2024年4月版
1〜3月期マイナス成長のあと、景気は4〜6月期から設備投資を中心に再び緩やかな回復軌道へ
【1、2月の鉱工業生産、出荷の落ち込みは一時的、24年度の設備投資計画は根強い】
自動車業界の認証不正問題に伴い、2月と3月の自動車工業と関連部品業界の生産が落ち込み、鉱工業生産と出荷は2か月連続して下落したため、2月の景気動向一致指数と3月の「景気ウォッチャー調査」の現状判断DIは、いずれも低下した。しかし、この動きは一過性と見られ、景気は4月以降、再び緩やかな回復軌道に戻ってくると思われる。
物価高騰が続いている下で、実質個人消費の減少は春闘の賃上げが給付支給面に反映される迄続くと見られるが、本年度の設備投資計画は、3月調査「日銀短観」と1〜3月調査「法人企業景気予測調査」の双方共に確りしており、景気腰折れの心配はない。日銀のプラス金利への政策転換も、金融市場、金融機関で円滑に消化されている。
1〜3月期は、鉱工業生産、出荷の落ち込みもあって、マイナス成長になると見られるが、4〜6月期以降は緩やかな回復軌道に戻ると予想される。
【鉱工業生産、出荷は2か月連続下落のあと3月から大幅な反動増】
2月の鉱工業生産、出荷は、前月比夫々−0.1%、−0.4%と2か月連続して減少した(図表1)。これは、前月に発生した自動車の認証不正問題が尾を引き、自動車工業と関連部品鉱業の生産、出荷が引き続き減少したほか、2月初旬の大雪で一時生産が止まった業種があったためである。
この反動もあって、3月と4月の製造工業生産予測調査では、前月比夫々+4.9%、同+3.3%と大幅な上昇が見込まれている。鉱工業生産がこの通りに回復すれば、4月の水準は落ち込み前の12月の水準を+0.1%上回る。鉱工業生産の実績は、製造工業生産予測の伸び率を下回ることが多いので、この通りの回復になるとは限らないが、1月と2月の落ち込みが一時的であり、生産、出荷が緩やかな上昇基調を保っている。
3月調査「日銀短観」の製造業売上高計画を見ても、23年度下期が前年比+2.3%、24年度上期が同+1.0%、同下期は同+1.2%と緩やかながら上昇持続を見込んでいる。
【物価高騰下個人消費は弱含み持続】
国内需要の動向を見ると、2月の実質消費支出(家計調査)、実質消費活動指数(日銀推計、図表2)は、いずれも前月比増加した。いずれの指数も季節調整されているが、今年の2月は「うるう月」で1日多いことは調整されていないと見られる。
物価高騰下で、実質賃金は2月まで2年以上も前年を下回っているので、消費の基調は今年の大幅な賃上げで実質賃金がプラスに転じるまでは、弱含みが続くと見られる。
3月調査「日銀短観」の雇用人員判断の「不足超」は、製造業・非製造業、企業規模を関らずいずれもジリジリと進んでいる。
【24年度の設備投資計画の伸びは23年度を上回る可能性】
3月調査「日銀短観」の全規模、全企業(金融機関を含む)の設備投資計画額(ソフトウェア・研究開発を含み、土地投資額を除く)は、23年度に前年比+10.4%と大幅に伸びたあと、24年度も同+4.9%の増加となっている。これは前年の同じ時期(3月調査)の計画を上回っており、今後の計画確定に伴う上方修正が23年度と同じ経過を辿れば、同じく2桁の伸びが予想される。
このうちソフトウェア投資額だけを見ると、24年度計画は前年比+9.8%とこの時点でも既に23年度計画の前年比+10.3%に近い。今後、年度中頃に更に上積みされていく可能性を考えると、新製品開発・合理化投資の意欲と実績は強いと見込まれる。
3月の「法人企業景気予測調査」でも、設備投資額合計(同)は、23年度計画の前年比+9.3%増のあと、24年度計画は同+7.5%に達しており、年度中の上方修正を考えると23年度の伸びを上回る可能性がある。
24年度の日本経済の成長は、設備投資に牽引される可能性が高い。
【2月の貿易収支の赤字は急拡大】
GDP統計の「純輸出」に対応する2月の国際収支統計の貿易・サービス収支(季調済み)の赤字は、1兆514億円と大きく拡大した(図表2)。これは、主として貿易収支(同)の赤字が、輸出の停滞、輸入の大幅増加から7122億円に急拡大したためである。
輸出の停滞には、前述の製造工業の生産低下が響いている。輸入の増加には、減少傾向を辿ってきた石油製品の再上昇が影響している。
1〜3月期の実質GDPは、外需もマイナス寄与となり、国内民間需要も個人消費を中心に弱いと見られるので、再びマイナス成長となる可能性が高い。