日本経済の現状と展望―戦後65年間の歩みを踏まえて(H23.7.8)
1.戦後復興期(1945〜54年)
○ 財閥解体、農地改革、傾斜生産方式
○ 朝鮮動乱(1950〜51年)のビッグ・プッシュ(輸出→投資→消費)で戦前水準を回復
2.高度成長期(1955〜73年)
○ 1ドル=360円の固定為替相場の下で輸出・投資主導型成長、先進国の仲間入り
○ ニクソン・ショック(1971年1ドル=308円へ)、変動為替相場制移行(1973年2月)、第1次石油ショック(1973年秋以降)で高度成長終焉
3.先進国中最高の経済パフォーマンス(1970年代後半〜80年代)
○ 第1次(1973年)、第2次(79年)石油ショックを克服し米、西独と並ぶ「強い国」日本
○ 先進国中最高の経済成長率【図表1】、最低のインフレ率、西独マルクと並ぶ「強い円」
○ 1人当たり名目GDPは世界3位(1988、89年)【図表2】
○ 対米政策協調下(1985/9プラザ合意、1987/2ルーブル合意、同年秋ブラックマンデー)、地価・株価のバブル発生(1987年秋〜1989年)
4.「失われた10年」(1990〜2001年)
○ 金融引き締めによるバブルの崩壊、銀行=企業間に巨額の不良債権=不良債務が発生
○ 1997年度の大失政(財政再建を急いだ超緊縮予算の執行、拓銀・山一・長銀など大金融機関の倒産を伴う金融危機)で97年度はゼロ成長、98年度はマイナス成長
○ 98年度以降企業は低成長に適用するため雇用・設備・債務の「三つの過剰」解消を経営の戦略目標とし、勤労者所得は低下【図表3】、成長率は先進国中最低、経済はデフレ(物価の持続的下落)
5.戦後最長景気(2002〜07年)
○ 財政緊縮・金融超緩和のポリシー・ミックス→内需停滞に伴う輸出圧力と円安で輸出主導型成長【図表4】
○ 規制緩和で非正規労働者が増加→企業収益率は80年代後半のバブル期のピークを上回る。勤労者所得は90年代末の水準以下→好収益下のデフレ【図表3】
○ 2007年夏に米国の住宅価格バブル崩壊→世界金融危機(ピークは2008年秋のリーマン・ショック)・世界同時不況
6.世界同時不況後(2008年〜)
○ 過度に輸出に依存した戦後最長景気の破綻で08年度(−4.1%)、09年度(−2.4%)は2年連続マイナス成長、09年秋政権交代
○ 米(家計と金融機関の不良資産)【図表5】と欧(国家と金融機関の不良資産)【図表6】はバランスシート調整が続き低成長【図表7】
○ 10年度にようやく回復した日本に「東日本大震災」(11/3)の衝撃
7.日本経済の展望
○ 短期:3月、4月に急落した生産は、工場とサプライチェーン(原料・部品の供給ネットワーク)の復旧で急回復の予測【図表8】
○ 中・長期の課題
@東日本復興の青写真・財政的裏付け・復興主導体制
A電力供給体制の再構築(安全停止中の原発をどうする?)
B社会保障と税制の一体改革
C日本の新成長戦略の確立【図表9】【図表10】