日本経済の国際的沈下 (『金融財政』2008.1.31号)
旧臘26日、平成18年度国民経済計算の確報が発表された。平成18年の日本の名目GDPが世界の名目GDPに占める比率は、九・一%に下がり、1人当たり名目GDPは、OECD加盟国30か国中、18位に低下した。
二〇〇〇年の日本のGDPシェアは一五・八%であった。また1人当たり名目GDPは、二〇〇〇年に3位であった。それが、その後6年間に急激に低下したのだ。
このような日本経済の国際的沈下は、この6年間に、@日本の実質経済成長率が先進国の平均を下回り、AGDPデフレーターは下落を続け、B円の名目実効為替相場は円安トレンドを辿ったからである。
6年間の小泉・安倍・福田政権は、財政緊縮・超金融緩和のポリシー・ミックスをとった。財政面では6年間に公共投資を39%削減し、国民負担を増税や社会保険料引き上などで八・二兆円増やした。反面金融面では、ゼロ金利、量的緩和、超低金利が続いている。
公共投資の削減は地方経済を、国民負担の増加は家計を、圧迫して内需を抑えた。超低金利は資金余剰の家計部門の所得を減らし、超低金利に伴う円安は輸出企業に有利、内需企業と家計に不利に働いている。こうして極端に輸出に偏った成長と格差拡大で成長率、GDPデフレーター、円相場の下落が続いている。
政府は今だにデフレだと言っているが、実は一般物価水準の持続的低下である「デフレ」は04年までに終わっている。その後07年始めまで進行していたのは、国内企業物価の上昇(資源・エネルギーなど素材価格の上昇)と消費者物価の下落(デジタル製品やサービス料金の下落)、投資デフレーターの上昇と消費デフレーターの下落、という価格体系の変化である。
総需要デフレーター(企業部門の総産出価格)は05年から上昇している。他方、企業部門の総投入価格(賃金と輸入デフレーター)のうち、輸入デフレーターは上昇しているものの、賃金は下がっているため、差し引き企業部門には総需要デフレーターの上昇による収益増加がもたらされている。どこにもデフレ・スパイラルの心配などない。
価格体系変化の原因は、グローバル化、IT化による価格、料金、賃金、家賃、地代などの国際的平準化がもたらす内外価格差の縮小(日本の国内物価割高の解消)と、新興国の発展に伴う資源・エネルギー価格の国際的上昇である。
日本は経常収支の黒字が累積して超債権国になっており、国内物価の下落で超物価安定国になっている。それなのに名目円相場は実効レートで見て00年度以降下落傾向にある。この基本的な原因は、価格体系の変化をデフレ継続と見誤り、デフレが終わった05年以降もゼロ金利・量的緩和などの超金融緩和政策を続けているためである。
この結果、物価で調整した実質円相場=交易条件は大幅に悪化している。自国製品を安く売り、外国製品を高く買い、それでも儲かる黒字を使って赤字国米国の発展を低金利でファイナンスする「お人好しで滑稽な日本」を演じているのだ。その陰で、国内では内需関連企業、中小企業、家計、地方の回復が置き去りにされ、格差拡大の下、国民生活は向上していない。
また輸出に偏った経済は海外事情に弱く、いまもサブプライム・ローン問題に振り回され、株価が暴落している。
これが円と日本経済が国際的に沈下している中身である。