2025年1月版
根強い物価上昇で消費が抑えられ、再びスタグフレーションの気配

【実質賃金の前年比低下が続き景気の先行指標は悪化】
 消費者物価上昇率が高水準を続けており、11月は前年比+2.9%に達した。春闘の大幅ベアで一時前年を上回っていた実質賃金は再び前年を下回っている。
 これを背景に、11月の景気動向指数は、一致指数と先行指数が3か月振りの下降となった。12月の「景気ウォッチャー調査」では、現状判断DIは上昇したものの、先行き判断DIは、家計動向関連を中心に低下した。
 生鮮食品とエネルギーを除く消費者物価総合の上昇率が高まっていること(図表2)から分かるように、最近の根強い物価上昇は輸入インフレによるものではなく、国内要因が主因である。それが民間消費の頭を抑えている。日本経済は再びインフレと景気後退が併存するスタグフレーションに向かう恐れが出てきた。

【鉱工業生産と出荷は、引き続き一進一退】
 11月の鉱工業生産と出荷は、2か月連続上昇のあと、前月比夫々−2.3%、−2.7%と反落した(図表1)。大きく下落した業種は、生産用機械(前月比−9.1%)、自動車(同−4.3%)、金属製品(同−5.7%、橋りょう、飲料用アルミニウム缶、ばね等)などである。11月は国内向け出荷、輸出、輸入がいずれも前月比減少した。
 その反動もあって、製造工業生産予測調査では、12月同+2.1%、1月同+1.3%の上昇と、生産用機械、金属製品などを中心に2か月連続して上昇する見込みとなっている(図表1)。鉱工業生産、出荷は引き続き一高一低の動きが続いている(図表1)。

【国内民間消費は物価上昇率が再び高まる下で頭打ち】
 国内民間需要の動向を見ると、「家計調査」の実質消費は、10月(前月比+2.9%)に引き続き、11月も同+0.4%と微増し、7〜9月の水準を上回った、一方、11月の実質消費活動指数(日銀推計)は、4か月振りに前月比増加したが、水準は低い(図表2)。この間「消費動向調査」の「消費者態度指数」は、9月以降、月毎に一高一低を繰り返しており、12月は前月微増のあと微減した。
 10〜12月期の個人消費は、消費者物価上昇率が再び高まる下で(図表2)、頭打ちとなっている。厚生労働省調べの実質賃金は、大幅な春闘ベア率を反映して6〜7月に前年を上回ったが、その後8〜11月の4か月は再び前年を下回っている。

【設備投資は7〜9月期減少のあと10〜12月期は再び回復か】
 設備投資の動向を見ると、機械投資の動向を反映する資本財(除輸送機械)国内総供給(国産品の国内向け出荷と輸入の合計)は、8月に−9.5%と大きく減少したあと、9〜11月の3か月は通計で+14.1%と回復している。先行指標の機械受注(民需、除船舶・電力)は、10月に前月比+7.1%の増加となった(図表2)。
 12月調査の「日銀短観」と「法人企業景気予測調査」の本年度全産業設備投資計画(ソフトウェア投資を含み、土地投資を除く)は、夫々前年比+9.7%、+10.3%と引き続き高い伸びを計画している。
 7〜9月期のGDP統計で前期比−0.1%と足踏みした設備投資は、10〜12月期には再び回復する見込みである。

【貿易収支の赤字は縮小傾向】
 最後に外需を見ると、GDP統計の「純輸出」に対応する国際収支統計の「貿易・サービス収支」(図表2)の赤字は、9月をピークに10月、11月と縮小している。
 これは、輸入が原粗油を中心に減少傾向を辿っている反面、輸出は半導体等製造装置等を中心に高水準を維持しているため、貿易収支の赤字は10月、11月と急減しているためである。
 本年に入り、1〜3月期から7〜9月期まで一貫して成長にマイナスの寄与をしている「純輸出」は、10〜12月期に4四半期振りにプラスに転じるかもしれない。