第156回通常国会活動報告
【小泉首相の暴言に始まり暴言に終った国会】
第156通常国会は、1月20日(月)から150日間の会期を定めて始まったが、与党はイラク支援特措法を成立させるために更に会期を40日間延長し、7月28日(月)に終了した。
この国会は、菅民主党代表がいみじくも述べたように、小泉首相の暴言に始まり、暴言に終ったと言ってよい。会期の冒頭に提出された平成14年度補正予算と、続いて提出された平成15年度当初予算では、不況に伴なう税収の落込みによって、国債発行額は平成14年度では4兆円強の追加(年度間合計で34兆円強)、平成15年度には36兆円強の計画となっており、小泉首相の「国債発行30兆円以下」という公約があっさりと破られていた。しかし小泉首相は予算委員会に於て、「こんな公約が破られても大したことではない」という暴言を吐いて、政治家としてのモラルが疑われた。
また延長国会で非戦闘地域に自衛隊を派遣するというイラク支援特措法が審議されている時に、「どこが戦闘地域でどこが非戦闘地域か私に分かる訳がない」という暴言を吐き、ひんしゅくを買った。軽装備で派遣されることになっている自衛隊員に対し、首相の発言はあまりにも無責任である。
【経済の停滞をよそに国会内の経済政策論争は低調】
この二つの予算案が成立し、執行に移された直後の4、5月には、株価が20年前の水準まで落込んでバブル崩壊後の最安値を更新し、10年物長期国債の市場利回りは実に0.6%と史上例を見ないような低水準となった。イラク戦争に伴なう先行き不透明感があったとは言え、新予算の執行が市場でまったく評価されず、むしろ悲観材料となっていたことを示している。
この時期には、唯一景気を引張っていた輸出が減少し始めたため、日本経済の停滞感は一段と強まっていたが、国会内の経済政策論争は至って低調であった。
【有事関連法、個人情報関連法、イラク支援法の成立】
1年前の第154回通常国会から先送りされ、第155回臨時国会でも手が着かなかった二つの「最重要法案」が、ようやく成立した。一つは有事関連3法である。民主党の修正要求を与党が受け入れ、無いよりはましの有事法制となったので、災害やテロなどへの対処が欠けている等不充分な点はあるものの、自由党も賛成した。
もう一つは個人情報関連5法である。1年前に提出された法案が多少修正されているとは言え、報道の自由への公的介入の危険性などが完全には払拭されていないため、野党4党はこぞって反対したが、与党の多数の力で成立した。
最後に、延長国会に提出されたイラク支援特措法は、日本の安全保障の原則に反して、ただ米国に言われるままに自衛隊をイラクに派遣しようというもので、これも野党4党はこぞって反対したが、成立した。詳しくはこのHPの「最新コメント」欄"イラク支援法は日本の安全保障の原則に反する"(H15.7.8)を参照されたい。
【常任委員長は他の委員会に出られないというルール】
私はこの国会でも懲罰常任委員長であったため、予算委員会など他の委員会に出席することが慣例により許されなかった。低調な経済政策論争を見るにつけても誠に残念であり、支援者の方々には申し訳なく思っている。また国民の皆様に対して、何と言っておわびしてよいのか分からない気持ちである。
しかし、私は制約の中でもベストをつくした積りである。自由党の中の経済関連の部会に出席して積極的に意見を述べた。また予算委員会や財務金融委員会のメンバーには、法案に対する賛否や問題点について、直接私の意見を詳しく伝えた。
【懲罰委員長として院議不服従問題を提起】
更に、懲罰常任委員長としては、「全会一致で成立した「議員辞職勧告決議」を無視する鈴木宗男、坂井隆憲両議員は、「院議不服従」の故をもって懲罰対象にすべきではないか」と言う問題を提起し、綿貫衆院議長に伝えた。またこのHPでもアンケート調査を実施して国民に訴えた。詳しくは、このHPの「最新コメント」欄"議員辞職勧告決議に従わない議員の懲罰"(H15.3.25)、「最新コメント」欄"辞職勧告決議に従わない議員についてのアンケート調査結果"(H15.4.7)などを参照されたい。
このような努力は、朝日新聞のコラムニスト早野透氏によって7月8日付の「ポリティカにっぽん」に採り上げられた(このHPの「論文・講演>新聞」欄"図々しい議員のさばらせるな"参照)。
【与党は国民の声に耳をふさぎ院議不服従問題を無視】
しかし、多数を制する与党側は動かず、綿貫議長からは「議会制度協議会に諮問した」という連絡を受けただけである。結局、問題は先送りされたままで会期を了えた。
このため、懲罰委員長としての正式の活動は、2月18日(火)に委員会の構成(理事交替)を決める会議を開いたことと、6月17日(火)に会期延長を決める常任委員長会議に出席したことの2回にとどまった。この常任委員長会議では自由党を代表して延長に反対した上、もし多数決で延長が決まった場合は、延長される40日間の間に、上述の「院議不服従」問題に決着をつけるべきだと発言した。しかし多数を占める与党によってこれを無視されたことは、上述の通りである。
この決着は、「ポリティカにっぽん」で早野透氏が述べている通り国民の審判を仰ぐ総選挙後に持ち越された。