日本経済復活の条件 (名古屋青年会議所4月例会-基調講演<要旨> H16.4.23)
1.このままでは持続的成長軌道には乗らない
(1)「失われた10年」にも2回の景気回復、今回の違いは?
前々回(95/T〜97/T)、前回(99/W〜01/T)に較べて、今回(02/U〜03/W)の回復は、特に勢いが強い訳ではない。今回は輸出リード型の反面、公共投資はマイナスという特色がある。
(2)今回も財政・金融政策は消極的に景気を支えている
公共投資はマイナスでも、国債発行9兆円増加のビルトイン・スタビライザー効果がある。ゼロ金利は自己資金の機会費用を低め、公的資金投入による金融危機回避は逆資産効果を防いだ。
(3)輸出リード型では回復は長続きしない
中国のブームとIT産業復活は続いても、米国の成長減速、素原材料輸入の増加、円高のリスクなどで、「純輸出」の成長寄与は低下する。
(4)大企業、製造業、大都市圏対中小企業、非製造業、地方経済の二極化
1割の輸出企業が好調でも、人件費総額の抑制は続くので、9割の内需企業は停滞を脱せず、2極分化が続く。
2.国内のビジネス・チャンス拡大が鍵
(1)小泉改革はピントがずれている
財政赤字削減と不良債権処理を最優先する小泉改革は、内需不振と「貸し渋り」「貸し剥し」を招き、失業増加と株価下落を招いた。
(2)仕組みを変えなければ国内経済は立上がれない
官主導、中央支配、閉ざされた仲良しクラブ、という日本の「追い付き型」システムを変えないと、国内経済は活性化しない。
(3)国内にビジネス・チャンスを増やす改革
規制撤廃と地方分権で、民自立、地方主権、開かれたグローバル・クラブに日本のシステムを変え、国内のビジネス・チャンスを増やすことが一番重要な対策だ。
(4)民自立、地方主権、小さな効率的政府
システム転換で国内民需主導の持続的成長軌道に乗れば、結果として財政赤字と不良債権は減り、改革は加速する。
3.構造改革に見る「バカの壁」
(1)市場型から介入型へ逆戻りする金融行政
不良債権早期処理、自己資本比率維持、収益改善の三つを同時に要求する金融行政は、市場経済への過剰介入だ。「貸し渋り」「貸し剥し」を招き、景気にマイナス。
(2)「改革なくして成長なし」?!
どういう改革が成長促進的かを考えないのは「バカの壁」。壊す改革ばかりではなく、創る改革を!
(3)民営化は常に正しい訳ではない
郵貯・簡保の民営化は正しいが、郵便と高速道路建設は国が行うべき公共財の供給だ。
(4)規制撤廃は脱官僚政治の試金石
監督官庁の業法を廃止して、市場法に置き換えるのが規制撤廃。補助事業の制度を廃止しない三位一体改革は「バカの壁」だ。
(5)社会「保険」方式に固執するな
少子高齢化の下では、年金、高齢者医療、介護の社会「保険」制度は破綻する。「税」方式へ移行せよ。
4.デフレの歴史を学ばない者はデフレを繰り返す
(1)「産業化」が希望に輝いた時代
欧米の「産業化」のレベルに追い付く明治維新以来の努力は、1970年代に実を結び、先進国になった。
(2)「心の豊かさ」を求める21世紀型「脱」産業化社会
「産業化」がもたらした「物の豊かさ」を前提に、「心の豊かさ」を求めるのが21世紀の社会だ。
(3)過去のデフレの歴史に学ぶ
第1次産業化が生み出した19世紀型社会も、第2次産業化が生み出した20世紀型社会も、転換期には経済の停滞、社会の混乱、世界の覇権を巡る争いが起きた。繁栄期への移行は、新しいニーズに応えるシステム転換で実現した。
以上