2023年2月版
10〜12月期の成長率は在庫投資の大幅減少を除くと年率+2.8%、年明け後も個人消費を中心に緩やかに回復

【年明け後の消費に明るさ】
 本日(2月14日)公表された10〜12月期実質GDP(季調済、以下同じ)は、前期に4四半期振りに微減(前期比−0.3%)となったあと、同+0.2%(年率同+0.6%)の微増となった。もっとも在庫投資が異常な減少(GDP成長率に対する寄与度−0.5%)を示しており、実勢を見るためにこれを除くと+0.7%(年率+2.8%)とまずまずの成長率である。
 この成長率に対する寄与度は、在庫投資を除いた国内最終需要(家計消費の増加が中心)と外需がほぼ半分ずつ寄与している。外需は4四半期続いた輸入の大幅増加が、10〜12月期にやや減少に転じたためのプラス寄与である。
 年が明けた後は、国内景気にやや明るさが出てきた。1月の「景気ウォッチャー調査」では、「企業動向関連DI」が現状判断、先行き判断共に上昇に転じ、「家計動向判断DI」では、先行き判断DIが2か月連続して大きく好転した。
 1月の「消費動向調査」の「消費者態度指数」も、2か月連続して上昇した。物価上昇に伴う実質所得の減少が重石となっているものの、コロナ禍の行動制限解除による小売、飲食、旅行業の個人関連サービス業の立ち直りが顕著である。
 鉱工業生産と出荷は、10〜12月期には7〜9月期急回復の反動もあって弱含みに推移したが、その中にあって、耐久消費財の国内向け出荷は、10〜12月期にも増勢を保っている。消費の基調は、コロナ禍のペントアップ需要もあって、底固いと見られる。

【鉱工業生産、出荷は12月まで弱含み】
 12月の鉱工業生産は、前月微増(前月比+0.2%)のあと、同−0.1%の微減となり、2か月連続してほぼ横ばいとなった(図表1)。一方12月の鉱工業出荷は、同−0.7%、と4か月連続の減少となった(図表1)。鉱工業生産、出荷は共に弱含みである。製造工業生産予測調査によれば、生産は1月にも横這いとなったあと、2月に急上昇する(図表1)。
 10〜12月期の出荷(前期比−2.7%)を国内向けと輸出に分けると、いずれも前期比−1.7%の減少であった。このうち10〜12月期の国内向け出荷を財別に見ると、耐久消費財が増加、資本財が横這いと国内の消費、設備投資の底固さを窺わせるが、その他の財はいずれも減少した。
 国産品の国内向け出荷に輸入を加えた国内向け総供給は、前月に続き、輸入が鉱業(エネルギー関連)を中心に減少したため、前月比+2.3%の増加にとどまった。

【年明け後の消費マインドは前向き】
 国内需要の動向を見ると、12月の実質消費活動指数(日銀推計、図表2)と12月「家計調査」(2人以降の世帯)の消費支出(実質)は、前月に続き、2か月連続で減少した。一方、実質GDP統計の10〜12月期の民間消費支出は、前期横這いのあと、前期比+0.5%の増加であった。
 1月の「消費動向調査」の消費者態度指数は、12月に続き上昇した。コロナ禍に伴う行動制限が解除された下で年末年始を迎え、消費者の態度は前向きに変わっているようだ。
 しかし、物価上昇率の高まり(1月の消費者物価<除生鮮食品>は前年比+4.0%、図表2)による実質所得減少の下で、実質消費の回復には勢いがない。
 12月の実質賃金は、ボーナス月とあって、名目現金給与総額が前年比+4.8%と伸びたため、前年比+0.1%と9か月振りに前年を上回ったが、ベースアップが本格化する春までは、再び前年比マイナスに沈むと見られる。
 住宅投資の先行指標である「新設住宅着工戸数」(図表2)は、四半期ベースでみると一高一低を繰り返しており、10〜12月比は前期比減少した。実質GDP統計の住宅投資は、5四半期連続して減少してるが、10〜12月期は前期比−0.1%と下げ止まりの気配がある。

【機械投資を反映する資本財の荷動きは鈍い】
 設備投資の動きを見ると、機械投資を反映する資本財(除、輸送機械)の国内向け総供給(国産品の国内向け出荷と輸入の合計)は、12月に前月比+1.0%と微増したが、10〜12月期全体では前期比−4.7%と著増した前期(同+5.0%)の反動もあって減少した(図表2)。2桁の増加計画を示す「日銀短観」や「法人企業景気予測調査」の本年度設備投資計画から見ると、このところの資本財国内総供給の動きは、少し弱いように見える。
 10〜12月期の実質GDP統計の設備投資は、前期比−0.5%と3四半期振りにやや減少した。
 先行指標の機械受注(民需、除船舶・電力)は、11月に前月比−8.3%の減少となり、10〜12月期は2四半期連続で前期比減少となる恐れが出てきた(図表2)。

【10〜12月期の「純輸出」は成長にプラス寄与】
 最後に外需の動向を見ると、GDP統計の「純輸出」に対応する国際収支統計の「貿易・サービス収支」(季調済)は、12月に1兆7908億円の赤字と最近のピークである8月(2兆9825億円の赤字)よりも赤字が縮小しているが、前月(1兆7551億円)よりわずかに赤字幅が拡大した(図表2)。
 最近のピークに比し12月の赤字が縮小しているのは、貿易収支の赤字が輸出の減少(8兆5471億円→7兆9793億円)を上回る輸入の減少(10兆65723億円→9兆4111億円)で、縮小(2兆1103億円→1兆4317億円)したためである。
 最近の輸出動向を国際収支統計(季調済)で見ると、昨年10月(前年比+30.7%増)まで拡大傾向を辿ったあと、世界経済減速を背景に11月、12月と2か月間で−10.1%減少した。他方輸入は、エネルギー資源、穀物などを中心とする世界インフレと昨年10月までの円安(1ドル=350円)によって輸出拡大を上回る急拡大(10月の前年比+57.2%)を示し、貿易収支の赤字は昨年10月にピーク(2兆2202億円)に達したのである。その後、11月、12月の輸出入はともに減少したが、輸出の減少(前述の−10.1%)よりも輸入の減少(−15.2%)の方が大きく、貿易収支と貿易・サービス収支は好転した。
 このため、本日公表された10〜12月期GDPでは、外需が前期(成長に−0.7%の寄与度)とは様変わりに成長に対して+0.3%の寄与度になった。