第141回臨時国会活動報告

第141回臨時国会活動記録表

平成9年9月29日に開会した第141回臨時国会は、75日間という異例に長い会期を終え、12月12日に閉会した。大蔵省提出7法案のうち、最大の争点は、財政構造改革法案と預金保険法改正法案であった。この2つの法案の問題点については、このホームページのWhat's New欄(97.9.29『臨時国会提出予定の金融財政法案を評定する』)に詳しく述べたので参照されたい。
臨時国会最大の山場は、三塚蔵相解任決議案(新進、民主、太陽3野党共同提出)と橋本内閣不信任案(新進党提出)であったが、いずれも自社さ3与党の反対で否決された。
以下では、委員会における質問にしぼって報告する。
この臨時国会中、私は新進党を代表し、5回質問に立った。

(10月21日 財政構造改革特別委員会)
「財政構造改革法案」(以下「財革法」)について橋本首相、三塚蔵相、尾身経企庁長官に対し、1時間質疑。
What's New:97.10.22『財政構造改革法案は将来にわたって政府の手足を縛る悪法』参照。

主な論点は以下の通り。
@ 財革法の精神は、赤字国債のみならず、財政赤字全体を毎年減らすということである。これは財政赤字の拡大を伴う景気刺激策を禁じているという意味で、財政政策の自由度を2003年度まで拘束する悪法である。
A 財政赤字は民間の投資活動を圧迫する(クラウディング・アウトが起きる)から最優先で削減すると政府は主張するが、日本経済が中期停滞に陥り、7〜8%のデフレ・ギャップが存在する現状では、貯蓄は民間投資と財政赤字の合計に対して有り余っており、今後2003年度まで、クラウディング・アウトは起こり得ない。
B 国債の支払金利の負担が超低金利を反映して軽く、他方で一般歳出に無駄が多い時は、国債発行削減による国債費の抑制よりも、行革による一般歳出の抑制を優先すべきである。
C 以上@〜Bの理由から、財革法の通り財政赤字削減を最優先するのは愚策であり、日本経済が一層停滞して、税収が落込み、結局、財政赤字削減にも失敗する。

(10月31日 財政構造改革特別委員会)
「財政構造改革法案」に反対する締めくくり総括質疑を、新進党を代表し、50分間行った。答弁者は橋本総理、三塚蔵相、尾身経企庁長官、瓦建設相。
What's New:97.10.31『財政赤字削減に賛成するが故に財革法案に反対する』参照。

主な論点は以下の通り。
@ 財政赤字を削減する方法は、歳出削減か増税しかないと政府は考えているが、両者ともデフレ効果を持つ。正しくは経済を実力相応の成長軌道に戻すのが先。そうすれば、歳出削減のデフレ効果は民間投資拡大で相殺され、税収も自然増収という形で増えるので、財政再建は可能になる。
A 財革法を実施した場合、日本経済がどうなるかについて、中期シミュレーションを行っていないというのは、政策当局として怠慢であり、不見識。大和総研のシミュレーションでは、経済が停滞し、失業率は4.5%へ上昇、経常黒字の対GDP比率も4.5%へ上昇、挙げ句の果てに財政赤字は2003年になってもGDPの3%以下に下がらない。

(11月4日 予算委員会)
景気問題の集中審議が行われ、私は2時間にわたって橋本総理、三塚蔵相、尾身経企庁長官、松下日銀総裁に対して質疑を行った。
What's New :97.11.4『橋本総理と私の景気観・政策観の違い』参照。

主な論点は以下の通り。
@ 足元の景気が弱いのは構造的要因によるものであり、年度下期には確りしてくるという政府見解は誤り。97年度デフレ予算の強行と金融システム対策の不在による政策不況であり、年度下期には一段と景気後退が深刻化しよう。
A 政府、日銀は景気回復が続いている根拠として雇用と企業収益を挙げているが、この2つは遅行指標である上、最近は明らかに悪化し始めている。
B 今景気を支えている設備投資と純輸出も来年は頭を打つので、在庫調整が終わった後に再び景気回復という形にはならず、このまま98年に向って景気後退となる。その場合は責任を取って内閣は退陣せよ。

(11月28日 大蔵委員会)
金融危機に関する集中質疑が行われ、三塚蔵相と松下日銀総裁に対して1時間の質疑を行った。
What's New :97.12.1『政府・自民党の公的資金導入論議を正す』参照。

主な論点は以下の通り。
@ 拓銀や山一の破綻は、大金融機関を潰さないと言い続けてきた政府の公約違反。現在の不十分なセイフティ・ネットの下では必ず大型の金融危機が発生するという指摘に対して、大丈夫と言い続けた政治的責任を取れ。
A これで「Too big to fail原理」は破綻。米国では、地域や分野に不可欠の金融機関の破綻を救済するという「不可欠性原理」も、モラル・ハザードが発生し、不公平として否定されている。唯一救済が正当化されるのは「システミック・リスク原理」であるが、拓銀や山一でもシステミック・リスクを回避できたので、この原理による救済例はあまり考えられない。
B 救済せずに整理する場合、受け皿銀行が名乗りをあげれば継承方式が良いが、そうでない時は解散すべきである。
C 優先株や劣後債を公的資金で買い上げるのは、「不可欠性原理」に基づく破綻金融機関の経営救済であり、反対。

(12月5日 大蔵委員会)
「預金保険法改正案」について、三塚蔵相と松下日銀総裁に対して、反対の立場から1時間5分質疑。

主な論点は次の通り。
@ 預金保険法改正案の特定合併は、受け皿銀行の現れない複数の破綻銀行に対し、不良債権の買取りという資金援助を行った上、合併させて新銀行とするもので、明らかに破綻金融機関の経営救済である。これでは経営者の責任追求も不十分となり、モラル・ハザードが発生する。
A どの破綻金融機関に特定合併を認めるかは、大蔵省の裁量に任されている。これは密室型の介入行政に逆戻りする時代逆行の法案である。
B しかも判定基準が地域や分野に支障をきたす恐れという「不可欠性原理」であり、米国では既に不公平として否定された基準である。