2020年1月版
10〜12月期は消費増税の影響でマイナス成長、年明け後が景気再上昇と景気後退の分かれ目
【11月も消費増税の影響がかなり残っている】
10月の消費税率引上げと大型台風の影響で、10月の家計消費、百貨店売上高、新車販売、住宅着工、鉱工業出荷、輸入などは軒並み落ち込んだが、11月に入っても、これらの指標はいずれも前年比マイナスのままである。ただ、家計消費と新車販売は、季調整済み前月比がわずかにプラスとなり、前年比のマイナス幅を縮め、復調の兆しを見せている。しかし他の指標は、11月に入ってもいずれも季調済み前月比は2か月連続してマイナスである。
10月の台風19号の影響がほぼ解消されるなかで、鉱工業出荷など多くの指標がなお減少を続けていることは景気の基調の弱さを示しており、10〜12月期のマイナス成長は必至であるが(図表3)、そのあと、本年に入ってからの景気動向がどうなるか懸念される。
【生産、出荷への消費増税のインパクトは11月までか】
11月の鉱工業生産と出荷は、前月比それぞれ−0.9%、−1.9%といずれも2か月連続して減少した。製造工業生産予測調査によると、12月は前月比+2.8%の上昇、1月は同+2.5%の上昇と2か月連続して回復する(図表1)。
消費税率引上げに伴う買い急ぎの反動で、10月、11月と落ち込んだ汎用性の高い生産用機械が、12月、1月の予測では増産に転じるとされているので、これが回復の兆しかどうか注目される。
もっとも、鉱工業生産の実績が製造工業生産予測調査通りの増加となった場合でも、10〜12月期は、前期比−3.5%の大幅下落である。予測通りに推移すれば、1月の水準に至って初めて消費税引上げ前の7〜9月期平均を回復する。
もし本当にそうなれば、1〜3月期の鉱工業生産は、10〜12月期の落ち込みを早くも回復することになるが、果たしてどうなるであろうか。
【鉱工業製品の国内向け総供給は、10〜11月と2か月連続して減少】
11月の鉱工業出荷を国内向けと輸出に分けると、国内向けは消費増税の前月に大幅に落ち込んだ(前月比−6.5%)あと、11月は前月比+0.2%と下げ止まった。他方輸出は、前月比−6.3%と船舶を中心にやや大きく減少した。
国内向け出荷に輸入を加えた国内向け総供給は、前月比−1.1%と2か月連続の減少となった。これは11月の輸入が前月比−2.8%の減少と消費増税前の駆け込みの反動から大きく減少した前月(同−6.9%)に続いて落ち込んだためである。
12月の動向にもよるが、10〜12月期の鉱工業製品に対する国内需要は、かなり弱いように見受けられる。
【個人消費は10月に大幅反動減のあと、11月に下げ止まりの気配】
国内需要の動向を項目別に見ていくと、「実質消費活動指数+」(日銀推計)は、消費税引上げ前の駆け込み需要から9月は111.8(前月比+4.2%)と大きく跳ね上がったあと、10月はその反動で落ち込んだが(101.9、同−8.9%)、11月は104.6と水準は低いものの、前月比+2.6%(図表2)と10月よりもやや回復した(図表2)。
「家計調査」(2人以上の世帯)の実質消費も、11月は前年比−2.0%と前月に引き続き前年を下回ったが、季調済み前月比は+2.6%とやや回復した。
10〜12月期の個人消費は、消費増税と大型台風の影響で1〜3月期には前期比かなりマイナスになると思われるが、1〜3月期には水準は低いものの早くも、前期比でプラスとなり、回復が始まる可能性が高い。
労働市場をみると労働力人口は、15〜64歳の生産年齢人口が減る下で(前年比−2.6%)、労働参加率が高まることによって、少しずつ増加し(同+0.5%)、就業者数の増加(同+0.8%)と完全失業者の減少(同−10.1%)が続いている。11月の完全失業率は2.2%と前月比−0.2%ポイントの低下となった(図表2)。しかし、このような労働需給逼迫の下でも、企業の賃上げ態度は厳しく、11月の実質賃金指数は前年比−0.9%と2か月連続して前年を下回った。
【設備投資は10〜12月期に減少のあと、再び増勢を回復するか】
投資動向を見ると、足許の機械投資動向を反映する資本財(除、輸送機械)の国内向け総供給(国産品の国内向け出荷+輸入)は、汎用性の高い機械類を中心に、消費増税前の駆け込み需要が殺到した9月に前月比+13.1%と著増したが、その反動で10月は同−13.8%、11月は同−1.3%と減少している。
先行指標の機械受注(民需、除船舶・電力)は、11月に前月比+18.0%と著増した(図表2)。これは7〜9月期平均を+7.5%上回り、10〜11月平均も7〜9月期平均比−0.4%とほぼ同水準を回復した。12月の計数にもよるが、10〜12月期見通しの前期比+3.5%に近づいている。実質GDP統計の設備投資は、消費増税の影響で10〜12月期に減少したあと、1〜3月期は根強い増勢を回復するかもしれない。
住宅投資は、先行指標の新設住宅着工戸数が高水準ながら昨年下期をピークに今年に入ってジリジリと水準を下げており(図表2)、消費増税前の駆け込みも終わったことから、今後は弱含みに転じる公算が高い。
公共投資は、補正予算の裏打ちもあって、公共建設工事の受注額が前年を上回って推移しているので(図表2)、引き続き増勢を保つとみられる。
【消費増税に伴う輸入の落ち込みで、10〜12月期の「純輸出」はプラスか】
11月の貿易・サービス収支は、1602億円の黒字となり、前月(3016億円の黒字)よりも黒字幅を縮小したものの、2か月連続の黒字となった(図表2)。これで10〜12月期の貿易サービス収支が3四半期振りに黒字となり、GDPの「純輸出」も成長に対し3四半期振りにプラス寄与となる可能性が高くなった。
しかしこれは、輸出が立ち直ってきたのではなく、輸入が消費増税の影響で落ち込んだために、貿易収支の黒字がやや拡大したためである。10〜11月の輸入の月平均は6兆1629億円と7〜9月期の輸入月平均(6兆3411億円)を28.1%下回った。他方10〜11月の輸出月平均は6兆3009億円と輸入の月平均を上回って貿易収支は黒字となったものの、7〜9月の月平均(6兆3473億円)を下回り、米中貿易戦争に伴う世界経済減速を反映した7〜9月期以降の輸出の減少傾向は改まっていない。
他方、11月の経常収支は、貿易・サービス収支の黒字に加え、第1次所得収支が1兆8265億円の大幅黒字となったため、1兆7949億円の黒字と6月(1兆9419億円の黒字)に次ぐ最高の黒字を記録した。所得収支はGDP(国内総生産)には関係ないが、GNI(国民総所得)に計上されるので、10〜12月期のGDPがマイナスとなる中で、10〜12月期のGNIを大きく押し上げるだろう。