第150回臨時国会活動報告

第150回臨時国会活動記録表

【参院野党欠席、衆院1週間で成立した非拘束名簿方式導入】
今世紀最後の国会となった第150回臨時国会は、9月21日から12月1日までの72日間の日程を終えた。
この国会は、冒頭に、参議院比例選挙に非拘束名簿方式を導入する公職選挙法改正法案が、それまでの参議院選挙制度協議会の合意を無視して参議院に提出されたため、波乱の幕開けとなった(このホームページの「最新コメント」欄"非拘束名簿方式導入の強行は議会制民主主義の危機だ"(2000.10.13)参照)。
野党は衆参両院の委員会を、災害特別委員会などを例外として、原則欠席し、選挙制度協議会の線に戻して、与野党協議を再開することを主張した。しかし与党は野党の主張を全く無視し、野党欠席のまま国会審議を進め、斉藤参議院議長の斡旋案も拒否して斉藤議長を辞任に追い込み、10月19日の参議院本会議において、井上新議長の下で野党欠席のまま改正法案を可決して衆議院に送ってきた。
衆議院では野党も審議に応じたが、与党は僅か1週間の審議で本会議の採決に持ち込み、10月26日に可決、成立した。
院の構成に係わる選挙制度の改正法案が、与野党協議の結論を無視し、野党欠席のまま、あるいは1週間の衆議院審議のみで採決されたのは、憲政史上、前代未聞の「数の暴力」である。

【総理の失言、閣僚のスキャンダル、KSD疑惑が表面化】
この間に総理の拉致問題発言を始めとする数々の失言問題、中川官房長官のスキャンダル発覚と辞任、KSD問題などの不正疑惑等が次々と表面化し、野党が国会で追及する中で、国民の森内閣支持率は10%台にまで低下した。
その結果、自由民主党の中から、加藤紘一氏の造反が起こり、11月20日(月)の本会議において、野党が提出した森内閣の不信任案に自民党の加藤派と山崎派が賛成し、可決されるのではないかという情勢になった。可決すれば、内閣退陣か総選挙となるので、政局は激動する筈であった。

【森内閣不信任案の否決でまぼろしの政局劇に】
11月20日(月)の夜、日本国民は一様に緊張していた。国会中継のテレビをつけっぱなしにしていた人も多い。日本が動くかもしれないと思ったからだ。
しかし加藤紘一氏は、森内閣の不信任案を採決する本会議(20日午後9時開会)直前の票読みで、自分に従って賛成投票する自民党員の数が足りないと分かると、本会議を欠席することにした。降服の白旗を揚げたのだ。これで不信任の否決がはっきりし、日本中が白けてしまった。
加藤氏は、自民党離党の決意を胸に日本を改革しようとしていたのではなく、森総理後の総理・総裁の座を狙う自民党内の権力争いをしていたのだ。だからこそ数が足りないと分かった瞬間、自民党の執行部に恭順の意を表すため、不信任案賛成ではなく、本会議欠席に転じた。
もし日本の政治改革を目指していたのであれば、数が足りなくても本会議に出席して不信任案に賛成票を投じたであろう。その結果票読み通りに否決となっても、自民党を離党して政界再編の火蓋を切ることが出来た筈だ。ましてや票読みとは異なり、不信任案賛成者が増えて可決されたならば、多くの日本人が期待した通り、日本の政治が大きく動いたに違いない。

【私は自由党を代表して平成12年度補正予算に反対】
加藤茶番劇が21日午前4時までかかった本会議で終ったあとは、重要法案が次々と可決成立した。21日の午後、まず平成12年度補正予算案が可決された。私は予算委員会と本会議において、自由党を代表して反対討論を行った。その内容についてはこのホームページの「最新コメント」欄の"私が補正予算案に反対した理由"(2000.11.22)を参照されたい。
このほか私は、この会期中、大蔵委員会において、@金融機関の破綻処理について相沢金融再生委員長(国務大臣)に、A酒税法の改正について宮沢大蔵大臣に、B平成11年度の剰余金を国債整理基金に繰入れず全額平成12年度補正予算に使うことについて宮沢大蔵大臣に、それぞれ質問した。
とくにBの問題については、私は明確に反対意見を表面し、自由党は委員会と本会議の採決において、この法案に反対した。

【政官業癒着の利益誘導型政治を助長する2法】
72日間の会期中、冒頭の30日余は空転し、最後の20日余も政局がらみの緊張感が走ったが何事もなく、中味の薄い国会の中でいくつかの問題法案が成立した。
まず自民党の政官業癒着の利益誘導型政治を助長する二つの法案が成立した。
一つは前述した非拘束名簿方式の導入である。日本全国を一つの選挙区として候補者名を書かせるこの選挙は、全国的な組織、業界団体、大企業などの利益を代弁する政官業癒着の利益誘導型候補者(その多くは官僚OB)しか立候補できないのではないか。
もう一つは、あっせん利得処罰法をざる法にして成立させたことである。対象から私設秘書をはずしたり、請託の有無や地位利用の有無を要件にしたり、行為を契約の締結と行政処分のあっせん利得に限定し、政策決定過程への関与を除いたり、贈賄を収受、供与に限定し、要求、約束、申込みを対象外にしたりしている。これではあっせん利得の抜け道を教えているようなものだ。

【国民生活を脅かす2法案】
国民生活を脅かす法案も二つ成立した。
一つは前述の平成12年度補正予算である。ITという冠をかぶせただけの在来型の地方ばら撒き公共事業ばかりで、個人消費喚起型の政策はまったく入っていない。
もう一つは、健康保険法の改悪である。高齢者の医療費の自己負担が上がり、また40〜64歳の人の医療保険料と介護保険料の上限が引上げられた。これに10月から徴求が開始された介護保険料(年間2兆円強)を加えると、実質的には数兆円の所得税増税が実現したのと同じである。
これでは、ただでさえ弱い個人消費が一段と冷え、来年、2001年の景気見通しには暗い陰が差してきたといえよう。