日本経済の現状と展望 (H18.11.14

民主党月例経済研究会のレジュメと図表

   
11月14日(火)午前8時から行われた民主党月例経済研究会において、民主党国会議員と秘書、党政策調査会事務局職員を対象に、以下のような講演(40分)と質疑応答(20分)を行った。

1.小泉内閣5年間の経済推移と今回景気回復の特色(図表1)

(1)04年迄はバブル後遺症(雇用、設備、債務の過剰)の克服過程=輸出リード型の回復、05年以降は内需、特に設備投資の回復が加わる=輸出・投資リード型の回復(図表1−1)
(2)企業と家計、輸出関連大企業と内需関連中小企業、中央と地方、正社員と非正社員、勝ち組と負け組の格差拡大(図表1−2)




2.格差拡大の実態

(1)企業収益はバブル期を上回る最高。雇用者所得は低下を続けた後05年から回復し始めたが、まだピーク(97年)比△6.1%の低水準(図表2)



(2)賃金は低下を続けた後05年から上がり始めたが、まだピーク(97年)比△7.8%の低水準(図表3)



(3)大企業の売上高経常利益率はバブル期を上回ったが、中小企業はまだ(図表4)



(4)企業は過剰債務を克服したが、政府の債務残高対GDP比率は大幅に上昇(図表5)




3.展望:先行きの不安定要因

(1)個人消費の回復は捗捗しくない
   イ、雇用、賃金の回復が緩やか=ビジネス・モデルの転換(請負、派遣、契約、パートなど雇用形態の変化と賃金抑制)があるので、収益回復が雇用・賃金の回復に結びつかない
   ロ、財政赤字対策で国民負担が増加(図表6)








   
ハ、生活実感の悪化による消費抑制(図表7)



   ニ、預金金利より住宅ローン金利が足早に上昇(図表8)



(2)設備投資の先行きに不安
   イ、機械受注に頭打ちの兆し(図表9)



   ロ、米国経済の減速(年率成長率、05年3.2%、06/T5.6%、U2.6%、V1.6%)で輸出の先行きに不安

(3)今後5年間に16兆円の財政赤字削減(06年「骨太方針」)
   イ、政府から民間へビジネス機会を移転する形で行政改革が出来るか、出来なければ理念なき財政支出の一律削減と一層の国民負担増加
   ロ、中央から地方へ支出権限を移転して全体として冗費を削減する形で行政改革が出来るか、出来なければ地方自治体にしわ寄せ
 
(4)結論:本年度下期から来年度にかけて、個人消費、設備投資、輸出の鈍化で成長減速の可能性、踊り場ですむか景気後退か