日本経済の見通しについて (H18.5.19)
─ 民主党月例経済研究会(第2回) ─
民主党TC(明日の内閣)の財務/経済財政担当、峰崎直樹参議院議員は、毎月、党内で「月例経済研究会」を開催することとし、第1回会合を去る4月27日に開いた。
今後は、これ迄の「経済フォーラム21」を「民主党月例経済研究会」と合体して継続して行うこととなり、その第2回会合を本日(5月19日<金>)12〜13時に参議院議員会館特別会議室で開き、私が講師として日本経済の見通しについて講演した。
今後の講師とテーマの選定については、「経済フォーラム21」の場合と同じように、私がコーディネイターとして峰崎議員に協力して行くことになった。
以下は、第2回の「民主党月例経済研究会」で私が講演に用いたレジュメと図表である。
<レジュメ>
日本経済の見通しについて
1.今回の景気回復の特色
(1)今回景気回復の三つの局面(図表1)
02/T〜04/T 輸出と輸出関連設備投資が主導
04/U〜W 輸出鈍化で失速
05/T 民間消費と設備投資一般が主導
(2)04年以前と05年以降を分ける「三つの過剰」の有無
イ、設備、雇用、債務の過剰が成長を圧制
@過剰な設備と雇用で効率悪化、潜在成長率低下(供給面)
A過剰な設備と雇用で設備投資と民間消費が停滞(需要面)
B企業収益は過剰設備の除却、不動産の損切り売り、退職の慫慂、債務返済へ(乗数効果が低下し財政政策の有効性低下)
C銀行の収益・資本は不良債権処理へ(金融政策の有効性低下)
ロ、04〜05年に「三つの過剰」は解消
設備、雇用は過剰から不足へ(図表2)
銀行貸出は減少から増加へ(図表3)
ハ、「三つの過剰」解消効果
@潜在成長率上昇、A設備投資の裾野拡大、雇用者報酬の回復(図表4)、B乗数効果向上、C金融政策の有効性回復
2.「三つの過剰」解消の過程で生じた不公平、格差拡大、財政悪化
(1)輸出関連と内需関連、中央と地方、大企業と中小企業の格差
(2)日本を狙ったBIS規制、国際的に活動していない国内の中小企業・銀行へもデフレ下では停止すべき時価会計、減損会計を適用(「年次改革要望書」)
(3)不公平な too big to fail 政策を実行(りそな銀行の救済)
(4)正規雇用の縮小、非正規雇用の拡大
(5)税収と名目GDPの落込みによる政府債務残高対名目GDP比率の上昇(図表5)
3.持続的経済成長の前に立ちはだかる財政再建
(1)政府債務残高対名目GDP比率が、最近10年間の日本のように中期的、趨勢的に上昇(上記の図表5)すると、
イ、予算の中の国債費の割合が限りなく上昇して政策的支出を圧迫する(予算の対GDP比率一定として)か、
ロ、国民負担率の趨勢的引上げが起きる(予算の対GDP比率は上昇)か、
いずれにしても結局行き詰る。
(2)そこで財政再建の中期的目安は、政府債務残高対GDP比率の引下げ。 この場合(ドーマー条件)、
イ、名目成長率>長期国債金利 だとプライマリーバランス(国債費を除く歳出と租税収入のバランス)の均衡で中期的に比率は低下。
ロ、名目成長率<長期国債金利 だとプライマリーバランスを黒字化しないと比率は低下しない。
(3)名目成長率と長期国債金利の関係
イ、OECD加盟国平均
〜1980 2000〜 成長率>金利
1981〜1999 成長率<金利
ロ、日本
高度成長期、1987〜1990、2005 成長率>金利
1991〜2004 成長率<金利
ハ、低インフレ国 成長率>金利
高インフレ国 成長率<金利
ニ、一般的傾向(要約)
民需主導の高成長で低インフレ 成長率>金利
財政主導の低成長で高インフレ 成長率<金利
(4)望ましい財政再建の中期シナリオ
イ、プライマリーバランスの均衡を中期的に達成する。
ロ、高成長・低インフレ経済を中期的に持続する(ドーマー条件の成立を目指す)。
(イ)民間ビジネス・チャンスと地方の効率的投資機会を増やす規制改革・官業廃止と地方主権化によって、中央政府の歳出削減と民間・地方の活性化(高成長)を同時に実現する。
(ロ)国民負担率引上げは上記の歳出削減の効果を見てから。実施の場合は直接税増税・社会保障自己負担引上げよりも、福祉目的消費税引上げを優先。
(ハ)金融政策はCPIのコア・インフレ率を1%前後に安定させることを目標に弾力的に運営。
以 上