2021年4月版
設備投資回復とコロナ禍第4波で景気回復はK字型
【世界的半導体不足の影響、コロナ禍第4波に伴う規制などにより、目先は一時的足踏み】
新型コロナ感染症の第4波に伴い、蔓延防止等重点措置など消費生活に対する規制が再び強化されているため、家計関連を中心に、景気の先行き感が悪化しており、加えて、半導体の世界的不足から、自動車工業を中心に、生産、輸出が落ち込んでいる。回復は一時的な足踏み状態に入るかも知れない。
しかし、国内の設備投資動向が強まってきた。日本経済は19年初めから自律的な景気後退に入り、19年10月の景気後退下の消費税率引上げという失策で更に落ち込み、そこでコロナ禍に襲われたため、5月まで景気は急激に後退したが、これによって過剰な設備ストックの調整は進み、加えてDXや脱炭素などの技術革新のニーズが強まってきたため、いま設備投資計画は久し振りに強気になってきた。
当面、景気は製造業が強い反面、非製造業はコロナ禍関連が弱く、いわゆるK字型回復となるが、ワクチン接種が普及する夏以降から幅広い回復が始まるのではないだろうか。
【2月、3月の鉱工業生産、出荷は、半導体不足の影響を強く受けて下落】
2月の鉱工業生産と出荷は、前月比それぞれ−2.1%、−1.5%といずれも減少した。製造工業生産予測調査によると、3月も同−1.9%と続落したあと、4月は同+9.3%と著増する(図表1)。2月と3月の減少は、半導体不足の影響を強く受けた電気・情報通信機械、自動車などの減産によるところが大きい。しかしその反動で、4月は電気・情報通信機関をはじめ機械工業が一斉に大幅増加となる見込みである。
鉱工業生産が製造工業生産予測通りの変動率で推移すると仮定すると、1〜3月期は前期比+1.3%と小幅ながら3四半期連続の増加となって増勢を維持し、また4月は大きくジャンプして今回景気後退開始直前(19年9月)の水準にまで回復する(図表1)。
2月の出荷の前月比は国内向け−1.2%、輸出−0.7%といずれも減少した。半導体不足の影響が双方に出ている。また国内向け出荷に輸入を加えた国内向け総供給は、輸入が前月比+0.7%と小幅に増加したものの、全体は同−0.6%の減少であった。
鉱工業生産と出荷は、世界的半導体不足の影響で2月と3月に足踏みしたが、4月から再び回復軌道に乗ると見られる(図表1)。
【コロナ禍第4波で個人消費の先行き感が弱気に】
国内需要の動向を見ると、2月の個人消費支出は、「家計調査」の消費支出と日銀調査の「実質消費活動指数」(図表2)は、いずれもそれぞれ前月比+2.4%、+1.3%と増加した。3月も、景気ウォッチャー調査の家計動向関連「現状判断」DIは前月比上昇したが、「先行き判断」DIは、小売り、飲食、サービス関連中心に4か月振りに下落した。コロナ感染症第4波の影響が4月から出てくる可能性がある。
【賃金、雇用は落ち込み前の水準よりはまだ低いものの徐々に回復】
背後の賃金・雇用動向を見ると、2月の現金給与総額(季調済み)は、前月比+0.7%と2か月連続で上昇し、昨年央の落ち込みからやや回復しているが、落ち込み前の水準には戻っていない。
2月の雇用者数(季調済み)は前月比+12万人増加と2か月連続で増加し、昨年4〜6月の落ち込み(124万人減)に対し、6割程戻した。完全失業率はピークの昨年10月(3.1%)からやや低下したものの、前月同様の2.9%にとどまっている(図表2)。
【設備投資計画は足許、計画共に強い】
投資動向を見ると、足許の機械に対する設備投資を反映する資本財(除、輸送機械)の国内向け総供給(国産品の国内向け出荷と輸入の合計)は、2月も前月比+4.9%と2か月連続して大きく伸びた。昨年10〜12月期に前期比+10.6%と大きく伸びたあと、1、2月も伸び続けており、1〜2月平均の10〜12月平均比は+4.2%の増加である。先行指標の機械受注(民需、除船舶・電力)は、2月に前月比−8.5%と10〜12月期著増(前期比+12.9%)の反動もあって、2か月連続の減少となった(図表2)。
1〜3月期の「法人企業景気予測調査」(内閣府)によると、本年度の設備投資見通しは、前年比+7.6%と高い伸びになっている。本年度の景気展望が開けてきた下で、企業の設備投資意欲はこのところ高まっており、今後、輸出と並んで、景気上昇をリードしていくと見られる。
【住宅投資は横這い、公共投資は増勢持続】
住宅投資は、10〜12月期のGDP統計で前期比横這いとなったが、先行指標の新設住宅着工戸数は、2月も808千戸と前月比微増し、1〜2月平均の10〜12月平均比は−0.1%とほぼ横這いであった(図表2)。住宅投資は引き続き横這い圏内の動きと見られる。
公共投資は、予算の裏付けを得て、昨年10〜12月期の実質GDP統計では6四半期連続して増加しているが、先行指標の公共建設工事受注額は、1月に前年比+66.7%と著増したあと、2月も同+7.1%と増加しており、公共投資の増勢は続いていくと見られる。
【半導体不足による生産減少から輸出が頭打ち、2月の貿易収支は赤字転落】
最後に外需の動向を見ると、GDP統計の「純輸出」に対応する2月の貿易・サービス収支は、2790億円の赤字と7か月振りの赤字に転落した。これは2月の貿易収支が、輸出の停滞(前月比+0.2%)、輸入の大幅増加(同+12.5%)から192億円の赤字となったためである(赤字は8か月振り)。
輸出の停滞は、2月の鉱工業生産、出荷で述べたように、世界的な半導体不足に伴う自動車など輸送用機械の輸出減少(通関ベースでは前年比−12.8%、輸出全体に対する寄与度−3.0%)によるものである。
半導体不足の影響は3月にも続く可能性があり、1〜3月期の成長率は「純輸出」減少の影響を強く受けよう。