日本経済、どうなるこの1年(H21.5.27)

―神田優申会第36回定時総会記念講演


 5月27日(水)午後5時から、「日本経済、どうなるこの1年」というテーマで、神田優申会の第36回記念講演を行った。
 以下は、その時に聴衆に配布した資料である。


1.米国発の金融危機と世界同時不況の衝撃―日本経済の現状
(1)戦後最長景気(02/2〜07/10)は終わり、08/U四半期以降、戦後最長最深のマイナス成長へ



(2)鉱工業生産・出荷は08/10〜09/2の5か月間に33%の急落



(3)賃金と雇用は減少、完全失業率は08/3の3.8%から09/3現在4.8%へ上昇中



(4)日本の輸出は対米国、対EUを中心に前年比−49%とほぼ半減のあと底打ち




2.米国の長期繁栄は何故崩壊したのか
(1)米国の長期連続プラス成長(92〜08年)は住宅価格バブルに下支えられていた


  
(2)住宅価格の3倍への上昇と07/7以降の反転下落(バブル崩壊)

(3)住宅価格の下落、金融危機、景気後退の悪循環と日本への衝撃



(4)さまざまの金融機関と家計の間の不良債権・不良債務の処理は長引くので、米国の経済停滞も長引く



3.日本にあって米欧にはない三つの好条件
(1)
国内に固有の不況要因は無く、もっぱら海外からの衝撃による不況なので、政策が適切ならば内需主導の回復は可能



(2)日本の輸出は対米国・対EUが28%、対アジア53%、これに対中東と対中南米を加えると63%なので、アジアを支援し、アジアと共に立直る道がある



(3)国際商品市況の下落と円高で日本の交易条件が好転し、実質総所得(GDIやGNI)は実質国内総生産(GDP)よりも増加



4.展望
米欧は本年(09年)マイナス成長のあと来年(10年)もゼロないしマイナス成長、アジアを中心とする新興国・途上国は本年成長鈍化のあと来年は成長率回復、日本は政策の「舵取り」次第でアジアと共に回復する道も拓ける



【参考文献】
福岡 正夫(編)鈴木 淑夫(編著)『危機の日本経済』(NTT出版、2009年5月)
鈴木 淑夫(著)『日本の経済針路―新政権は何をなすべきか』(岩波書店、2009年7月)