日本の経済危機と金融不安は橋本内閣の「無策」にあり

(『月刊経済』1998年5月号)

本文はインタビュー形式になっています。

 いま日本は未曾有の経済危機と金融不安に覆われるという暗黒時代を迎えている。この原因は「橋本内閣の無策にあった」と糾弾するのはエコノミスト議員の鈴木淑夫氏だ。氏は「現在の不況こそ典型的な政策不況だ」と断言する。では、何が「政策不況」なのか、聞いてみた。

―― 日本経済の現在の不況は「政策不況」であるというのが、先生の主張ですね。

鈴木 その通りです。現在の経済危機、金融不安は、戦後日本経済が初めて経験する深刻なものですが、これは完全に政策の失敗に原因があるからです。

―― 具体的には?
鈴木 これには二つの原因があります。まず第一に、九七年度予算が九兆円の国民負担と三兆円の公共投資カットを内容とした超デフレ予算だということです。

―― 九兆円の国民負担というのは昨年四月の消費税率の引上げ、特別減税の打ち切り、健康保険など社会保障の負担増加ということですね。

鈴木 そうです。だいたい九兆円というのは国民所得の二・三%ですよ。その結果、昨年の四月以降、実質可処分所得の増加が止まって消費と住宅投資の落ち込みを招き、公共投資も予算通りに落ち込んできた。

―― ところが政府は……

鈴木 政府は「四月以降の落ち込みは消費税引上げ前の駆け込み需要の反動だから、夏には回復する」とバカなことをいってた。政府があまりにも呑気なことをいうものだから、自動車、家電、コンピュータなど日本の典型的な加工組立産業が増産を続けてしまったんです。ところが、夏になっても需要は回復しない。だから過剰在庫が溜ってしまった。そこで本格的な生産調整が始まった。その結果、原材料を買わなくなった。たちまち鉄鋼、ガラス、プラスチックなど素材産業でまた過剰在庫が溜ってしまった。ここも生産調整を始めた。そうなると、今度は時間外労働が落ちていく、ボーナスも落ちていく、失業者が増えていくといった、雇用・賃金面からもう一段の冷え込みがきた。

―― まさに超デフレ予算が招いた循環的不況の典型ですね。

鈴木 そのとおりです。ですから現在は、自律的な景気後退局面に入ってしまったといえるでしょう。だいたい日本経済は九六歴年には三・九%成長まで回復し、九六年度でも三・二%と三%台成長を確保していたんです。そこに超デフレ予算をぶつけてしまった。そのうえに政府はまたバカなことをして、去年十二月に財政構造改革法を成立させた。したがって、どんどん景気後退が進んでいる現状の中で、また九八年度もデフレ予算を出してきたわけですよ。財政構造改革法に縛られてるから、一般歳出が二・二兆円減、公共投資に至っては一四%減というわけです。

  ―― これでは日本経済の先行きはドロ沼ですね。

鈴木 私は国会で「このデフレ予算という政策転換をしなければ経済危機を克服できない」と再三にわたって警告してきたんです。とにかく政府は政策転換することです。

  ―― すると、今年の日本経済はどうなりますか。

鈴木 これだけ勢いよく落ち込んできている経済状況ですから、夏まで落ち続けるでしょう。景気後退が終り緩やかな景気回復があるという感じは秋口以降だと思います。

  ―― 秋口までは厳しいと?

鈴木 それは四月に抜本的な政策転換をしても、という意味ですよ。

  ―― 政策転換しても、と……。

鈴木 そう、「……しても」です。

  ―― できなければ……

鈴木 政府は口ではいろんなこといってますが、いい加減な、ぐずぐずした政策転換であれば、このままずるずるいくかもしれない。

  ―― うーん……。では、第二の政策の失敗はどうですか。

鈴木 この第二の政策の失敗は、政府が国民に対して言った四つの約束ですね。

  ―― 四つの約束?

鈴木 そう。一つは、二年前に六千八百五十億円という国民の血税を住専処理に投入したということ。住専は預貯金を取り扱わないから、この血税は預貯金者の元本を保証するためではなくて、債権者の農林系金融機関に回ったお金ですね。つまり農林系統金融機関の経営を救ってしまった。国民はこれには激怒して激しい批判を浴びせた。だから、びっくり仰天した橋本内閣は「今後は住専のようなノンバンクには一切公的資金を投入しません」と約束をしたわけです。

  ―― ええ、そうでした。

鈴木 二つ目は「たとえ預貯金を扱ってる金融機関であっても、信用組合以外は公的資金を投入しません」。三つ目に「大銀行はつぶさない」、四番目に「間違いなく二〇〇一年三月までは預金・貯金は全額保障します」という四つの約束ですね。私はこのときも国会で、何度も「デフレ予算で経済を冷え込ませているときに、この四つの約束は保てるわけない」と警告したんですが、政府は言うこと聞かない。結局、何も手を打たずに二年間放っておいた。まったくの無策ですよ。

今 の 不 況 は 典 型 的 な 政 策 不 況

  ―― やはり、案の定……

鈴木 案の定、金融機関の倒産が相次ぎ、去年の秋ついに大銀行の北海道拓殖銀行、さらに四大証券の山一証券がつぶれた。だれの目にも公的資金を投入しなければ、預貯金は保障できないことは明らかな状態になってしまった。私の警告どおり、無策のために金融不安を招いてしまったということですよ。そこで政府は、遅ればせながら三十兆円というお金を用意して、十七兆円は預貯金の元本保障に足りなくなった場合に使い、十三兆円は自己資本比率が低いために貸し渋りをしている銀行に資本注入すると、こういうものを出してきたんですね。いずれにしても、超デフレ予算による景気後退にあるときに、十一月の金融不安によってさらに投資マインドや消費マインドを冷え込ませてしまった。だから景気が一段と冷え込んできたわけです。ですから、きょう(三月十三日)経済企画庁が発表した去年の十 十二月期の実質GDPは〇・二%のマイナス成長ですよ。

  ―― なるほど。確かに完全な政策不況ですね。

鈴木 もう典型的な政策不況です。

  ―― しかし、昨年の十一、十二月あたりから、ようやく政府にも危機感が出てきたようですね。

鈴木 そう、出てきたけれども、ここで二つの大間違いをしてる。一つは、十二月に財政構造改革法を成立させた。これは危機感がいい加減な証拠ですよ。そうでしょう、危機感が本当にあるなら、この先の財政政策運営の手足を縛るようなバカな法律をつくるわけはない。だから、いい加減だ、と。そして、もう一つの間違いは、三十兆円の公的資金を金融安定化対策として用意することによって、金融システムが安定化し、景気が回復すると思ってること、これが大間違い。

  ―― うん、そこがお聞きしたかったんです。

鈴木 どうしてこれが大間違いかといえば、さっき申し上げたように、現在の景気後退は超デフレ予算が引き金になって始まり、そして自律的な景気後退局面に入ってしまった。それに拍車をかけたのが金融機関の倒産による金融不安です。だから、金融不安を取り除いたら回復するかといえば、そんなことはない。金融不安とは関係なく、自律的な景気後退局面に入ってるからです。

  ―― なるほど。

鈴木 政府がものすごい言い訳をするんです。最初は「買い急ぎの反動が思ったより大きかった」、これが一つ。二番目は「夏になったらアジア通貨危機という予想外のことが起きた」。三番目は十一月の拓銀や山一の倒産という、これまた「思いがけないことが起きた」と(笑い)。

  ―― (笑い)そうですね。

鈴木 私に言わせれば、三つとも全然違う。買い急ぎの反動が予想外に大きかったのではなくて、九兆円の負担増加と公共投資の削減の結果、当然、十分に予測できたように、景気後退してるんだ、と。それからアジアの通貨危機は予想外といいますが、予想できなかったのは橋本内閣の無能を告白してるようなものです。これは日本の今の不況が大きな背景になってる。なぜなら、日本は不況の中で円安でしょう。だからアジアは競争力を失って赤字が拡大し、それが引き金となって通貨の暴落が起きているわけです。アジアが立ち直るためには輸出を伸ばさなければいけないですが、日本は不況で、アジアから輸入できない。ですから、日本が不況でなければ、アジアの通貨危機はこんなにも大きくならなかったでしょう。

  ―― なるほどねえ。

鈴木 政府が、予想外のものが天から降ってきたような言い訳をするのは事実に反するわけです。さらに金融不安に至っては、私が国会でもう一年以上も前に口にしていたとおり、景気後退が起きれば、まだ不良債権の処理が進んでいないから必ず金融不安が起きると警告していたんです。それが現実になったのであって、原因は景気後退、その反映が金融不安なんです。ですから、金融不安を解消すれば景気後退が止まるかといったら、そんなことはない。景気後退は、繰り返しますが、デフレ予算を引き金として始まっているわけです。

  ―― そうはいいながら、せっかく三十兆円の公的資金を投入するわけですから、効果を上げなければしようがないですね。

鈴木 そう。まず十七兆円はどうか。いま預金保健機構に預貯金の保険料として集めてきたお金を積んでいるわけですが、そのお金が足りなくなった時に十七兆円を使うというものですね。これを使わないと、拓銀の処理なんかできっこない。しかし、これ、後ろ向きの対策じゃないですか。そうでしょう。金融機関の倒産を止めるのではなくて、金融機関が倒産した時に処理するためのお金ですから。

  ―― うん、本当にそうですね。

鈴木 だから、こんなものは後ろ向きのお金であって、これで金融不安を解決するという話にはならない。

貸 し 渋 り が 今 後 も な く な ら な い 理 由

  ―― では、もう一つの十三兆円はどうですか。

鈴木 これは自己資本比率の低い銀行に資本注入するというお金ですが、私は、健全な銀行は市場で資本調達できるし、もう八%、あるいは四%、十分クリアしてます。だから、当初は「いらない」と言ってた。

  ―― そうですね。

鈴木 すると「いります」という銀行は不健全な銀行だということになるから、みんな怖くて手を挙げられなくなる。だから健全な銀行もみんな無理やり手を挙げさせたわけですよ(笑い)。

  ―― そのようですね(笑い)。

鈴木 だから大銀行はみんな受け入れることになった。地方銀行も上位行だけは手を挙げさせられた。だけど中位行、下位行の健全な地方銀行は「俺はいやだ」と、いまだに手を挙げないわけです。このことからもわかるように、「いらない」と言っている銀行に無理やり押し込んでる十三兆円だから、何のプラスにもならない。

  ―― しかし、政府はこの十三兆円の投入によって、銀行の貸し渋りはなくなると言ってますよ。

鈴木 そこがもう一つ、政府の大きな間違いですよ。

  ―― 貸し渋りはなくならない、と?

鈴木 ほとんどの銀行はみんな自己資本比率はクリアしてるんですよ。よっぽど悪い銀行だけが引っかかりそうだ、と。ですから、クリアしてる銀行が貸し渋りしてるというのが真相ですよ。

  ―― ほう、そうなんですか。

鈴木 だから貸し渋りの実体は何かということです。これは四月以降の金融ビッグバンへの対応なんです。つまり海外の金融機関と競争するためのリストラをやっている。その一環として融資構造を変えているというか、融資戦略を変えてるわけです。どのように変えているかといえば、間違いのない企業にはメーンバンクとしての貸し出しをして大事にしていく。しかし、付き合い程度の企業は全部切る。

  ―― つまり顧客選別をやってる、と?

鈴木 そう、顧客選別をやってるわけです。儲かる顧客にしか貸さない、お付き合いは一切切る、と。だから、例えばA銀行がある企業のメーンバンクであれば、その企業を救わなければいけない。しかし、その企業がB銀行とも付き合っているとすれば、B銀行はその企業との付き合いを切ってる。A、Bがお互いに切り合ってる。それが今の貸し渋り、あるいは貸し出し回収の真相ですね。だから公的資金を注入したって直りません。そういうわけで、せっかく三十兆円用意しても、十三兆円は役に立たない。

  ―― もう一つ金融機関には、不良債権問題が大きくのしかかってますね。

鈴木 政府も不良債権問題に取り組んでいるようですが、しかし、不良債権の開示も不十分で、どのくらいあるのかわからない。それに不良債権を早期に処理する対策を一切打っていない。そんな中で、早期是正措置というのを先に始めたのがそもそもの間違い。

  ―― というと?

鈴木 アメリカを例にとると、八八年から九〇年にかけて、不良債権の早期処理をちゃんと進めて、その目鼻が立ったところで、九一年暮れに早期是正措置を打ち出したわけです。是正できない銀行は整理した。

  ―― つまり不良債権の早期処理を最初にやった、と。

鈴木 そう。その結果として、自己資本比率がどのくらいになったかをみて、早期是正措置をやって成功した。それが正しい順番ですよ。それを日本は不良債権を処理しないままに早期是正措置を持ち込んだものだから、大混乱が起きてますね。

  ―― そうです、そうです。

鈴木 正しいやり方はやっぱり不良債権の情報開示を徹底的にやること。

  ―― そこがむずかしいんですよ(笑い)。

鈴木 私の案は、貸し出しを全部分類させて、公表させる。分類して、その不良債権部分については引当金を積んで一挙償却をさせる。その引当金はどこからくるかといえば、もちろん儲けからくるわけです。儲けなければ一挙償却はできませんから、銀行がもっている不動産の再評価をやるんです。銀行は目抜きの大通りなどにたくさん土地を持ってるでしょう。この土地はだいたい昭和二十年代、三十年代に買ったものですから、もう再評価したら大変な額になる。

  ―― 一等地ですからね。

鈴木 しかし再評価しないんです。なぜかというと、税金がかかるから。この再評価した額で不良債権を一挙償却していい、税金はかけない、こういう法案を作って、みんな資産内容を開示して悪い物は一挙償却すればいいのです。これが先ですよ。この方式で二、三年で償却する。その上で、自己資本はどうなのかと聞く。自己資本がマイナスになった銀行は債務超過ですから整理する。

  ―― まさに経営責任が問われますね。

鈴木 それから自己資本比率は四%以下の銀行は、業務改善命令を出す。それができなければこれも整理する。そして不良資産を償却してなお四%、八%をクリアしてる銀行は海外等で競争して伸びなさい、と。この順番でいくべきなんです。これが私の案。

  ―― 当り前のことなんでしょうけどねえ。

鈴木 当り前ですよ。だけど、政府自民党は順序間違えた。いまさらそれ元へ戻せないから、なかなか私の正論は通らない。

―― とにかく、不良債権が大きなネックになってるわけですよね。

鈴木 そうです。早期に処理しなくては日本経済は持続的な、健全な発展はできません。

橋 本 内 閣 の 六 つ の 改 革 は 失 敗 す る

―― ところで、昨年の不況期に橋本首相は六つの改革を唱えましたよね。どう思いますか。

鈴木 行政改革も財政改革も中期的に見れば、日本経済を活性化すると思います。短期的に見れば、マイナスがあるわけです。改革とは根元から構造を変えるということです。構造を変えれば、今まで存在していた部門が衰退していき、逆に発展していく部門もあるわけです。だから必ず最初は衰退する部門が出ますから、景気に対してマイナスになるんですね。早い話が、行政改革というのは、行政の無駄を排除するわけでしょう、そしたら人員、経理、組織の無駄を排除するんだから、ここだけ見たらデフレ的ですよ。だけど、排除することによって、政府が簡素で効率的になる。その分、無駄が排除されて浮いた部分だけ民間が活力を出せるということになるわけですよ。だから規制緩和だってそうでしょう。規制緩和で新しいビジネスチャンスが生まれる、それで伸びてくる部門、会社、人物はいるけど、規制に守られてたものは伸びてくるものにやられて衰退してしまうのだから。だから、必ず構造改革というのは苦痛をともなっていく。ましてや財政の赤字削減というのは、短期的にデフレ効果があるのは決まってます。でも長い目で見て、日本経済が元気が出てきたときは資源が財政に取られないで民間に回るからいいという話。全部、改革というのは短期的には苦痛をともなうが、中期的に日本経済を、あるいは日本を再活性化するということですよね。

―― では、どうしたらいいんですか。

鈴木 短期的な苦痛を吸収する経済の発展を用意してからやれということですよ。

―― 先生のいう「マクロ経済」ということですね。

鈴木 そう、そう、マクロ経済を安定成長で乗せてからやれということですよ。サッチャーは典型的にそれをやった。サッチャーは七九年に首相に就いて、イギリス経済は七九、八〇年とマイナス成長ですよ。それからゼロ%になり、一%になり、だんだんスピードが出てきて、とうとう四%台成長になった。この段階の八六年で、ビッグバンをやった。そうじゃないとうまくいかない。だから、私は橋本内閣の六つの改革は必ず失敗するという論文を一昨年の暮れに書いてるんですよ(本誌注・東洋経済「論争」)。

―― なるほど。

鈴木 必ず失敗する。理由は二つある。一つは改革には苦痛をともなう。その苦痛を吸収するマクロ経済の発展がなければ挫折する。だけどそれがない、だから失敗する。もう一つは、改革はバラバラで全然相互に補給し合う関係にないから、これ失敗する。だから財政構造改革、いまや失敗は明らかじゃないですか。これはもう財政改革法一時ストップとか、廃止とかいわれ、政策転換できないでしょう、これ失敗でしょう。行政改革はどうかというと、中央省庁の看板の書き替え、これだって本当にできるかどうかわかりませんよ。最後の抵抗を試みてるから、族議員が。

―― 金融ビッグバンはどうですか。

鈴木 ビッグバンは進んでくると思いますが、私は自著の『ビッグバンのジレンマ』で書いたように、ビッグバンにはジレンマがある。中期的には結構な改革だけど、これは苦痛をともなうよ、と。今みたいに不良債権処理も終わってないで、苦痛を伴う金融ビッグバンを強行したら、金融機関はガタガタ不安が起きる、とこう指摘しているんです。

―― うーん、何とかしなくてはなりませんね。

鈴木 さっき私がいった対策をすればいいんです。早期処理を先にやればいい。そのためには、再評価を無税で認めて一挙償却する。それを急がなければ敵は目の前まで攻めてきてる、外国の金融機関は。

―― 橋本首相は手をこまねいているようにしか見えないんですけど。

鈴木 そうです。無策ですよ。橋本内閣は無策。わからないんですよ。無策であり、受け身で、場当たりの、その場限りの手を打つから、ずっと一貫して見ると支離滅裂になってしまうんですよ。早く橋本内閣を倒して、次にだれが出てくるか、出てきた人のお手並みを拝見して、その人が駄目ならまた倒して、ということをやっていかなくては駄目でしょう。少し頭のいい人物が出てくれば、今私がいってるような政策はとれるはずですよ。

―― 一昨年の衆院選挙のときに新進党の国民との「契約」がありましたね、大盤振るまいといわれましたが(笑い)。

鈴木 みんな十八兆円の減税をバカにしたでしょう。大盤振るまい、と。今国民は思い知ったと思いますよ。あの時十八兆円の減税をやっていれば、いま三十兆円の血税を投入しないですんだんですよ。十八兆円の減税をあざわらった自民党がいま三十兆円の血税を投入しようとしていますからね。

―― 結果として本当にそうですね。

鈴木 あの時、十八兆円の減税をやっておけば、現在の日本経済はもう四%台成長だったでしょうね。そうしたら、こんな高水準の企業倒産はないし、こんな高水準の失業もない。お気の毒な首吊り自殺の経営者も出なかったし、そして金融不安も出なかったでしょう。だからあの十八兆円を嘲笑ったことが今の企業倒産、失業、お気の毒な自殺を引き起こしているわけですよ。これは国民の皆さん、思い起こしてくれなきゃ困る。十八兆円を嘲笑った自民党と社民、さきがけのほかに、民主党がいる。こういう厳しい経済危機をつくった政策不況の責任は与党三党プラス民主党だということを国民は忘れてはいけませんね。


(すずき よしお・自由党衆議院議員、前野村総合研究所理事長、元日銀理事)