2022年9月版
設備投資、個人消費など国内民需の回復で、7〜9月期は4四半期連続のプラス成長となり、コロナ前の水準を突破する見込み

【一周遅れの観があった日本経済は、ようやく本年下期にコロナ前の水準を抜き、過去のピークに迫る勢い】
 日中サプライチェーンの復旧に伴い、鉱工業生産、出荷は6月に続き7月も順調に回復しており、8月以降、コロナ禍直前の水準(19年下期)を抜き、今回景気後退が始まる直前のピーク(18年第4四半期)に迫る勢いである(図表1)。
 個人消費はコロナ禍第6波がピークを超えた3月以降順調に回復し、成長を支えてきたが、コロナ禍第7波と4月以降の消費者物価上昇(前年比2%超)に伴う実質所得の減少の下で、7月、8月とやや勢いを欠いている。一方設備投資は、DX、GXをはじめとするソフトウェア投資を中心に、力強く回復している。
 貿易・サービス収支は、世界インフレと円安に伴う円建輸入金額の膨張(交易条件の悪化)に伴い赤字幅を拡大しており、その影響で交易条件を含む実質国民総所得(GNI)の成長率は落ちている(4〜6月期は前期比+0.2%)。しかし数量ベースの輸入の拡大は小さく、これに伴い実質貿易収支の悪化も小さいので、実質GDPの成長率に対するマイナスの影響は大きくない。4〜6月期の実質GDP第2次統計では、設備投資の上方修正を中心に、成長率は+0.5%(年率2.2%)から+0.9%(同+3.5%)に上方修正された。本年下期には、コロナ前のピークを抜き、過去のピーク(1918年4〜6月期)に迫る勢いである。
 ただし、本年下期から明年にかけて、米国や中国を中心に世界景気が予想外に大きく後退しないことが、その条件である。とりあえずは、8月の「景気ウォッチャー調査」の「現状判断DI」と「先行き判断DI」は上昇を続けており、7〜9月期の実質GDPは4四半期連続のプラス成長となり、コロナ前の水準を大きく突破しそうである。

【日中サプライチェーンの復旧で鉱工業生産、出荷の回復続く】
 7月の鉱工業生産と出荷は、前月比夫々+1.0%、+1.6%と大幅に回復した前月(夫々同+9.2%、同+5.0%)に続き、2か月連続で増加した(図表2)。この先8月と9月も、製造工業生産予測調査によれば、同+5.5%、同+0.8%と続伸する見込みである(図表3)。
 この続伸は、5月に中国のゼロコロナ政策に基づく都市封鎖で工場の操業停止が相次ぎ、日本に部品を供給する日中サプライチェーンが途切れ、部品不足から日本の生産、出荷が大きく落ち込んだこと(生産は前月比−7.5%、出荷は同−4.1%)の反動で始まった(図表2)。しかしそれが9月まで続くとすれば、当面の景気回復の根強さも示していると見られる。
 大幅続伸を主導している業種は、自動車、汎用・業務用機械、生産用機械、電気・情報通信機械など日本製造業の主力業種である。

【6、7月の輸出の回復も順調】
 7月の出荷を国内向けと輸出に分けると、国内向けは前月比+1.2%、輸出は同+2.4%といずれも前記の主力業種を中心に増加した。
 また国産品の国内向け出荷に輸入を加えた鉱工業製品の国内向け総供給を見ると、輸入が鉄、非鉄の原料鉱石を中心に前月比−3.6%とやや大きく減少したため、全体で同+0.2%の微増にとどまった。

【コロナ禍第7波で個人消費は7月に足踏み、8月から再回復したが消費者物価上昇による実質賃金低下の影響がどう出るか】
 国内需要の動向を見ると、3月以降立ち直りを続け、4〜6月期の実質GDP統計(2次速報)でも前期比+1.2%(年率+4.9%)の増加となった個人消費は、7月に入るとコロナ禍第7波のピークと消費者物価の前年比+2.6%上昇の下でやや勢いを失い、「家計消費」の実質消費支出(季調済)は前月比−1.4%、日銀推計の「実質消費活動指数+」(同)は前月比−0.5%と、いずれも5か月振りに減少した(図表2)。もっとも、8月の「消費動向調査」の「消費者態度指数」は、コロナ禍第7波のピークアウトの下で、再び上昇した。
 雇用動向を見ると、7月はコロナ禍第7波のピークの下で、対面型サービス業種を中心に就業者数、雇用者数は共に減少し、完全失業率は横這いであった(図表2)。
 また現金給与総額は前年比+1.8%、季調済前月比+0.0%にとどまり、消費者物価上昇の下で実質賃金指数は前年比−1.3%と4月以降4か月連続で減少している。今後の実質消費の動向にどう響いてくるか注目される。

【設備投資はソフトウェア投資中心に堅調】
 投資動向を見ると、4〜6月期「法人企業統計調査」の設備投資が前年比+4.2%となり、これを反映して実質GDP統計の4〜6月期第2次速報値は、前期比+2.0%(第1次速報値は同+1.4%)に上方修正された。
 機械投資を反映する資本財(除、輸送機械)の国内総供給(国産品の国内向け出荷と輸入の合計)は、7月に前月比+7.1%、4〜6月平均比+4.8%と大きく増加した(図表2)。先行指標の機械受注(民需、除船舶・電力)も4〜6月期に前期比+8.1%と大きく増加しており(図表2)、下期の設備投資は内需をリードする形になると思われる。
 民間住宅投資は、4〜6月期の実質GDP統計2次推計でも前期比−1.9%とコロナ禍の下で4期連続減少を続けている。先行指標の新設住宅着工戸数も、4〜6月期に前期比−2.3%減少したあと、7月も4〜6月平均比−3.3%減少した。

【交易条件の悪化から7月の貿易・サービス収支の赤字は更に拡大】
 最後に外需の動向を見ると、GDP統計の「純輸出」に対応する国際収支統計の「貿易・サービス収支」(季調済、以下同じ)は、7月も2兆4260億円の赤字と赤字幅を前月よりも更に5940億円拡大した。これは、輸入の増大から貿易収支の赤字が前月比2222億円拡大したうえ、サービス収支の赤字も3718億円拡大したためである。
 しかし、貿易収支の赤字拡大は、世界インフレと円安で円建輸入金額が膨張しているためで、7月通関統計を見ると、輸入数量の拡大は前月比+2.3%にとどまっている。また4〜6月期の実質GDP統計における実質輸入の成長寄与度は前期比−0.1%と3期連続で減少している。従って7〜9月期の日本経済も、設備投資を中心に内需が確りしている限り、プラス成長を続ける公算が高い。
 ただし、海外インフレと円安に伴う交易条件の大幅悪化は、「GDP(国内総生産)」の計算には入らなくても、日本の総所得を示す「国民総所得(GNI)」には算入され(4〜6月期の交易条件悪化の寄与度−0.8%)、実質GNIは僅か+0.2%に成長にとどまってしまうことを忘れてはならない。