この回復は持続的成長につながるか (H16.7.29)


─現代の政治・経済を考える「樫の会」における講演(H16.7.28)の要旨─

1.今回の回復に見る5つの特色
─3つの回復局面の比較─
@輸出リード型の特色が突出。
A前回と同程度に投資リード型。
B前回と同じように消費リードの程度は低いが、今回は雇用者報酬が減少している下で、貯蓄率を引下げて消費を増やしていることが特色。
C財政政策は、支出を減らしている反面、税収の減少を公債発行増加で賄うビルトイン・スタビライザー効果が5兆円を超えていることが、今回の著しい特色。
D前回のゼロ金利政策(99/2〜00/8)とは異なり、今回は量的緩和政策(01/3以降)に支えられていることが特色。

三つのプラス成長局面の比較

2.持続性の吟味
(1)輸出と輸出関連設備投資だけでは持続的成長は成立しない ─ @とA
      米国と中国の成長鈍化、中国発の原料高・製品安、設備投資の一巡。
(2)財政政策と金融政策はリード役にはならない ─ CとD
      財政:税の自然増収でビルトイン・スタビライザー効果が消える。
      金融:超金融緩和からの出口で長期金利が上昇し、多額の国債評価損が発生する。
(3)回復の持続性は雇用者報酬が増加に転じるか否かに懸かる ─ B
      イ.非正社員と時間外労働への依存に限界は来るか。
      ロ.増益率は04年度から鈍化するがボーナスと配当への影響は。
      ハ.国民負担が04年度に1.3兆円、05年度に2.2兆円増加するが、その消費への影響は。

3.結論
   来年度は成長減速。マイナス成長にはならないとしても、回復は一服。持続的成長軌道には乗らずじまい。