2022年1月版
10〜12月期は7〜9月期の落ち込みを上回る回復、1月以降はオミクロン株の感染拡大で不透明

【10〜12月期は7〜9月期下落の反動で大幅回復】

 10月以降、景気は再び回復軌道に戻り、12月も製造工業生産予測指数は上昇を続け、景気ウォッチャー調査の現状判断指数の家計動向関連も上昇している。しかし1月以降を見ると、製造工業生産予測調査は上昇を続ける予測となっているものの、オミクロン株の急速な感染拡大を反映して、景気ウォッチャー調査の先行判断指数は12月からはっきりと下落に転じている。
 先行きは予断を許さないが、少なくとも10〜12月期の経済活動は活況を取り戻しており、10〜12月期の実質GDPは、個人消費と設備投資を中心とする内需拡大と輸出回復に伴って、7〜9月期の落ち込み(前期比年率−3.6%)を帳消しにする増加(同+5〜7%)になったと思われる(図表3)。

【11〜1月の鉱工業生産、出荷は自動車を中心に急回復】
 11月の鉱工業生産と出荷は、前月比それぞれ+7.2%、+7.4%と大幅に増加し、12月と1月の製造工業生産予測調査も、前月比、それぞれ+1.6%、+1.5%と続伸する見込みである(図表1)。仮に鉱工業生産がこの比率で増加すると仮定すると、1月にはコロナ禍で落ち込みが始まる直前の19年10〜12月期の水準まで回復することになる(図表1)。実際は鉱工業生産の伸びは製造工業のそれよりも低い可能性が高いが、これまでのコロナ禍による落ち込みを帳消しにするほど回復する時期が近付いているとは言えよう。
 生産、出荷の急回復を主導している業種は、半導体不足など供給網の混乱で落ち込んでいた自動車工業(11月は前月比+43.1%増)とその関連業種(プラスチック製品、鉄鋼・非鉄金属等)である。

【11月は国内向け出荷、輸入、輸出共に大幅な伸び】
 11月の鉱工業出荷を国内向けと輸出に分けると、前月比それぞれ+7.1%、+6.3%といずれも大幅な伸びとなった。輸送機械工業(自動車)の増加寄与率が夫々60.0%、81.6%と6〜8割に達している。
 また国産品の国内向け出荷に輸入を加えた鉱工業製品の国内向け総供給は、輸入も前月比+4.7%とやや大きく伸びたので、全体として前月比+7.4%とこれも大幅な増加となった。輸入の伸びを主導したのは、引き続き原油・LNGなどの燃料とサプライチェーンが復旧した自動車部品である。

【個人消費は9〜11月と回復したあと先行きオミクロン株の動向を見てやや足踏み気味】
 国内需要の動向を見ると、個人消費関連指標は概ね9月以降11月までは回復基調にある。即ち「消費活動指数+」(日銀試算)は11月も96.1(前月比+2.6%)と3か月連続で増加した(図表2)。「家計調査」(2人以上の世帯)の実質消費支出(季調済み)も9月から回復し、10〜11月平均(102.9)はコロナ禍第5波で落ち込む前の4〜6月(103.0)の水準をほぼ回復した。
 しかし、「消費活動調査」の消費者態度指数は、9〜10月と回復したあと11〜12月は横這いに転じている。オミクロン株感染拡大に対する警戒感のほか、9月頃から物価の低下見通しが減り、上昇見通しが増えていることも関係しているかもしれない。

【雇用・賃金の回復は遅々としている】
 この間、雇用・賃金の改善は遅々としている(以下、季調済み)。完全失業率は一昨年10月の3.1%から昨年7月の2.8%まで改善したあと昨年11月まで横這いである(図表2)。有効求人倍率も、一昨年10月の1.04から昨年7月の1.15までやや改善したあと、11月までは横這いである。現金給与総額は、一昨年末を底に昨年初にかけてやや上昇したあと、昨年中は大勢横這いである。消費態度が慎重な背景には、このような雇用・賃金の動向が響いているとみられる。

【設備投資は7〜9月期に4四半期振りに減少したが、10〜12月期は再び増加の見込み】

 投資動向を見ると、設備投資の中の機械に対する投資動向を反映する資本財(除、輸送機械)の国内向け総供給(国産品の国内向け出荷と輸入の合計)は、11月に前月比+6.1%を3か月振りにやや大きく増加した。自動車工業ほどではないが、その他の機械工業も多かれ少なかれ部品不足の影響を受けて落ちていたので、12月以降、回復傾向が続くとみられる。先行指標の機械受注(民需、除船舶・電力)も、4〜6月期(前期比+4.6%)、7〜9月期(同+0.7%)と増加したあと、10月の実績も前期平均比+2.9%と増勢を保っている(図表2)。10〜12月期の受注見通しは前期比+3.1%の増加である。
 7〜9月期の実質GDP統計の設備投資は前期比−2.3%と4四半期振りに減少したが、部品調達の正常化など7〜9月期の反動もあって、10〜12月期の設備投資は再び増勢を取り戻すとみられる。
 住宅投資は7〜9月期に4四半期振りに減少した。先行指標である新設住宅着工戸数は、7〜9月期に上昇頭打ちとなったあと、10〜11月平均は7〜9月期平均比微減しているので(図表2)、10〜12月期も弱含みと思われる。

【輸出の回復で国際収支は徐々に改善】
 最後に外需の動向を見ると、国際収支ベースの11月の輸出は前月比+10.0%の増加と輸入の伸び(同+6.1%)を上回り、貿易収支は704億円の黒字と4か月振りに黒字に戻った。前述した鉱工業製品の輸出回復が寄与している。
 このため、GDP統計の「純輸出」に対応する貿易・サービス収支の赤字も、2788億円と前月の赤字(6127億円の赤字)よりも縮小した(図表2)。10〜12月期の「純輸出」は、12月も輸出が回復傾向を続ければ、7〜9月期(成長への寄与はゼロ)よりも成長にプラス寄与する可能性がある。
 来月公表される10〜12月期の実質GDPは、国内で個人消費と設備投資が回復し、「純輸出」も4四半期振りに成長にプラス寄与となれば、7〜9月期の落ち込み(前期比年率−3.6%)を十分に取り戻すプラス成長となる可能性が大きい。