめてほっぽり出すのではなく、BIS規制方式ではない自己資本比率を考える。自己資本比率、不良債権比率、収益率は銀行経営のキーだが、この三つをどうバランスさせるかは銀行経営者が自己責任で選択する。それでないと銀行経営の合理性が損なわれる。金融行政がやるべきことは、この三つの指標について銀行がうそをついていないか、しっかり検査し、その結果を開示させることだ。判定は行政ではなく市場が行う。そうした市場型のルール行政にしてほしいが、指導型の介入行政が続くおそれがある。市場型行政と言っているそばから、「プログラム」などという言葉を口にするのは、相当に怪しい。
   大手行の経営者が不良債権処理に甘かったのは事実で、それに対して厳しくやったのは一定の評価をしていい。しかし、情報には不完全性、非対称性がある。しょせん行政に伝わる情報には限界がある。検査をすれば全部わかるなどと思ってはいけない。不良債権処理を促進するのはいいが、細かい案件についてギリギリやることは過剰介入行政と言える。