2024年5月版
1〜3月期に再びマイナス成長が予想され、景気は一高一低ながら、4〜6月期以降は緩やかな回復持続が期待される

【4〜6月期以降の回復に期待】
 鉱工業生産と出荷は、自動車業界の認証不正問題で1〜2月に大きく落ち込んだが、その反動で3〜5月は連続して大きく回復する見込みである(図表1)。しかし1〜3月期を区切ってみれば、落ち込みの影響は大きい。
 需要面でも、2%台後半の消費者物価上昇が続く下で、実質賃金は下落を続けており、5月16日(木)に公表される1〜3月期の実質GDPは、10〜12月期増加のあと、再びマイナス成長となろう。
 しかし4〜6月期は、個人消費面で春闘の大幅ベアの影響が現れ、また鉱工業生産の復調もあって、再びプラス成長に戻る可能性が高い。
 本年度の景気動向は、2桁増加の設備投資計画が本当に実行に移されてくるのかどうか、また春闘の大幅ベアの雰囲気が夏期・冬期賞与にも引き継がれていくかどうかに大きく左右されよう。

【鉱工業生産、出荷は3月以降復調】
 鉱工業生産と出荷は、1月に発覚した不正認証問題で、自動車とその関連業種の生産・出荷が落ち込んだため、1月、2月と連続して低下したが(2か月で生産−7.2%、出荷−8.1%)、3月には自動車とその関連業種の生産・出荷の正常化が始まったため、全体も前月比+3.8%、同+4.3%とやや大きく回復した(図業1)。
 製造工業生産予測調査によると、4月と5月も反動回復が続き、夫々、前月比+4.1%、同+4.4%とやや大きく増加する見込みである。仮に4月と5月の鉱工業生産が同じ比率で回復すると仮定すると、5月は落ち込み前の12月の水準を+4.7%上回る(図表1)。鉱工業生産と出荷の基調は、引き続き緩やかに上昇している。
 1〜2月の出荷落ち込みを国内向け出荷と輸出に分けると、夫々、国内向け−8.5%、輸出−8.8%とほぼ同じ割合で落ち込んでいたが、3月の前月比回復は国内向けが+4.9%、輸出が+2.6%とやや国内向けに偏っている。

【物価高騰下、実質消費は4四半期連続下落の見込み】
 国内民間需要の動向を見ると(いずれも季調済み)、3月の実質消費活動指数(日銀推計)は、前月にやや大きく回復(前月比+1.6%)したあと、微減した(同−0.2%)。一方「家計調査」の実質消費支出は、低水準ながら、2月(前月比+1.4%)に続いて、3月も同+1.2%と増加した。しかし、4月の「消費動向調査」の消費者態度指数は、3月まで毎月上昇していたが、4月は前月比−1.2%の下落となった。
 3月まで、消費者物価の前年比が2%台後半の上昇を続けている下で、、3月の実質賃金の前年比は前年比で2年間下落を続けている(3月は前年比−2.5%)。「消費動向調査」の消費者態度指数は前向きであるが、減少する実質所得の制約の下で、実質消費の実績は増えられないのが現実である。
 1〜3月期(推計)まで4四半期続いている実質GDPベースの個人消費の減少は、本年のベア率が所得に反映される時期がくる迄、立ち直れないのではないか。

【機械受注に復調の兆し】
 設備投資のうち、機械投資の動向を反映する資本財(除輸送機械)の国内総供給(国産品の国内向け出荷と輸入の合計)は、2月に落ち込んだ(前月比−2.3%)反動もあって、3月には前月比+2.4%の増加となった。しかし四半期毎の動向を見ると、昨年10〜12月期が前期比+3.2%、本年1〜3月期が同−5.1%と大勢弱含み横這いで推移している。「短観」の2桁増加の設備投資年度計画とは、やや乖離がある。
 先行指標の機械受注(民需、除船舶・電力)は、2月に前月比+7.7%と前月減少(同−1.7%)のあと大きく増加し、1〜3月期の見通しは、前期比+4.9%と4四半期振りの増加が見込まれている。

【1〜3月期の貿易・サービス収支の赤字は拡大】
 最後に外需の動向を見ると、3月の国際収支統計(季調済み)の貿易収支は、輸出が前月比+5.7%、輸入が同+4.5%と共に増加したが、輸出の伸びがやや上回ったため、貿易収支の赤字は、前月比縮小した(−10.3%)。このため、GDP統計の「純輸出」に対応する「国際収支統計」の貿易・サービス収支の赤字も、僅かに縮小した(−0.2%)。しかし、1〜3月期全体で見ると、貿易サービス収支の赤字は、サービス収支の赤字が前期比拡大したため、10〜12月期よりも拡大しており、1〜3月期の実質GDPの成長に対し、外需はマイナスの寄与となろう。
 加えて国内民間需要も、消費を中心に不冴えのため、1〜3月期の実質成長率は前期プラス成長のあと、再びマイナス成長になろう。
 GDPの立ち直りは、本年度のベア拡大の影響が消費面に現れ、また設備投資が計画通しに実行に移された場合には、4〜6月期以降に期待されよう。