2021年2月版
景気は昨年11月以降再び緩やかに後退、立ち直りは4〜6月期以降か
【コロナ禍第3波により、景気は昨年11月以降1〜3月期にかけて再度後退】
昨日発表された昨年10〜12月期のGDP統計によると、10〜12月期の実質成長率は、前期比+3.0%(年率+12.7%)と前期(同+5.3%、同+22.7%)に続き、2期連続して大きく回復した。これで19年10〜12月期から20年4〜6月期までの3期連続の落ち込み幅−10.5%の7割強を回復した形となる。これは一見順調な回復に見えるが、月ごとの推移を見るとそうではない。
鉱工業生産と出荷は昨年6月から10月まで順調に回復したあと、11月と12月には新型コロナ感染症第3波の下で、前月に比し減少している(図表1)。また「景気ウォッチャー調査」の「現状判断DI」は、10月をピークに11月から本年1月まで3か月連続して低下している。
景気は再び緩やかな後退局面に入っており、緊急事態宣言下、1〜3月期の成長率は個人消費を中心に再びマイナスになる可能性がある。財政拡大やコロナワクチンの接種開始で景気が再び立ち直るのは、4〜6月期以降となろう。
【10月迄急回復した生産は、11月、12月と反落】
12月の鉱工業生産は、前月比−1.6%と前月(同−0.5%)に続いて2か月連続の下落となったが、それに先立つ6月から10月までの急回復(+21.0%)が大きかったので、10〜12月期は前期比+6.2%増の高い水準にある(図表1)。また製造工業生産予測調査によると、1月は更に前月比+8.9%と大幅に上昇したあと、2月は同−0.3%と再び足踏み状態になる見込みである(図表1)。
最近1年間の生産の動きを振り返ると、第1次緊急事態宣言の下、昨年2月から5月まで4か月連続で通計−20.9%の急落となったあと、宣言が解除された6月から10月まで、5か月連続で通計+21.0%の劇的な復活を見せ、11月、12月の足踏みを経て本年1月の予測で再び大きく上昇し、1〜2月の予測水準は落ち込み前のピークである昨年1〜3月を+2.9%上回る水準まで上昇する予測である(図表1)。ただし、本年1〜3月の実績は、第2次緊急事態宣言の影響で予測よりも下振れする可能性がある。
【国内向け総供給も11〜12月に急落】
鉱工業出荷も、生産と同様、昨年2〜5月に急落、6〜10月に急回復、11〜12月に反落となっている(図表1)。
生産、出荷のこのような動きは、電気・情報通信機械、輸送機械(含、自動車)、生産用機械、汎用機械などの機械工業に主導された動きである。
出荷を国内向けと輸出に分けると、11〜12月と2か月連続して減少したのは国内向け出荷(11月前月比−1.5%、12月同−1.6%)である。輸出は11月まで6か月連続して増加し、12月に至って7か月振り減少した(前月比−2.2%)。
国内向け出荷に輸入を加えた国内向け総供給は、輸入も12月に前月比−2.0%と2か月連続して減少したため、11月(前年比−1.6%)に続き、12月も同−1.3%の減少となった。10月まで5か月続いた急回復は再び反落状態となっている。
【回復してきた個人消費は12月に足踏み】
国内需要の動向を見ると、第1次緊急事態宣言の解除後、6月から回復していた個人消費は、コロナ感染症の第3波に伴う外出自粛の広がりなどから、12月は弱含みとなった。12月の「消費動向調査」の消費態度指数(2人以上の世帯、季調済み)は、4か月振りに減少し、前月を−1.9%ポイント下回った。
「実質消費活動指数+」(日銀調べ、季調済み)も11月の微減に続いて12月は前月比−1.4%ポイントとやや大きく下がった。しかし、四半期ベースでみると、4〜6月期を底に、7〜9月期、10〜12月期と2期連続して回復している(図表2)。
「家計調査」(2人以上の世帯)の実質消費支出(季調済み)も、6月から10月まで回復したあと、11月、12月は足踏みしている。
以上のように、10月まではっきり回復していた個人消費は、その後勢いを失っているが、10〜12月期をくくって見ると、引き続き増加となった。GDPベースの実質個人消費も、10〜12月期は前期比+2.2%増加した。
雇用情勢を見ると(以下総て季調済み)、11月に就業者増(前月比43万人増)、失業者減(同、16万人減)と好転し、完全失業率の低下(3.1%→2.9%、図表2)と新規求人倍率の上昇(1.82→2.02)を見たが、12月には小幅ながら再び悪化した。就業者は6万人減、完全失業者は6万人増となり、完全失業率は横這いであった。
1月以降は、10都府県に再び出された緊急事態宣言の影響で再び小幅の悪化に転じる可能性が高い。
【10〜12月期の設備投資は2四半期減少のあと大きく増加】
投資動向を見ると、足許の機械投資を反映する資本財(除、輸送機械)の国内総供給(国産品の国内向け出荷と輸入の合計)は、12月に前月比−9.9%と大きく低下したが、10月に同+17.1%とかなり大きく増加したあとのため、10〜12月期としては前期比+10.2%と5四半期振りの大幅増加となった(図表2)。
これを反映し、10〜12月期のGDP統計中の実質設備投資は、前期比+4.5%(成長率への寄与度、+0.7%)と3四半期振りにやや大きく増加した。
他方GDP統計で減少傾向を続けている実質住宅投資は、10〜12月期には前期比+0.1%と微増した。先行指標の新設住宅着工統計を四半期ベースで見ると、一高一低のうちに弱含みとなっているので(図表2)、ここで下げ止まったとは見られない。他方公共投資は、10〜12月期も前期比+1.3%と景気対策を反映して6四半期連続して増加した。
【10〜12月期の純輸出は成長に対し2四半期続けて大きくプラス寄与】
最後に外需の動向を見ると、12月の貿易・サービス収支は5910億円の黒字と引き続き大幅な黒字を続け、10〜12月期の黒字合計(1兆8497億円)は、前期の5.1倍に達した(図表2)。これを反映し、10〜12月期の実質GDP中の「純輸出」は前期に続いて大きく増加し、成長への寄与度は+1.0%となった。
これは、世界経済におけるコロナ感染症蔓延を反映して、昨年3月から5月まで急減した輸出が7月頃から大きく立ち直り、反面輸入は同じように6月まで落ち込んだあと底を這うような緩やかな増加にとどまっているため、赤字に転落した貿易収支が7月に黒字に戻り、その後黒字幅を急拡大しているためである。
1月上中旬の税関統計を見ても、輸出は前年比+9.8%、輸入は同−2.9%となっており、貿易収支の改善傾向は続いている。
1〜3月期も外需による成長の下支えは続くと見られるので、景気は緊急事態宣言下の個人消費と企業活動など内需の動向に懸っている。その意味で、今月末から公表が始まる1月の経済指標が待たれる。