「第1回タッソ・アーカイブス/経済セミナー」にて講演 (H16.11.8)
どうなる日本経済
1.勢いよく飛び出したあと失速した今年の日本経済 (1) 今年の経済の特色 イ.輸出と輸出関連設備投資にリードされた回復。国内関連産業、中小企業、地方経済は置き去り。 ロ.リストラで雇用・賃金は回復せず、勤労者の所得は引続き減少。国民は貯蓄率を下げて消費を維持。 ハ.公共投資の削減は大きいが、税収が伸びないため財政赤字は拡大。 ニ.30〜35兆円の「量的緩和政策」は効かず、貸出は減少を続ける。 (2) 成長失速の原因 イ.米国などの成長減速で輸出の伸びが落ち、経常収支の黒字が縮小。 ロ.輸出関連設備投資の伸びもピークを越え、来年に向って減速。 ハ.勤労者所得が増えず、「景気好循環の鎖」が切れたまま。 ニ.国内のビジネス・チャンスを生み出す規制緩和が進まないので、国内需要関連の設備投資が立上がらない。 2. 経済改革は進んだか (1) 民間の自助努力 イ.輸出関連大企業は人、物、金の節約で損益分岐点操業度を下げ、低成長に対する抵抗力が強まった。新しいIT技術革新も生まれた。 ロ.大手銀行の不良債権処理、自己資本充実が進んだ。但し、地域銀行と中小企業の改善は立ち遅れている。 (2) 政府の改革 イ.官主導から民自立へ:部分的地域的実験的な「構造改革特区」でさえ各種「業法」にひっかかって効果挙がらず。 ロ.中央支配から地方主権へ:僅か3兆円の「三位一体改革」の入口で大もめ。 ハ.官業の民営化:道路公団の民営化は形だけで中身変わらず。郵政公社は2017年までにどうするのか霧の中。 ニ.社会保障改革:保険料と自己負担を上げ、給付を下げることの繰り返しで抜本改革なし。所得税定率減税の打ち切りと消費税引き上げというビジョンなき増税路線へ。 (3) 結論 輸出が引き金となって民間企業の自助努力が実り、景気は一時的に回復したが、政府の改革が進んでいないので、国内経済の回復に点火せず、輸出鈍化と共に景気もしぼみ、持続的成長につながらない。 3. どうすれば地方経済が潤い日本経済全体が持続的成長軌道に乗るのか (1) 育児・教育・医療・福祉・その他対個人サービス、および農業に対する参入規制の撤廃でビジネス・チャンスの拡大を! ── 例えば「規制改革民間開放推進会議」(宮内義彦議長)の提案全部を実現せよ。 (2) 社会保障の抜本改革で国民の将来不安払拭を! ── 基礎年金、高齢者医療、介護は税方式で、所得比例年金、一般医療は保険方式で。 (3) 権限と財源の同時移行で地域の活性化を! ── 20兆円の事業補助金を全額地方に渡し、各地のニーズに則した効率的投資を促進。 (4) 金融庁の過剰介入中止で、地域銀行の自己責任による貸出の能力と意欲を高めよ! ── 自己資本比率、不良債権比率、収益比率は金融庁が要求するのではなく、経営が自己責任で選択し、顧客と市場がその是非を判定するのが市場経済の在り方。 |