2019年4月版
外需悪化の影響は輸出関連製造業に見られるが、内需依存業種の業況は引き続き底固い

【輸出関連製造業の業況判断が悪化】
 米中貿易戦争に伴う日本の輸出市場、とくに中国経済の減速の影響が3月調査「日銀短観」に出てきた。大企業製造業の「業況判断」DIは、中国向け輸出への依存度が高い汎用機械、生産用機械、電気機械などの大幅悪化を中心に、12月調査の「良い超」19から3月調査は同12へ大きく低下した。
 しかし、輸出関連の業況悪化が、国内景気全般に悪影響を及ぼし始めた証拠は出ていない。非製造業(全規模合計)の「業況判断」DIは、12月調査も今回調査も「良い超」15で横這いにとどまっている。
 また足許で悪化した大企業製造業も、先行き悪化が長期化するとは見ていないようで、19年度の設備投資計画(含土地投資)は前年比+6.2%増と、前年の同じ時期の計画(+6.0%増)よりも僅かに高い伸びとなっている。
 この間、「生産・営業用設備判断」DIと「雇用判断」DIの「不足超」は、引き続きバブル期に次ぐ高い水準で推移している。

【輸出不振から11月以降落ち込んでいた生産は2月から小幅に反発】
 鉱工業生産は、中国向け輸出の不振から、電気情報通信機械、電子部品・デバイス、生産用機械などを中心に、昨年11月から本年1月までの3か月間に通計−4.5%減少したが、2月は前月比+1.4%とようやく反発した(図表1)。
 また製造工業生産予測調査によると、2月に続き3月も同+1.3%、4月も同+1.1%と、下落した機械業種の反発を中心に立ち直りを続ける(図表1)。しかし、11〜1月の落ち込み(−4.5%)の割に、2〜4月の反発予測は+3.7%とやや緩やかである。また、1〜3月期の予測(1、2月は鉱工業の実績、3月は製造業の予測)は前期比−2.5%の減少となる。4月の予測水準(製造業)は落ち込み前の昨年10月の水準を−0.8%下回っているからだ。
 長い目で見ると、鉱工業生産の四半期平均は、1年半の間、毎期増加と減少を繰り返し、大勢横這いで推移している(図表1)。

【2月以降出荷は緩やかに立ち直るも落ち込み前の水準にはまだ戻っていない】
 2月の鉱工業出荷は、前月比+1.8%の増加となった。出荷は昨年4月から11か月の間、1か月毎に増加と減少を繰り返しており、大勢は横這いである(図表1)。
 2月の出荷を国内向けと輸出に分けると、輸出の前月比は前月に−7.2%と大きく落ち込んだ反動で+7.2%と同じ率で増加したが、国内向け出荷は+0.9%の増加にとどまった。また2月の輸出は反発したものの、落ち込み前のピークである昨年8月に比べればまだ−5.2%低い水準にある。
 昨年8月から2月までの輸出の落ち込み幅が大きい業種は、生産用機械(−6.5%)、汎用・業務用機械(−9.7%)、電子部品・デバイス(−19.4%)、電気・情報通信機械(−12.9%)など中国向け輸出のウェイトの高い機械類である。
 国産品の国内向け出荷に輸入を加えた鉱工業製品の国内向け総供給は、3か月連続して減少したあと、2月は前月比+0.8%の増加となった。これは落ち込み前の10月の水準に比して、まだ−4.3%低い。1〜3月期全体では、昨年10〜12月期に比し減少となろう。鉱工業生産同様、国内向け総供給も、1年半の間、四半期ベースで増加と減少を繰り返し、大勢として横這いに推移している。

【雇用拡大から家計消費は根強く増加】
 国内需要をみると、2月の「実質消費活動指数」(日銀推計、図表2)は106.4と前月(106.6)よりはやや低下したものの、1〜2月平均(106.5)は、10〜12月期平均(106.3)を上回り、緩やかながら着実に増加している。
 労働力の逼迫から、2月の非労働力人口が減少(季調済み前月比−0.9%)して労働力人口は増加(同+0.5%)、労働力人口の中では就業者数が増加(同+0.6%)して完全失業者数は減少し(同−7.0%)、完全失業率の低下(2.5→2.3%)が進んでいる。こうした緩やかな雇用増加の動きが、雇用者報酬全体の増加を支え、消費の底固い動きをもたらしているものと見られる。
 2月の家計調査の実収入(勤労者世帯)も、前年比、名目で+0.3%、実質で+0.1%の増加を保っている。

【企業は設備投資の先行きに気迷い】
 足許の設備投資の動きを反映する資本財(除、輸送機械)の国内総供給(国産品の国内向け出荷と輸入の合計)は、2月も前月比−1.3%と4か月連続で減少した(図表2)。
 先行指標であえる機械受注(民需、除く船舶・電力)は、2月に前月比+1.8%と4か月振りに増加したが、1〜2月平均は10〜12月平均に比してまだ−4.8%低い。仮に3月の増加が少なく、1〜3月期が前期比減少となると、6〜9月の先行指標が2四半期連続して減少することとなり、設備投資の先行きに不安がある。
 もっとも、3月調査「日銀短観」の「全産業+金融機関」の設備投資(ソフトウェア・研究開発を含み、土地投資額を除く)は、18年度に前年度比+8.1%の増加となったあと、19年度は同+0.7%と例年の期初計画に比してやや伸びが高い。特に大企業製造業の19年度計画は前年比+6.2%増と昨年の当初計画(+4.9%)よりも伸びが高い。
 米中貿易戦争の帰趨が見定め難いこともあって、企業は19年度の設備投資計画決定に気迷いがあるのではないかと思われる。

【引き続き住宅投資は横這い、公共投資は弱含み】
 2月の新設住宅着工戸数は、967千戸とやや落ち込んだ前月(872千戸)を+10.9%上回り、10〜12月平均(955千戸)も+1.3%上回った(図表2)。しかし1〜2月平均(920千戸)は前期比平均を−3.7%下回っているので、3月にもよるが、1〜3月期は前期比横這い圏内の動きとみられる。1〜3月期のGDP統計の住宅投資もほぼ同様となろう。
 また2月の公共機関からの工事受注額は、前年比−5.9%と再びマイナスに戻った(図表2)。GDP統計の1〜3月期公共投資は引き続き弱含みの動きとなろう。

【2月の貿易サービス収支は大幅に好転、1〜3月期の純輸出は成長にプラス寄与か】
 2月の貿易サービス収支は、2418億円の大幅な黒字に戻り(図表2)、経常収支は19,576億円と3か月振りとなる1.9兆円台の大幅黒字を記録した。
 貿易サービス収支の黒字は、輸出が前述した機械類の輸出回復を中心に3.2%増加した反面、輸入は原油の値下がりもあって+0.8%の増加にとどまったためである。また経常収支の黒字拡大は、貿易サービス収支の好転に加え、第2次所得収支の赤字が海外からの再保険金の受け取り増加などから縮小したためである。
 3月の動向にもよるが、3四半期続いた「純輸出」(実質)の成長に対するマイナス寄与は(図表3)、1〜3月期にはプラス寄与に転じる可能性がある。