次の総選挙が天下分け目 (『金融財政』2003.11.27号)
第四十三回衆院選の結果は、投票一週間前の主要各誌の「特別世論調査」の結果通りになった。各誌が一斉に報じた通り、@自民単独過半数維持、A与党三党「絶対安定多数」確保、B民主躍進するも二百に届かず、という結果に終った。
この新聞報道を見て、「選挙は最後の一週間で逆転することがあるのでまだ分からない」「民主党のマニフェストへの喰いつきはものすごい」などと言って、最後まであきらめずに運動していた「政権選択」期待派は、「国民の審判」にいささか拍子抜けの形となった。私もその一人である。
しかも民主党が四十議席増えたと言っても、そのうち与党から奪ったのは十二議席に過ぎず、あとは野党から二十三議席を奪い、ほかに欠員補充の五議席を取ったのである。つまり、「政権交代」の動きは十二議席に過ぎず、あとの二十三議席は「二大政党化」の動きであった。
従って今回の選挙は、「小選挙区比例代表並立制」を導入して三回目の選挙で、初めて政策対決の明確な「二大政党制」、真の議会制民主主義への流れがはっきり始まった、ということに最大の意義があるのではないか。選挙直後の十日と十一日の世論調査によると、朝日も読売も、このような「二大政党化」を評価する国民の声が六八%に達している。流れは決った。
マニフェストによる政策対決の選挙という点では、不慣れなこともあってやや上滑りしていたのではないか。
始めのうちは、新聞やTVなどのマスコミの扱いが浅薄であった。きちんと読んだとは到底思えない一知半解な解説が多く、聞いている国民は対立点がよく分からなかったのではないか。官僚の玉虫色の作文や抽象的な選挙公約に慣れているマスコミには、民主党の明瞭で具体的なマニフェストがあまりに大胆で、その実現可能性が評価できず、戸惑ったようだ。従って、無責任な提言とかポピュリズムなどと言う反対党の超越的な批判を、そのまま報道していた。ここでも国民は、政策対立のポイントを正しく理解はできなかったのではないか。
最後まで、「民主党と自民党の政策はどこが違うのか」「結局誰がやっても同じではないか」などという見当違いの声が残っていたのは、そのせいであろう。
しかし、選挙では政策対決が国民の目にはっきり映らなかったとしても、二大政党化が進んだだけに、これから来年にかけての国会では対決がクローズ・アップされる。それが来年六月の参院選の政策対決につながって行く。
種は沢山ある。道路公団民営化問題では、その是非と並んで藤井総裁発言に端を発する汚職疑惑がある(いわゆる「藤井資料」)。ますます治安の悪化するイラクへの自衛隊派兵の是非、基礎年金の国庫負担を三分の一から二分の一へ引上げる時期と財源、より長期的な年金改革の在り方、補助金の地方移譲の額とやり方、政治献金公開基準は引上げか引下げか、などマニフェストに書いてありながら十分に対決できなかった重要な問題が、次々と国会に出てくる。
国民はもう一回マニフェストを参照しながら国会の議論に注目して欲しい。それを、今度こそ来年の参院選に活かして欲しい。今回の比例選で民主党が自民党を上回ったことから見て、参院選では民主党が勝つかも知れない。そうなれば小泉政権が退陣し、次の総選挙が二大政党下での天下分け目の戦いとなろう。