第140回通常国会活動報告

平成9年1月20日に開会した第140回通常国会は、150日間の会期を終え、6月18日に閉会した。この間の主な活動を報告すれば、以下の通りである。

《予算関係》
(1月27日 予算委員会)
「平成8年度補正予算」について橋本総理、三塚蔵相に1時間質問。
主な論点は、
@ 公共投資を追加して景気を支えるというが、4月以降の9兆円の国民負担増を目前にした公共投資は、税収に漏出するために乗数効果が極めて小さい、
A 公共投資もウルガイ・ラウンド対策費も無駄が多い、
B 平成9年度以降の財政赤字削減を見掛け上大きくするための駆け込み支出である、
などを根拠に反対し、真に必要な支出にしぼり、残りは平成9年度当初予算の中で適否を考えるべしと主張。


(2月10日 予算委員会)
「平成9年度予算案」について橋本総理、三塚蔵相に1時間質問(NHKテレビ放映)。
9兆円の国民負担増と公共投資の抑制により、9年度の成長率は1%台に低下して景気はグズつき、貿易黒字・経常黒字の再拡大による対米摩擦再燃、金融機関の破綻などの構造問題が深刻化する可能性を指摘。これに伴なう税収減で、財政赤字は思うように縮小しないと警告。


(3月6日、7日 同委員会)
せめて2兆円の特別所得減税だけでも継続させるため、「平成9年分所得税の特別減税のための臨時措置法案」と「地方税の一部を改正する法律案」を新進党議員立法で提出、「明日の内閣」の経済・財政政策大臣として税制改革に関する特別委員会の答弁席に座り、3時間10分にわたり、自民、新進、民主の各党代表者の質問に答えた(NHKテレビ放映)。


しかし結局は与党の数の論理で押し切られ、二つの「予算案」は成立、「減税措置法案」は否決された。その結果、当面の日本経済は、橋本総理、三塚蔵相との予算委員会での論争で指摘した通り、4月以降景気の勢いは失われ、対外黒字に対する米国政府の警告は強まり、金融不安は尾を引いている。財政赤字も思うように縮まないだろう。


《金融関係》
(4月3日 本会議)
「外為法改正案」について新進党代表として橋本総理、三塚蔵相に質問(議事録参照)。

(4月9日 大蔵委員会)
同法案について三塚蔵相に2時間質問。
ポイントは、来年4月の外為法改正実施前に、金融の規制緩和、金融税制の国際標準化、不良債権処理の枠組み強化などを進めない限り、外為法改正がかえって日本の金融空洞化を促進しかねないという点。結局、これらの諸点を附帯決議として加えた上、同法案に賛成。

(4月30日提出)
またストック・オプション制度を導入する「商法改正」の共産党を除く超党派議員立法では、新進党を代表して共同提案者に名を連ね、5月7日の法務委員会の答弁席へ。純粋持株会社を解禁する「独禁法の改正案」には、5月9日商工委員会において新進党を代表して賛成の立場から意見陳述。日本の改革に資すると判断される法案については、自民党とも積極的に協調して行くことが日本の改革に寄与するとの信念による。


(5月6日 行政改革特別委員会、5月7日、同21日 大蔵委員会)
「金融監督庁設置法案」に対しては、橋本総理、梶山官房長官、武藤総務長官、三塚蔵相の4人に対し新進党の先頭をきって2時間にわたる質問を行い、反対。
行政改革に伴う中央省庁の整理、統合という大きな流れの中で考えると、金融行政の中の検査・監督のみを担当する省庁を新設することは、まったくの無駄であり、民間金融界も、連絡先が大蔵・日銀・監督庁の3つに増え、さぞ迷惑される筈。
財政政策と金融行政の検査・監督との間には利益相反が存在するため、不良債権処理や金融の規制緩和が遅れていることは周知のとおりであるが、金融政策と金融行政の検査・監督との間には基本的には利益相反は存在せず、むしろ両者は補完関係。
大蔵省から金融行政の検査・監督機能を切離し、日本銀行の考査・監督業務に統一することを主張。更に、


(5月26日 行政改革特別委員会)
新進党の担当責任者として議員立法の提案者の筆頭に名を連ね、「金融委員会設置法案」と「日本銀行法案」という修正案を提出。
そこでは、日本銀行政策委員会を金融委員会という名の国家行政組織法上の3条機関とし、大蔵省と対等の立場において独立性を強化、日本銀行本体はこの3条機関の認可法人に位置付け。同日、2時間35分の間答弁席に着き、自民、新進、民主、共産党代表に答えた。結局この法案も、与党の数の論理に押し切られ、委員会および本会議で否決。


しかし近い将来、行政改革の流れの中で中央省庁の再編、数の削減縮小が行われれば、必ず金融監督庁は合併の対象となり、最善の策は新進党案の通り日本銀行による吸収という考え方が浮上するであろう。

《訪米関係》
(4月28日〜5月2日)
5日間ワシントンに滞在し、国防省、国務省、財務省、大統領府、連邦準備制度理事会、上下両院、民間経済研究所を訪れ、意見交換を行った。これは新進党「明日の内閣」総合調整大臣兼党政策審議会会長の野田毅氏を団長に、外交政策大臣の坂口力氏、安全保障政策大臣の村井仁氏、経済・財政政策大臣の私などで構成する「新進党訪米団」としての活動である。
財務省(サマーズ副長官など)、連邦準備制度(マイヤー理事)、民間研究機関(バーグステン、シュルツ、メイキンなど)、ロス上院議員など多くの経済専門家からは、財政緊縮と超低金利の当然の帰結として、日本経済は外需主導型の回復になるのではないかとの強い懸念が表明された。また「経済再建なくして財政再建なし」との基本認識に立ち、民間市場経済をサプライサイドから活性化しようという新進党の政策戦略に対して幅広い賛同が得られた。
国防省(ホワイト副長官、キャンベル・アジア太平洋担当次官補代理など)、国務省(ワース次官、カートマン次官補代理など)、議会関係(フォーリー次期駐日大使候補、アーミテージなど)とは、先方より特措法改正問題に対する新進党の態度に謝意が表明された後、今後の日本防衛協力のガイドライン見直しについて、率直な意見表明と突っ込んだ見直しの交換が行われた。


《おわりに》
「政局」を追う「政局」記者ばかりで、与野党の「政策」の対決を確りと報道する「政治」記者が少ない。これは編集方針のせいであろうか。残念なことである。