2021年5月版
コロナ禍第4波に伴う緊急事態宣言などで経済の立ち直りは足踏み状態
【コロナ禍第4波に対する対策が後手に回り、景気回復は中断】
本日(5月18日)公表されたGDP統計によると、コロナ禍第4波の始まりで、本年1月に緊急事態宣言が出された影響で、1〜3月期は個人消費が3四半期振り、設備投資が2四半期振りに、いずれもマイナスとなったため、実質GDPは前期比−1.1%(年率−4.3%)と3四半期振りのマイナス成長となった(図表3)。
4、5月も、コロナ禍第4波が勢いを増しているため、一度解除された緊急事態宣言やまん延防止措置が再び出され、小売り、飲食など個人対面型サービスを中心に個人消費が落ちている。4月の「景気ウォッチャー調査」によれば、家計動向関連の「現状判断DI」(季調済み)が39.1と前月(49.0)から大きく落ち、更に「先行き判断DI」(同)も40.0と前月(49.0)を下回った。
昨年5月を底に、7〜9月期(実質GDP前期比+5.3%)、10〜12月期(同+2.8%)と立ち直ってきた日本経済は、ワクチン接種の遅れとコロナ禍対策の油断(例えばgotoキャンペーンの実施)から1〜3月期、4〜6月期には再び足踏み状態に入り、小幅のマイナス成長を余儀なくされている。
また、これに伴い20年度の実質成長率は、−4.6%と前年(同−0.5%)に引き続き、2年連続のマイナス成長となった。本年度に入り、4〜6月期も個人消費の下落を中心に実質GDPは弱含みに推移していると見られ、回復軌道に戻るのは7〜9月期以降となろう。
【鉱工業生産、出荷の回復は3月迄順調、4月以降コロナ禍の影響がどう出るか】
3月の鉱工業生産と出荷は、前月比それぞれ+2.2%、+0.8%の増加となり、1〜3月期の生産と出荷は、前期比それぞれ+3.0%、+2.3%と3四半期連続の増加となった。製造工業生産予測調査によると、4月の生産は更に+8.4%と大きく増加したあと、5月は−4.3%と反落する。仮に鉱工業生産はこの比率で推移すれば、4〜5月平均の1〜3月平均比は+7.2%と4四半期連続の大幅回復となり、今回景気後退前のピークである18年10月の水準に達する(以上図表2)。
3月と4月の大幅な生産、出荷の増加をもたらした主な業種は、自動車、電気・情報通信機械、鉄鋼・非鉄金属などである。2月まで半導体不足で減産を余儀なくされた反動が大きい。
もっとも、4月の「景気ウォッチャー調査」の製造業の「判断DI」(季調済み)を見ると、「現状」が3か月振りに低下、「先行き」が2か月連続の低下となっており、4月以降の生産、出荷は、コロナ禍第4波に伴う緊急事態宣言などの影響で、予測よりも下振れする可能性がある。
【鉱工業製品の輸出は弱含み、輸入は減少】
3月の鉱工業出荷(前月比+0.8%)を内外需に分けると、国内向け出荷は前月比+1.6%の増加であったが、輸出は同−0.8%と2か月連続で減少した。
また国内向け出荷に輸入を加えた国内向け総供給は、輸入が原燃料を中心に前月比−6.7%とやや大きく減少したため、全体で同−6.3%の減少となった。
もっとも、金額ベースの3月の輸出入(季調済み)を通関統計で見ると、輸出は自動車を中心に前月比+4.3%の増加となっており、輸入は原粗油・LNGを中心に同−0.7%の減少となっている。
国際収支ベースでも、3月は輸出が前月比増加、輸入が同減少となった。
【個人消費は1〜3月期以降4、5月にかけて弱い】
国内の需要動向を見ると、1〜3月期GDP統計の実質個人消費は、前期比−1.4%と3四半期振りに減少した(図表1)。「実質消費活動指数+」(日銀試算)も、1〜3月期は97.2と3四半期振りに前期(98.8)を下回った(図表2)。コロナ禍に伴う緊急事態宣言などによる対面型サービス消費の落ち込みが大きい。
3月の完全失業率は2.6%と前月比0.3%ポイント低下した(図表2)。しかしこれは深刻な雇用情勢から就職をあきらめ、労働力人口から非労働力人口に移った人が多いためで、3月の就業者(季調済み)は前月比13万人(0.2%)減少している。因みに3月の新規求人倍率は1.99倍と前年12月のピーク(2.11)から低下している。
【1〜3月期の設備投資は小幅減少】
投資動向を見ると、1〜3月期GDP統計の実質設備投資は、前期比−1.4%と前期大幅増加(同+4.3%)の反動もあって小幅の減少となった(図表3)。機械投資を反映する資本財(除輸送機械)の国内総供給(国産品の国内向け出荷と輸入の合計)は、1〜3月期に前期比+5.7%と前期(同+5.0%)に続き、大幅な増加となっている(図表2)。これは4〜6月期のGDP統計に反映されてくると見られる。
民間住宅投資の先行指標である新設住宅着工戸数は、1〜3月期に4四半期振りに増加したが(図表2)、GDP統計でも、1〜3月期の民間住宅投資は、前期比+1.1%の増加となった。
【貿易サービス収支の黒字幅縮小】
最後に外需の動向を見ると、GDP統計の「純輸出」に対応する貿易サービス収支は、2月の赤字(−2503億円)から3月は黒字(+4119億円)に戻り、1〜3月期も4767億円の黒字となったが、前期の大幅黒字(1兆6363億円)からは黒字幅が縮小した(図表2)。このためGDP統計でも、1〜3月期の「純輸出」の成長に対する寄与度は、−0.2%と3四半期振りに小幅ながらマイナスとなった(図表3)。
3月の通関統計を見ると、輸出増加に大きく寄与したのは、一時の半導体不足に伴う減産から立ち直った自動車である。一方、輸入の伸びが低いのは、引き続き原粗油、LNGの輸入が落ちているためである。