日本経済の近未来像(H21.9.10)

―食品マーケティング研究会‘09第5回例会の「レジュメと図表」



1.米国発の金融危機と世界同時不況の衝撃―日本経済の現状
(1)戦後最長景気(02/2〜07/10)は終わり、08/U〜09/Tは戦後最長最深のマイナス成長、09/Uは落ち込んだ外需のリバウンドでプラス成長へ



(2)鉱工業生産・出荷は08/10〜09/2の5か月間に33%の急落した後、09/9までにその5割強を戻す予想



(3)賃金と雇用は依然として悪化、完全失業率は08/3の3.8%から09/7現在5.7%へ上昇



(4)日本の輸出は対米国、対EUを中心に09/2に前年比−49%とほぼ半減のあと底打ち、対アジア(とくに中国、インド)を中心に09/7現在同−36%まで回復



(5)実質貿易収支(純輸出=外需)の悪化は09/1に底を打ち、輸入を上回る輸出の回復で徐々に好転、09/4〜6プラス成長の主因に




2.米国の長期繁栄は何故崩壊したのか
(1)米国の長期連続プラス成長(92〜08年)は住宅価格バブルに下支えられていた


  
(2)住宅価格の3倍への上昇と06/7以降の反転下落(バブル崩壊)

(3)住宅価格の下落、金融危機、景気後退の悪循環と日本への衝撃



(4)さまざまの金融機関と家計の間の不良債権・不良債務の処理は長引くので、米国の経済停滞も長引く



3.日本にあって米欧にはない三つの好条件
(1)
国内に固有の不況要因は無く、もっぱら海外からの衝撃による不況なので、政策が適切ならば内需主導の回復は可能



(2)日本の輸出は対米国・対EUが28%、対アジア53%、これに対中東と対中南米を加えると63%なので、アジアを中心とした新興国・途上国を支援し、彼等と共に立直る道がある



(3)国際商品市況の下落と円高で日本の交易条件が好転し、実質総所得(GDIやGNI)は実質国内総生産(GDP)よりも増加



(4)米欧は本年(09年)マイナス成長のあと来年(10年)もゼロないしマイナス成長、アジアを中心とする新興国・途上国は本年成長鈍化のあと来年は成長率回復、日本は政策の「舵取り」次第でアジアと共に回復する道も拓ける



4.民主党政権下の日本経済はどうなる
(1)民主党は44兆円の国債発行を含む09年度補正後予算(自公政権作成)を前提に、平成22〜25年度に16.8兆円の予算組み替えを行い、家計と地方経済の直接支援で内需から経済を立て直す計画




(2)持続的成長には@国民のライフステージ毎の機会均等と安全ネットの確立、A低炭素社会の実現計画、Bアジアを中心とする新興国・途上国への直接投資と環境エネルギー支援の促進計画、の三つが必要



【参考文献】
福岡 正夫(編)鈴木 淑夫(編著)『危機の日本経済』(NTT出版、2009年5月)
鈴木 淑夫(著)『日本の経済針路―新政権は何をなすべきか』(岩波書店、2009年7月)