2021年6月版
個人消費の落ち込みと輸入の増大から4〜6月期もマイナス成長か

【国内では対面型サービス業の落ち込みと輸出増加に伴う製造業の回復が拮抗、他方製造業立ち直りに伴う輸入の増加が成長の足を引っ張る】
 緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が6月迄延長され、4月、5月の個人消費は対面型サービスを中心に再び落ち込んでいる。しかし製造工業の生産、流通活動は、輸出の拡大もあって国内のコロナ禍再拡大の影響をあまり強く受けておらず、昨年7〜9月期からの回復基調は、4〜6月期も持続している。4〜6月期の鉱工業生産は、コロナ禍直前で、消費増税の影響で落ち込んだ19年10〜12月期の水準を上回るところ迄、回復しそうである(以上、図表1)。
 「景気ウォッチャー調査」を見ても、「景気の現状判断DI」は、家計動向関連を中心に4月、5月と落ち込んだが、企業動向関連は4月に落ち込んだあと、5月には再び回復した。また「先行き判断DI」は、家計関連と企業関連が揃って5月に3か月振りに上昇に転じた。
 4〜6月期の実質成長率は、国内経済に限定すれば横這い圏内の動きとなり、7〜9月期からは、米欧先進国には遅れをとったものの、ワクチン接種の普及もあって、本格的な国内の景気上昇が始まるのではないか。しかし、国内経済の回復に伴う輸入の増加から、「純輸出」のマイナスが大きくなり、成長率の足を引っ張る形が始まっていることもあって、目先4〜6月期の成長率はマイナス(2四半期連続)となる可能性が高い。

【鉱工業生産は6月頃までにコロナ禍による20年中の落ち込みを取り戻す見込み】
 4月の鉱工業生産と出荷は、前月比夫々+2.5%、+2.6%と2か月連続して増加した。製造工業生産予測調査によると、5月は同−1.7%とやや減少したあと、6月は同+5.0%と大きく増加する(図表1)。
 5月、6月の鉱工業生産が同じ率で変動した場合、4〜6月期は前期比+3.6%と1〜3月期(同+2.9%)を上回る伸びとなり、大幅な落ち込みが始まった19年10〜12月期の水準に戻る。また6月の水準は、19年中の平均を若干上回る(図表1)。鉱工業生産の伸び率の実績は、製造工業生産予測調査の伸び率を下回ることが少なくないが、鉱工業生産が、概ね、コロナ禍の落ち込みを取り返すと見てよいであろう。

【鉱工業出荷の回復は輸出主導型】
 4月の鉱工業出荷(前月比+2.6%)を輸出と国内向けに分けると、輸出が前月比+7.1%と大幅に伸びたことが全体に大きく寄与しており、国内向けは同+1.1%の増加にとどまった。この国内向け出荷に輸入を加えた国内総供給は、輸入が同+8.8%と大きく伸びたため、全体で同+3.9%の増加となった。
 業種別に見ると、輸出の増加は半導体製造装置などの生産用機械(寄与率48%)と自動車を中心とする輸送用機械(同26%)で全体の74%を占め、国内向け出荷では、電気・情報通信機械(同96%)、汎用・業務用機械(同90%)の増加が、他の業種の減少を埋め合わせている。
 製造業の生産、流通活動は、地方が中心であるためか、コロナ禍の再拡大にあまり影響されていないように見える。

【緊急事態宣言等の下で消費者の態度は委縮】
 国内の需要動向を見ると、4月の「実質消費活動指数+」(日銀試算)は、3月に続き、2か月連続で減少した(図表2)。4月の実労働時間(季調済み)は、製造業を中心に、2か月連続で増加し、現金給与総額(同)は昨年12月を底に4か月連続で少しずつ増えているが、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の下で、飲食サービス業、旅行・宿泊業等対面型サービス業を中心に業況や雇用が悪化している中で、消費者の態度は慎重化している。5月の消費動向調査の「消費者態度指数」(同)は、4月に続き、2か月連続で低下した。

【対面型サービス業と製造業の間で賃金、雇用動向に格差】
 対面型サービス業における雇用悪化を反映して、4月の新規求人倍率は、1月以降4か月、有効求人倍率は3月以降2か月、連続して低下し、4月の完全失業率は2.8と再び上昇した(図表2)。他方、事業規模5人以上の事業所の常用雇用者(同)は、昨年6月以降毎月少しずつ増加していたが、4月は横這いとなった。
 賃金・雇用情勢には、対面型を中心となるサービス業と、輸出主導型製造業の間で、大きな格差が生じている。

【1〜3月期の設備投資減少は一時的か】
 投資動向を見ると、1〜3月期のGDP統計(2次速報値)の設備投資は、10〜12月期のやや大きな増加(前期比+4.3%増加)の反動もあって、前期比−1.2%の減少であった。しかし、機械投資の動向を反映する資本財(除、輸送機械)の国内総供給(国産品の国内向け出荷と輸入の合計)は、1〜3月期に前期比+5.7%と2四半期連続して増加したあと、4月も前月比+9.1%、1〜3月平均比+5.2%と大きく伸びた(図表2)。
 先行指標の機械受注(民需、除く船舶・電力)は、10〜12月期大幅増加(前期比+12.9%)の反動もあって、1〜3月期は同−2.5%の減少となったが(図表2)、4〜6月期の見通しは再び同+2.5%の増加となっている。
 4〜6月期の設備投資が再び増加に転じるかどうかは、弱含み横這い圏内と見られる4〜6月期GDP、ひいては本年度の経済回復を左右する一つの大きな要因として注目される。

【住宅投資は増加に転じる気配、公共投資は一時的に減少】
 1〜3月期GDP統計における実質住宅投資は、前期比+1.2%と3四半期振りに増加した。先行指標の新設住宅着工戸数を見ると、昨年12月を底に4月まで4か月連続して増加している(図表2)。コロナ禍におけるリモート・ワークの下で、住宅の形状や場所を見直す動きが出ている折柄、今後の住宅投資が注目される。コロナ禍で消費抑制が続き、家計の貯蓄は増えており、低金利が当分続くことも、追い風となるかも知れない。
 1〜3月期の実質公共投資は、GDP統計(2次速報値)では、前期比−0.5%と7四半期振りの減少となり、先行指標の公共建設工事受注額も4月は前年比−14.1%と15か月振りの減少となった(図表2)。しかし、大型景気対策予算の裏付けがあることから見て、これは一時的な減少であろう。

【4月の貿易・サービス収支は輸入増加から赤字に転落、4〜6月期の「純輸出」は2四半期連続でマイナスの可能性】
 GDP統計の「純輸出」に対応する4月の貿易・サービス収支は、1650億円の赤字になった。昨年8月から6か月続いた黒字が本年2月に赤字となったあと、3月は黒字に戻り、4月に再び2か月振りの赤字となった形である(図表2)。
 4月の輸出は、自動車・同部品や半導体製造装置を中心に前月比+3.0%の増加となったが、国内経済の落ち込みから長い間低迷していた輸入が、最近の国内製造業の回復と世界原油市況の底入れから原粗油、石油製品を中心に急回復しており、4月は前月比+11.3%の大幅増加となったため、貿易・サービス収支が赤字となった。
 この傾向は、5月上・中旬の通関統計でも続いており、4〜6月期の「純輸出」が減少し、成長に対して2四半期連続のマイナス寄与となる恐れがある。
 このような外需の動向と国内の消費低迷から考えると、国内の投資がよほど大きく伸びない限り、4〜6月期も2四半期連続のマイナス成長となる可能性が高い(図表1)。