2023年5月版
消費のペントアップ需要に支えられ景気は順調に回復、今後はベア率と根強い物価上昇の兼ね合い、米欧の景気動向が回復テンポを左右
【コロナ後の消費は活発、鉱工業生産・出荷も正常に回復】
本年1月頃を底に4月まで、景気は順調に回復を続けている。4年振りにコロナ禍の行動規制のない連休を迎え、5月の消費活動も活発である。
鉱工業生産、出荷は、原料・資材の不足から落ち込んだ1月を底に、4月まで急回復した。4月の「消費動向調査」の消費者態度指数は、12月から4月まで連続して上昇した。4月の「景気ウォッチャー調査」の「景気の現状判断DI」は、1月を底に4月まで3か月連続して上昇し、4月の「同先行き判断DI」は更に上昇している。現状、先行き共に、家計動向関連と企業動向関連が揃って上昇を続けている。この結果、4月の「水準判断DI」は、コロナ禍前の18年の水準に並んだ。
現在の回復を支えているコロナ禍のペントアップ需要が息切れを起こす本年下期以降の景気を左右する重要な要素は、国内では本年春闘のベースアップの幅と根強い消費者物価上昇の先行き、海外では利上げ下の米欧の景気動向であろう。
【鉱工業生産・出荷は1月の落ち込みからの順調な回復が続く】
3月の鉱工業生産と出荷は、前月比それぞれ+0.8%、+0.4%と2か月連続して増加し、製造工業生産予測調査によると、4月も同+4.1%と大きく増加したあと、5月には同−2.0%と足踏みする予想となっている(図表1)。1月に原料資材の不足から落ち込んだあと順調に回復した生産は、4月には落ち込み前のピーク(昨年8月)まで、ほぼ回復する見込みである(図表1)。
落ち込みと回復を主導している業種は、自動車、生産用機械、電気・情報通信機械である。
鉱工業出荷を国内向けと輸出に分けると、国内向けは前月比+0.8%、輸出は同+0.6%と共に2か月連続して増加した。
国産品の国内向け出荷に輸入を加えた国内向けの総供給は、輸入が前月比−1.9%と2か月連続の減少となったため、全体として同−0.5%と3か月振りに減少した。
輸出入増減の主な品目を見ると、輸出増加の中心は輸送機械(含、自動車)、生産用機械、輸入減少の中心は引き続き鉱業(石油、石炭、LNG)である。
【消費はコロナ禍後のリベンジ回復が続く】
国内需要の動向を見ると、3月の家計消費は「消費活動指数+」(日銀推計)と実質消費支出(家計調査、2人以上の世帯)が共に前月比僅かに減少した(図表2)。
しかし4月の「消費動向調査」によると、4月の消費者態度指数は5か月連続の上昇となった。しかも3年振りにコロナ関係の行動規制がない5月連休を迎え、旅行、飲食などの家計消費は久し振りの活況を呈している。5月の消費指標は揃って大きく回復すると見られる。
3月の現金給与総額は、季調済前月比+1.2%増、前年比+0.8%増となったが、消費者物価高騰の折柄(3月は前年比+3.2%上昇)、実質賃金は前年比−2.9%と12か月連続で減少している。当面の消費は、コロナ禍中の貯蓄増加の反動であるペントアップ需要に支えられているが、これには限界があるので、今後の家計消費は、今次春闘の結果に大きく懸っている。
【設備投資は根強い増加基調、住宅投資の減少に底入れの兆し】
投資動向を見ると、機械投資の動向を反映する資本財(除、輸送機械)の国内総供給は、2か月増加のあと3月は前月比−5.5%の減少となった(図表2)。先行指標の機械受注(除、船舶・電力)は、1〜2月平均が昨年10〜12月平均に比し+4.7%の増加となっている。本年度の設備投資計画(日銀短観、法人企業景気予測調査)は、いずれも期初としては強めの計数が報告されている(前月の「月例景気見通し」参照)。設備投資の基調は根強い。
住宅投資の先行指標である1〜3月の新設住宅着工戸数は、前期比+2.8%と2四半期振りに増加した。実質GDP統計で6四半期減少を続けている住宅投資は、コロナ禍も終わり、久方振りに上昇に転じる気配を見せている。
【貿易サービス収支の赤字縮小続く】
最後に外需の動向を見ると、GDP統計の「純輸出」に対応する国際収支統計の3月の「貿易サービス収支」は、1兆3893億円の赤字と2か月連続して赤字幅を縮小した。四半期ベースの赤字合計は、昨年7〜9月期をピークに2四半期連続して減少し、1〜3月期は5兆747億円となった(図表2)。
これは主として貿易収支の赤字が、エネルギー資源の輸入減少から、昨年10月をピークにジリジリと縮小しているためである。輸出は中国をはじめとする世界経済の減速から、やはり昨年10月をピークに頭を打ったが落ち込みは小さく、2月と3月にはジリジリと増加している。
間もなく公表される1〜3月期の実質GDP統計では、10〜12月期と同様、「純輸出」は成長に対してプラスの寄与となろう(図表3)。
国内需要も、消費のペントアップ需要と根強い設備投資・底を打つ住宅投資に支えられ、成長に対してプラスの寄与となるので、全体として1〜3月期の実質GDPは、そこそこのプラス成長となろう。