成長上振れとデフレ終焉の兆し (『金融財政ビジネス』2010.6.3号)

  悲観論の好きな日本のマスコミはあまり報道していないが、5月20日に発表された10年1〜3月期のGDP統計は、今後を展望する上で勇気付けられる多くの情報を含んでいる。
  第一に、09年度の成長率は−1・9%と本年1月時点の政府見通し(−2・6%)と4月時点の日銀政策委員見通し(中央値−2・2%)に比して、大きく上振れした。
  また10暦年と10年度の実質GDPは、前年比+2・6%と+1・5%のゲタを履いたので、平均成長率は暦年が3%台、年度が2%台となることはほぼ確実だ。4月現在のIMF暦年見通し(+1・9%)、1月現在の政府年度見通し(+1・4%)、4月時点の日銀政策委員年度見通し(中央値+1・8%)を大幅に上回るであろう。
  日本経済は当局の見通しよりも、かなり高めの成長経路を歩んでおり、需給ギャップもそれだけ縮小している。景気を下支えるための本年度補正予算は不必要であり、予備の予算2兆円は来年度の財源に使える。EU危機でEU向け輸出に支障が出ても、日本の輸出の1割に過ぎないので影響は限定的であろう。
  第二に、08年10〜12月期から5四半期続けて下落してきた国内需要デフレーター(季調済み)は、6四半期振りに前期比+0・4%の上昇に転じた。消費デフレーターはまだ前期比−0・3%下落しているものの、各種の投資デフレーターが同+0・3〜+0・7%の上昇に転じたためである。GDPデフレーターは、GDPのマイナス項目である輸入のデフレーターが+3・9%と大きく上昇したため、国内需要デフレーターの+0・4%が相殺され、前期比+0・0%の横這いとなった。
  名目成長率は実質成長率と同じ前期比+1・2%(年率+4・9%)の高成長となり、10年度の名目成長率は+1・0%のゲタを履いたので、政府見通し(+0・4%)を大幅に上回り、自然増収が増えるだろう。
  成長経路の上振れに伴う需給ギャップの縮小を考えると、本年1〜3月期の国内需要デフレーターの上昇は、デフレ終焉の兆しかも知れない。国際商品市況の高騰や円安によって交易条件が悪化を続けると、07〜08年度のように国内需要デフレーターが上昇しても輸入デフレーターの一層の上昇によって相殺され、GDPデフレーターが下落を続けてデフレ持続と見誤ることになる。
  本年は同じ誤りを繰り返さないよう、デフレの判断は、GDPデフレーターではなく、国内需要デフレーターや総需要デフレーターによって判定する方がよい。
  第三に、08年4〜6月期から7四半期続けて下ってきた名目雇用者報酬(季調済み)は、本年1〜3月期に8四半期振りに前期比+1・6%の上昇に転じ、実質ベースでは3四半期連続して上昇した。需給ギャップの縮小を背景に、1〜3月期の現金給与総額と雇用者数が季調済み前期比で増加に転じたためである。国内需要デフレーターの上昇にも、この雇用者報酬の基調変化が反映しているとすれば、デフレ終焉は予想外に早く訪れるかもしれない。
  第四に、08年1〜3月期から8四半期続いた海外からの受取所得の減少が、本年1〜3月期に前期比+9・8%の増加に転じ、実質国民総所得GNIの増加に対する寄与度が+0・3%となった。金融危機に伴う世界同時不況によって、海外投資の収益も減少を続けてきたが、本年1〜3月期から持ち直しが始まったのかもしれない。
  グローバル経済の下では、実質国内総生産GDPだけに注目するのではなく、これに交易利得と海外からの所得純受取を加えた実質国民総所得GNIに注目し、日本の内需とアジアの内需を合わせた市場で、日本の実質GNIを極大化することを経済の戦略目標に据えるべきだ。