民主党政権の成長戦略と日本経済の展望(H22.9.24)

―糖業協会講演における「レジュメと図表」

1.当面の円高・株安をどう見るか
(1)円高はドル安・ユーロ安の反映(図表1)、背後に自国通貨安で輸出伸長を図る米欧の戦略(図表2)





(2)実質実効レートでみれば、今の円水準は過去15年間の平均並み(図表3)



(3)日本の株安は、企業業績に比し下げ過ぎ(図表4)。米欧の株安に伴うツレ安の面が大。逆資産効果には警戒の要(図表5)





2.目先7〜9月期まで日本経済は順調に回復
(1)鉱工業生産・出荷は09/3〜10/1に急回復、10/2以降も緩やかに回復を持続(図表6)



(2)実質GDPは09/4〜6からプラス成長、最大の原因は純輸出の急回復(図表7)


(3)輸出はアジア向けを中心に09/3〜10/1に急回復、その後徐々に増勢鈍化(図表8)



(4)個人消費はエコポイント制、エコカー補助金・減税に伴う耐久消費財需要の増加で09/4〜6から回復(図表9)



(5)設備投資は設備過剰感の後退から緩やかに回復(図表10)



(6)目先7〜9月期も、猛暑効果とエコカー減税打ち切り前の駆け込みで個人消費が伸び、輸出と設備投資の回復も続くので、4〜6月期を上回るプラス成長か(図表11)



3.10〜12月期以降の足踏みを警戒
(1)10〜12月期以降は個人消費が7〜9月期までの政策効果の反動で停滞の恐れ、円高・株安の悪影響も心配
(2)政府・日銀は追加経済・金融政策で下支えの構え(図表12)



4.政府の新成長戦略
(1)今後の産業構造は製造業の比重が先進国で低下、新興国・途上国で上昇、先進国は新成長戦略産業(情報通信、電力・新エネルギー、環境、医療、教育、介護、育児・保育など)を発展させる要
(2)民主党政権と日銀の成長戦略産業育成策(図表13)



(3)来年度予算は本年度当初予算並みの支出規模92兆円、国債発行44兆円では本年度の実勢に比し緊縮的(図表14)。代表選後の菅首相が本年度補正予算の是非を含めどう判断するか。



5.日本の経済針路
(1)円高は海外の優良企業・資源の買収、海外への工場・事業所移転に有利、製造業の空洞化を新成長戦略産業の発展で埋める要(図表13)

(2)貿易収支の黒字縮小を所得収支の黒字拡大で埋め、経常収支の黒字を維持(図表15)



(3)国内総生産(GDP)+交易利得=国内総所得(GDI)
  国内総所得(GDI)+海外からの所得純受取=国民総所得(GNI)

【参考文献】
鈴木 淑夫(著)『日本の経済針路―新政権は何をなすべきか』(岩波書店、2009年7月)