2022年3月版
コロナ禍第6波の収束につれ、家計消費、企業生産活動などは2月を境に再び回復軌道へ

【2月後半から3月にかけて、国内景気は再び回復歩調】
 コロナ禍第6波は2月上旬が峠となったが、その後の感染状況の低下は緩やかである。このため、2月調査の「消費活動調査」の“消費者態度指数”や「景気ウォッチャー調査」の“景気の現状判断DI”は、2月も前月に続き低下した。
 しかし「景気ウォッチャー調査」の“景気の先行き判断DI”は、家計動向関連(小売関連、サービス関連)を中心に上昇に転じた。1月の鉱工業生産、出荷は、コロナ禍第6波による工場の操業停止などもあって、1か月前に調査した製造工業予測調査の大幅増加とは反対にやや減少した(図表1)。しかし、コロナ禍第6波のピークを過ぎたため、2月はかなり増加となりそうである。鉱工業生産、出荷の回復傾向は崩れていないと見られる。
 今後の景気を展望すると、個人消費は2月後半から緩やかな回復過程に入り、企業活動も2月以降回復過程に戻っているので、1〜3月期は、10〜12月期(第2次速報で前期比+1.1%<年率+4.6%>)に引き続き、小幅ながらプラス成長を維持すると見られる(図表3)。3月調査「法人企業景気予測調査」では、企業はこの先4〜6月期と7〜9月期は景気が上昇を続けると見ている。
 しかし、2月24日のロシアのウクライナ侵攻で始まったウクライナ危機は、世界のエネルギー価格、穀物相場、稀少金属価格の上昇を通じて世界インフレを加速し、長期化させる気配を見せている。資源小国日本にとってはコストプッシュ型の輸入インフレをもたらし、これが今後の国際収支や国内景気にどのような影響をもたらすか、目を離せない。

【1月の生産はコロナ禍で意図せざる減産、2月以降は反動回復へ】
 1月の鉱工業生産は、前月比−1.3%と2か月連続の減少となり、出荷が同−1.8%と4か月振りの減少となった(図表1)。しかし1月の水準は、10〜12月期に比して生産は+0.2%、出荷は+0.6%高い。
 先月公表された1月の製造工業生産予測調査は前月比+5.2%とやや大きく増加する予測であったが、この調査時点(1月10日)以降にオミクロン株中心のコロナ禍第6波が高まり、感染拡大に伴う人手不足で操業を一時停止する工場が増大、前月比−1.3%の減少となった。
 2月上旬調査の2月と3月の生産予測は、前月比それぞれ+5.7%、+0.1%の増加と1月の減産を取り戻し(図表1)、1〜3月期平均で前期比+4.0%の大幅増加となる予測である。コロナ禍第6波は2月上旬に峠を越えたので、この予測は先月のように大きく外れてマイナスになるとは思えない。本年1〜3月期の鉱工業生産、出荷は、2四半期連続の増加になると思われる。

【1月は国内工場操業停止の影響を受けなかった輸入が大幅に増加】
 1月の出荷を国内向けと輸出に分けると、国内向けが前月比−1.8%と2か月連続の減少、輸出も同−2.5%と両者とも減少した。国内向け出荷の減少には、輸送機械(自動車)の操業停止に伴う減少(前月比−23.6%、全体の減少への寄与度−3.83%)が大きく響いた。
 1月の国内向け出荷に輸入を加えた国内向け総供給は、国内工場操業停止の影響を受けなかった輸入が前月比+9.5%と大きく伸びたので、全体で同+1.2%の増加となった。1月の水準は10〜12月期平均を+2.7%上回っている。

【コロナ禍第6波で落ち込んだ消費、雇用は2月から回復へ】
 国内の需要動向を見ると、1月の「実質消費活動指数+」(日銀推計)は92.8と前月比2.7ポイント(3%)減とやや大きく低下した(図表2)。2か月連続の低下である。「消費動向調査」の“消費者態度指数”も、12月から2月まで3か月連続で低下した。オミクロン株中心のコロナに伴う対面型消費を中心とする落ち込みである。
 しかし第6波は2月上旬にピークを過ぎたので、その後の感染者の減少は緩やかであるとはいえ、3月にかけて、少しずつ消費活動は回復してこよう。2月の「景気ウォッチャー調査」における“景気の先行き判断DI”の<家計動向関連>は、小売関連、サービス関連、住宅関連で5か月振りに上昇に転じた。また<雇用関連>も4か月振りに上昇に転じたことが注目される。1月まで雇用者数は減少傾向を示し、完全失業率は高止まりしているが(図表2)、2月以降、緩やかな転機がおとずれる気配がある。

【設備投資の基調は確りしている】
 投資動向を見ると、機械投資の動向を反映する資本財(除、輸送機械)の国内向け総供給(国産品の国内向け出荷と輸入の合計)は、12月に前月比−3.6%とやや減少した反動も加わって、1月は同+16.7%の大幅増加となり(図表2)、前年平均を+15.8%、前年中のピーク(21年6月)を+7.8%上回る水準に達した。一時的要因もあると思われるが、機械投資の基調は確りしている。
 10〜12月期のGDP統計の設備投資は、第2次速報で前期比+0.3%の増加とやや下方修正された。先行指標の機械受注(民需、除船舶・電力)は、10〜12月期に3四半期連続で増加し、前期比+6.5%の大幅増加となった(図表2)。設備投資の基調は、確りしている。
 住宅投資は、10〜12月期実質GDPの第2次速報値で前期比−1.0%と0.1%ポイント下振れした。先行指標の新設住宅着工戸数は、1月も前月比減少し、前期からの減少傾向を改めていない(図表2)。

【今後はウクライナ危機の影響に注目】
 最後に外需の動向を見ると、10〜12月期の「純輸出」の成長率寄与度は、第2次速報でも+0.2%と2四半期連続のプラス寄与度となったが(図表3)、ウクライナ危機も加わってエネルギー価格などを中心とする世界インフレが高まり、長引く可能性が出てきたので、今後は予断を許されない。
 GDP統計の「純輸出」に対応する1月の貿易サービス収支の赤字(季調済み)は、10,085億円に拡大した(前月9266億円の赤字)(図表2)。貿易収支の赤字は前月とあまり変わらなかったが、サービス収支の赤字拡大が響いた。
 日本の貿易・サービス収支に対するウクライナ危機の影響は予測が難しい。グローバルバリューチェーンに対する影響が複雑だからである。世界インフレの高進は間違いないが、背後で物がどう動くかの推計が、今の段階では難しいからである。