2023年1月版
個人消費・非製造業にやや明るさ、反面製造業は頭重い動き
【12月から個人消費、関連サービス業に立ち直りの動き、製造業は不冴え】
行動制限のない年末・年始を迎え、12月以降、個人消費と関連サービス業(小売、飲食、旅行業等)に変化が出始めている。
12月に調査を実施した「消費動向調査」や「景気ウォッチャー調査」では、12月と先行きの「態度指数」や「判断DI」が数か月振りに好転した。12月調査「日銀短観」でも小売、飲食、旅行などのサービス業を中心に非製造業の業況が中小企業を含め好転している。
これに比して、製造業の業況回復は遅々としている。「日銀短観」の製造業の「業況判断」は足踏みしており、鉱工業生産、出荷は11月迄3か月連続して低下した。海外環境も、米欧先進国の利上げによる成長鈍化、中国のコロナ対策失敗と不動産不況による成長減速など明るくない。
しかし、日本経済全体としては、緩やかながら回復は続いている。1月に公表した日銀の「地域経済報告」でも、日本全国9地域のうち4地域が景気判断を引き上げ、残りは不変であった。
【生産、出荷は持ち直し傾向の中にやや弱さ】
11月の鉱工業生産と出荷は、前月比夫々−0.1%、−1.3%と、小幅減少ながら3か月連続の落ち込みとなった(図表1)。先月公表の11月の製造工業生産予測調査では、前月比+3.3%の上昇であったからやや意外な結果である。
業種別に見ると、11月の生産、出荷の減少にやや大きく寄与したのは、汎用・業務用機械(生産−7.9%、出荷−8.5%)と生産用機械(同−5.7%、同−3.9%)で、前者は10月のコンベアや運搬用大型機械の大型案件の反動減、後者は半導体製造装置、フラットパネル・ディスプレイ製造装置が半導体やスマホの需要減を反映して減少したことが響いている。
しかし、12月の製造工業生産予測調査では、この2業種の反動増と電子部品・デバイスの増加などから、再び前月比+2.8%の増加となっている(図表1)。この半年程、生産、出荷は、中国のサプライチェーン寸断による4〜5月の大幅減産、6〜8月の大幅反動増、再び9〜11月の反動減と振れが大きいが(図表1)、基調的には持ち直しの中にやや弱さも見られる。
【鉱工業製品の輸入がエネルギー関係の減少から4か月振りに低下】
11月の鉱工業出荷の内訳を見ると、国内向け出荷は+0.7%と3か月振りの上昇、輸出向けも+0.7%と2か月振りの上昇となったが、季節調整の技術的理由で総計はマイナス、内訳はプラスとちぐはぐの動きとなった。
国内向け出荷の増加に大きく寄与した業種は輸送機械(含、自動車)、輸出の増加に大きく寄与した業種は生産用機械、プラスチック製品である。
国内向け出荷に輸入を加えた国内総供給は、8〜10月の3か月間に輸入がエネルギー関係(石油、石炭、LNG)を中心に11.5%も急増してきたが、11月は4か月振りにエネルギー関係の減少などから前月比−8.8%の減少に転じたため、輸入全体で同−3.6%の減少となった。在庫の蓄積が進んだためが、一時的事情によるのかはまだ分からない。
【行動制限のない年末・年始を迎え、12月以降の消費にやや動意】
国内需要の動向を見ると、11月の「実質消費活動指数+」(日銀推計)と「家計調査」(2人以上の世帯)の実質消費指数(いずれも季調済)は、共に3か月振りに微減した(図表2)。
しかし、12月調査の「消費動向調査」では、11月まで低下していた「消費者態度指数」が、4か月振りに上昇に転じた。12月の「景気ウォッチャー調査」の「家計動向調査」DIも、現状判断と先行き判断の双方が2か月振りに上昇した。内訳を見ると、12月の現状では「小売関連」が、先行きでは「小売関連」「飲食関連」「サービス関連」が、いずれも好転している。
物価上昇下で不冴えであった個人消費は、行動制限のない年末・年始を迎え、12月以降、小売、飲食、旅行などを中心にやや息を吹き返した感がある。
【実質賃金の低下は加速気味】
背後の労働事情を見ると、11月の実質賃金は前年比−3.8%と4月以来8か月連続で低下し、消費者物価上昇率が月を追って高まっていることから(図表2)、下落幅は拡大している。
11月の完全失業率は2.5%と3か月振りに低下したが、完全失業者の減少、就業者の増加は遅々としている(図表2)。12月以降、サービス業の好転はあるが、製造業の回復が遅いので、雇用情勢の回復も遅れている。物価上昇下、春以降の賃上げの動向が注目される。
【本年度の設備投資計画は2桁の伸びを維持】
投資動向を見ると、12月調査の「日銀短観」と「法人企業景気予測調査」の本年度設備投資計画(ソフトウェア投資を含み、土地購入を除く)は、残り3か月を残すこの段階で、依然として前年比夫々+14.7%、+13.2%と高い伸びを維持している。
足許の機械投資の動向を反映する11月の資本財(除、輸送機械)の国内総供給(国産品の国内向け出荷と輸入の合計)は、輸入が前月比−18.2%と急減したことを主因に、同−11.4%の大幅減少となった。
先行指標の機械受注(民需、除船舶・電力)は、10月に前月比+5.4%となり、10〜12月期の見通しは+3.6%となっている(図表2)。
【11月の貿易サービス収支の赤字は半年振りに縮小】
最後に外需の動向を見ると、GDP統計の「純輸出」に対応する国際収支統計の「貿易サービス収支」(季調済、以下同じ)は、11月に17,511億円の赤字となり、赤字幅は前月に比し9659億円縮小した(図表2)。縮小は6か月振りである。これは、主として貿易収支の赤字が前月比8545億円縮小と、これも半年振りに縮小したためである。既に見た通り、これ迄急増を続けていた鉱工業製品の輸入が、11月にエネルギー関係を中心に減少したことが響いたと見られる。